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勇者が来た!

「全く、ドラゴンの女王を仲間にするとは一体どんな手を使ったんだか」

「全くです。できれば初めから言って欲しかったです」

「だから悪かったって。アオイもまさかあそこまで怒るとは思ってなかったし」

 アオイの炎が灯った松明を持ってドワル達の後を追っていた。

 突然現れたドラゴンの女王について滅茶苦茶聞かれた。

 多分この会話もアオイは念話で聞いてると思うが黙っとこう。

 ちなみに今向かっているのはドワルの工房、前にロウを作ってもらった所に向かっている。


「しかし今回も大仕事になる。フェンリルの牙に負けず劣らない素材、しばらく徹夜になるかもしれん」

「そうですね兄上。ティアマト様から炎は頂けましたがその炎を使い、作り上げるのは私達の腕次第。まさに腕の見せ所と言うところですね」

「当たり前だ。むしろ失敗でもしようものならあの女王に殺される」

 ドルフはその言葉に身体を震わせていた。

 多分アオイが見せた女王としての顔を思い出したのだろう。


「大丈夫だって。怒らせる様な事をしなければアオイは優しいから」

「……それはリュウ殿があの方の主だからではないのですか?」

「それはどうだろう、アオイも俺に修業付けてくれた時は厳しかったし。とにかく実力を見せないと認めてはくれないかな?」

 そう言うとドルフは少し気合が入ったように見えた。

 ドラゴンの女王に認められる事こそが生存への道でもあるからな。


 話をしているうちに工房に着いた。

 きれいに掃除された工房に一つの炎があった。

 松明に点いている炎はカリンの炎だ。


「まだ持ってたのか」

「当たり前だ。これほどの貴重な炎を使ってすぐに消すなど愚の骨頂」

「リュウ殿、私たち鍛冶師は炎一つでさえ大切な財産なのです。特定の炎がないと作れない剣も多くあります。リュウ殿の持つロウもその一つなのです」

 まぁ、言われてみればそうだが。

 でも欲しかったらやるぞ、カリンの炎。


「ドルフ、炎を炉に入れてくれ」

「はい、兄上」

 アオイの蒼い炎が炉に入り静かに燃える。

 そこに軽くアオイの爪を当てると爪がほのかに色が変わった。


「よし、この炎なら上手くいきそうだ。リュウ、お前はどうする?ここで見ていくか?」

「もちろん見ていくさ。でもロウの時も時間が掛かったが今回はどれくらい掛かりそうだ」

「今回は一週間もあれば大丈夫ですよ。同じドラゴン同士の素材なので前回よりは早く終わりますよ」

「それからロウも今出してくれ。先に整備しておく」

 それじゃ先に渡しておくか。

 俺はドワルにロウを渡した。

 するとドワルはロウを見て不機嫌そうになった。


「お前一体何と戦った。目に見えない程とは言え少し刃が欠けている」

「え、マジで」

「一体何と戦えばこうなるんだ。フェンリルの牙製の脇差がこんなに早く欠ける相手は……あの女王様か?」

 あー、それはきっとダハーカと戦った時に出来たやつだ。

 道理で切った時に何か違和感があると思った。

 そっか欠けてたのか……


「別のドラゴンと戦った時の傷だよきっと。それより直るのか?」

「この程度ならな、研げば直る。しかしお前も研ぐ技術ぐらいは持っておけ、刀を持つ者ならな」

「なら教えてくれ。俺の周りのほとんどは素手で戦うタイプばっかりだからさ」

 こうして俺の刀を研ぐ練習が始まった。

 それと二度と欠けたりしないように刀の技術も上げていかないと。


 今日は俺の研ぐ技術を上げるのに付き合ってくれると言ってくれたドワルとドルフ、刀の製作について聞いたが後から集中して制作したいから今の内に教えておくとか。

 そこからはひたすら包丁を研いでいた。

 鍛冶師直伝の研ぐ技術は持っていて損はないけど戦闘とは違う技術のせいで覚えるのにだいぶ時間が掛かった。

 それでも第六感を使ってどうにか感覚で覚える事に成功する。

 そして今は休憩中、意外と体力を使うもんなんだな。


『リュウ様、問題が起こりました』

 突然のアオイからの報告、アオイほどの者が問題と言うとかなりヤバい事が起きたのか?

