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賭け

「それじゃ紹介するね。この騎士がグラン、私の剣の師匠でもあるの。っでこっちのシスターがマリアさん。いつも私達をサポートしてくれる優しい姉みたいな人」

「ティアちゃん、みたいじゃなくて姉でしょ?初めましてリュウ君。私がマリア、ティアの姉です」

「いつもお話は伺ってます。回復系が得意な僧侶でしたよね?」

「そうよ。それからそんなに堅苦しくなくていいわよ。ティアちゃんのお友達は私の弟みたいな者だから」

「俺はグラン、騎士団長のグラン。剣について教えて欲しかったら何でも言いな。ただし嬢ちゃんに手は出すな」

「あ~あなたがグランさん。よろしくお願いします」

「なんか妙な感じがしたが……」

 そりゃいつも笑いのネタにされてるのがあなただからですよ。

 酒場で酔った勢いでティアに言い寄る若手騎士を殴ったとか色々、しかも全部ティア絡み。

 姪か娘のように扱ってると聞いたが、さっきの発言もそれに通づるものがあると分かった。


「で改めてこの人が私の友達のリュウ」

「リュウです。職業は調教師、今は冒険者やってます」

 乾いた笑みで返しながら言った。

 ティアが中心となってお互いの自己紹介となった。

 ちなみに今居るのはギルドの食堂。俺の事を知る連中が全く目を離そうとしない。

 そりゃ即戦争になるかもしれない状況みたいなものだと、俺も感じてるしさ。


 ただ強くなった今の状態で見ると、ティアってそんなに強そうではない。

 おそらくソロで倒せるランクはAって所か。

 この四人揃ってならAAランクも倒せるかもしれないが、フェンリルの爺さんには遠く及ばないレベルなのはすぐにわかった。

 よくそんなんで倒すとか言えたよな。

 あ、実際に会ってないから分かんないのか?それなら納得。


「それでリュウ、どうやって大森林まで行った?ライトライトから大森林までおよそ五日の旅になる。そこにどうやって行った?」

「そうだよリュウ。どうしてそんな遠くまで?」

 さーてこっからが問題だ。

 どう誤魔化そう。


 いきなりリルの話を出せば絶対に殺しに行くだろうし、あやふやだとタイガが五月蠅いだろうし。

 どう言うべきか?


「その、バカデッカイ犬に拉致られて」

「デッカイ犬?」

「そうそう犬型の魔獣に拉致られて」

「嘘くさい」

「そう言うなよ!本当なんだから!」

 強く言うと渋々といった感じでタイガは黙った。


「で、次は?」

「そのまま大森林まで拉致られてそこにはデッカイ犬のボスがいた」

「その魔獣をどうしたの?」

「怪我したそいつを治して欲しいのが拉致られた理由だったみたいだし、仕方ないから治した」

「治しちゃったの!?」

 今度はティアが驚いた。

 そりゃ魔物を狩るのがお仕事の人から見れば驚かれるだろうな。


「仕方ないだろ。周りは魔獣の群れ、治さなきゃ俺が殺されてた」

「その後は?」

「ようやく最近治ったから解放された。飯とかはあいつらから貰ってたから何ともないし、他の魔獣から守ってもらってたし」

「「は~」」

 何故かティアとタイガから大きなため息が出た。

 一体何のため息だよ。


「そんな生存方法、リュウしか出来ないと思う」

「だね。と言うか捕獲とかしなかったの?」

「出来ても食費で死ぬぞ俺」

 そんな会話をしているとマリアさん言った。


「流石ティアちゃんのお友達、普通じゃない生還ね」

「ちょっとマリアさん、それじゃ普段の私が普通じゃないみたいじゃないですか」

「十分普通じゃないでしょ。一人で魔物の群れに突貫するティアちゃんを見て、そう思わない人はいないでしょ」

 そんな会話が始まり慌てるティア、いまだに不審に思ってるタイガとグランさん。

 誰かヘルプ!


「おいリュウ、そんな説明でいいのか?」

「ゲンさんヘルプ!」

「どうやったら助かるんだよ。この状況で」

「それでも情報部隊長ですか!情報操作なんてお手の物でしょ!」

「あくまで情報を集めるのが俺達の仕事で、情報操作は国でやってるよ」

 ちきしょう!俺には逃げ道がないのか!?


「とにかくリュウさんが生きて帰ってきたんですから、それで良いじゃないですか」

 一人ジュースを飲んでいたアリスが言うと、まぁなぁ、みたいな空気が流れた。

 よしナイスだアリス!このまま流せ!


「私は……それで構わないけどタイガは?」

「……僕もそれを言われたら反論できません」

 よっしゃ乗り越えた!

 後で美味い肉奢ってやるぞアリス!


「それじゃあリュウも帰ろっかライトライトに」

 ………………ん?帰る?


「だってもうここに居る必要はないんでしょ?なら問題ないよね」

「いや、それは待ってくれよ。冒険者業になったのは俺の意思だし、こっちで世話になった連中もいるんだ。そう簡単に抜け出す訳にも」

「ダメだよ。リュウは調教師、せっかく助かったのにまだこんな危険な職でいる必要はない」

「好きでやってんだ。職を変えるつもりはない」

「…………」

「…………」

 お互いに無言になった。

 ただ目を合わせて睨み合う。

 しばらく睨み合うとティアが言った。


「なら実力を見せてよ」

「は?」

「なら見せてよ。リュウ強いんでしょ?」

「そりゃそれなりに」

「私に大丈夫だって教えてよ」

 これは……どうするべきだ?

 正直言って俺はティアに余裕で勝てる。

 いくら魔物を倒してきたと言っても、流石に爺さんやアオイ、ダハーカ程の実力を隠しているとは思えない。

 そう言う意味では確かに人類の中では一番強いのかもしれないが、本物の化け物連中と戦ってきた俺はとっくに人間を辞めてます。

 むしろ勇者の評判を落とさないかが不安だ。


「やっぱり怖い?」

「そう言うのはないけどいいのか?本当に?」

「調子乗り過ぎじゃない。犯罪者集団を捕まえたのは凄いけど、私にだって出来る」

 だからそこじゃないんだよ。

 あ~どうしよ、断れる問題でもないし……

 あ、そうだ。


「なら一個条件がある」

「何?」

「賭け試合にしないか。俺が勝ったら俺の願いを聞いてもらう。ティアが勝ったらティアの願いを聞く。これでどうだ?ちなみに願いは変更なしでここで宣言してもらう」

「……やっぱりリュウは調子乗り過ぎだよ。私、勇者だよ」

「問題ない。ゲンさん、アリス、俺の願いはティアにフェンリルとガルダの討伐を中止させる事だ」

 突然言われたアリスは慌ててメモを取った後にえ、と言った。


「それでいいんですか?」

「いいんだよ。次はティアの番だ」

「その願いを言った理由は」

「言わない」

 少しイラッときた顔をしたがすぐに目を閉じて考え始める。

 たまに顔が赤くなる時があったが何を考えたんだろう?

 するとティアは目を開けてアリスに言った。


「私の願いはリュウが国に帰って大人しくする事。二度と危険な場所に行かせない」

「分かった。ゲンさん、アリス、記録は取った?」

「記録した」

「メモしました」

「よし、それじゃ宿はどうする?アリス達はもう取ったのか?」

 険悪な雰囲気をすぐに散し普通に聞いた。

 するとアリスは言い辛そうに言った。


「その勇者様達と同じ宿です」

「げ、そこってめっちゃ高そうじゃん」

「ドワル王様の奢りだって言ってました」

「流石勇者、待遇良いな」

「でも大部屋二つで男女に分かれてだそうです」

「……妙なとこでケチだな。ま、構わないけど」

 こうなると俺の待遇なのかティアの待遇なのか分かんないけど。


「え、構わないんですか!?」

「ただで宿に泊まれて、飯も出るんだろ?なら良いじゃん」

「だって今、宣戦布告的なことをした後ですよ!」

「それはそれ、これはこれだ。ティアはどうする?」

「私は構わないよ」

「なら問題ないな。では行くぞ!お高い宿屋!」

 ドワルの奢りでお高い宿だ!

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