 それと同時に工房に兵士が入ってきた。


「ドワル王様、ドルフ様、意外な方がお越ししました!」

「どうした突然」

「どなたがお越しになられたのですか?」

「勇者様ご一行がこの国に参りました!」

 ……アオイ、問題ってこの事か?


『はい、警戒していたところ馬に乗った勇者に賢者、騎士と僧侶を確認しました。情報部のゲン様に確認を取ったところ、おそらくゲン様の報告でこの国に来たのではないかと』

 あ~確かに言ってたな報告書は送ったって。

 でも同じ日に来るか普通。


『妨害しますか?』

『それよりも早く俺のところに来い。まだ国内には入ってないんだよな?』

『今は門の前にいるそうです』

『なら眷属全員を俺の体内に移動させる。こっちに来てくれ、場所は……言わなくても分かるか』

『では向かいます』

 念話が切れてこちらに向かっているのが分かる。

 全員俺との契約でできた繋がりの様なものを頼りに近付いて来る。


「目的はなんだ」

「それが、その、人探しだそうです」

「人探しですか?一体なんて方でしょうか?」

「その、リュウと言う調教師だそうです」

 ドワルとドルフ、そして伝えに来た兵士が俺を見た。

 まさかここでも説明しないといけないのか?


「説明はするから少し待って、今リル達が向かってるから」

「それはいつごろ着く」

「もう既にいますよ」

 その言葉にビクつかせたドワル。

 すぐ後ろにはアオイがいた。

 他に人型になったリルとカリン、オウカもいた。


「みんな早く俺の中に入れ」

 オウカ、カリン、アオイの順で俺の中に入っていった。アオイはドワルの事を一睨みしてたけど。

 最後にリルが入ると思ったら一度普通に抱き着いてきた。

 久しぶりの気持ちいい感覚、そういや最近抱きしめてなかったな。


「リュウ、気を付けてね」

「分かった」

 そう言って軽くキスをすると顔を赤くして俺の中に入った。

 当然中にいるカリンやオウカに抗議が入ったが一騒動が終わったらなっと言っておいた。


「それで、勇者が探している人物はお前で間違いないのか?」

「そうだよ。俺と勇者は腐れ縁で一応友達」

「そうだったのですか」

「で、ちょいと事情で行方不明扱いになったからここまで探しに来たんだと」

 大雑把に話すとドワル達が渋い顔になる。


「その大丈夫なのか?リル様達は」

「だからドワルに文句あるって言ったろ。俺の従魔の二人があいつの狙う魔物の二体なんだからよ」

「……」

 黙ってしまったドワル。

 そこにドルフが言ってきた。


「しかしどう誤魔化すのですか?勇者ティアは魔物の気配に鋭いと聞いています」

「そのために今俺の体内に移動してもらったんだよ。この状態なら俺から魔物の気配を感じても勘違いで済むだろ」

「しかし勇者ティアがあなたに化けた何かと判断してしまったら?」

「その時は昔のティアの恥ずかしい過去を大声で暴露してやる」

 そうすれば分かるだろう。


「しかしこの後はどうするのですか。これでは完成した刀を届ける事すら難しい」

「それは俺が適当に誤魔化しておくよ。冒険者になって武器の製作に来たとでも。それと俺とドワル達が繋がってるのも秘匿にしてくれ、絶対厄介事になる」

「分かりました」

「あと俺はもう城を出る。こんな所で会ったら関係が一発で分かる」

 俺はロウを持って工房を出た。

 後は俺の口でどうにかするしかない。


「リュウ、刀は最高の仕上げで渡す。恐らく直接渡すことは出来ないだろうから騎士越しになるだろうがな」

「分かった。ありがとよ」

「いや、こちらも済まなかった」

 それじゃ刀はドワル達に完全に任せて俺はティアへの言い訳を考えるか。

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