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褒賞式と決闘

 ティアマトさんとの決闘が決まって一週間、俺はひたすら修行に専念した。

 普通なら作戦の一つでもたてるのが良いのだろうが俺にそんな知識は無いのでとにかく全力でぶつかるしかない。


 修行の他に褒賞式の練習とかもあり、後半は時間が取れなかった時もあったがやるだけの事はやった。

 他の魔物の長老達に戦い方を学んだり、オルムさんや龍皇、爺さん達との組手、戦闘に関しては万全のはず。


 逆に褒賞式の練習はかなりダメだしされたけど。


 とにかく今日だ。

 今日ティアマトさんに勝てばオウカとティアマトさんを仲間に出来る。

 最初はそこまで考えてなかったけど。


「リュウ、準備はよいか?」

「大丈夫だよオウカ。堂々としてティアマトさんの爪を貰えばいいだけだ」

 褒賞式の前、オウカが俺に聞いてきた。

 練習でダメだしが多かった分、少し不安だったのだろう。


「では頼むぞ。くれぐれも粗相の無いようにな」

「あいよー」

 オウカは皇族の一人として褒賞を与える側になるので一緒にはいられない。

 龍皇の近くで王女として振る舞うらしい。


 それより俺はこの後のティアマトさんとの決闘の方が気になる。なんせ相手は龍の女王、龍皇夫婦にはなんとか勝てるようにはなったが、それでも負け越している。

 勝てる保証など、どこにもない。


「リュウ様お時間です」

「あ、はい。分かりました」

 今はまだ早いか、今は式を終わらせる事に集中するか。


 褒賞式が始まり少したった。

 当然俺以外にも褒賞を貰う人はいて、俺は最後だ。

 何故最後になったか龍皇に聞くと「アジ・ダハーカを倒した英雄が目立た無いでどうする?」だとか。

 言いたい事は分かるが大トリにしなくても……


 最初にしたらしたで、他の者達が目立たなくなる。との理由もあるらしい。

 だから俺は最後までビシッとしてないといけないので疲れる。


 しかしただビシッとしてるのも暇なので、他の人達の褒賞を静かに聞いている。

 褒賞も人によって様々だ。

 金品を貰った人、地位が高くなった人、武具や魔道具を貰う人がほとんどだった。

 なかには龍皇みたいに地位の高い人との婚約もある。

 本当にするんだな。

 もちろん会場の人達に祝福されている二人は仲睦まじくしている。


「リュウ、前に」

「はい」

 ようやく俺の番だ。

 俺は龍皇の前で跪いた。

 龍皇が厳かに言う。


「リュウ、貴殿は人間で在りながらアジ・ダハーカに臆せず戦い、勝利した。その礼と感謝を込め、褒賞を贈る。褒賞をここに!」

 何故かどよめきが聞こえた。

 ティアマトさんの爪ってそんなに価値があったのか?


「褒賞の『蒼龍女王』の爪だ受け取ると良い」

「ありがたく頂戴致します」

 俺は両手でティアマトさんの爪を受け取った。


 褒賞式の後は食事会になったが俺は軽くしか食えない。

 この後ティアマトさんとの決闘あるし。

 まさか食い過ぎで負けましたとか洒落にならん。

 旨そうな飯がいっぱいあるのにな~。


「リュウ、準備は大丈夫?」

「パパ緊張してない?」

 リルとカリンが料理を取った皿を持ちながら聞いてきた。


「大丈夫。むしろ旨そうな飯を腹一杯食えないのが残念だ」

「その調子なら大丈夫そう」

 リルはなんて事も無いように料理に手をつける。


「パパが頑張ってね!」

「おう!ちょっと頑張ってくるは」

 軽く手を振って俺は決闘場に向かった。



 決闘場、ここは昔から使われている場所で様々な目的で使われてきた。

 単に己の力をアピールするため、道楽目的の軽いスポーツ開場として、そして願いを叶えるために戦うためと色々歴史があるらしい。


 時にここで死んだ戦士やドラゴンもいたとか。

 最後まで負けたくないと、意地を張り合い、死んだドラゴン達は丁寧に埋葬されていった。


 そこで俺はティアマトさんと戦う事になった。

 切っ掛けはオウカの世界を見たいと言う願いからだったが、俺は良い願いだと思う。

 俺はただ強くなりたいと、不透明な目的で大森林に来て力を手にしてきたが、まだまだ俺は弱い。


 だから俺はここで一つ変わりたい。

 皆を守れるように。


「リュウ、気負い過ぎてないか?」

 突然声をかけたのはオウカだった。


「どうしたオウカ?早く席に戻んないと龍皇達が心配するぞ」

「うむ、ただなんとなくリュウが心配でな。少し寄らせてもらった。そうしたら何か思い悩んでいるように見えたから声をかけたのだ」

 オウカは俺の隣に座りながら言う。


「安心しろ。たいした事は考えてない。ただがむしゃらに力を求めた力でティアマトさんに勝てるか考えてただけ」

「充分思い悩んでいるのだ。いつもの調子はどうした?」

「………多分俺、緊張してんだと思う。ティアマトさん相手にどこまで戦えるか全く想像出来ないから」

 軽く手が震えている。

 緊張か、恐怖か、はたまた武者震いなのか分からない。


「な、ならちょっとしたおまじないをしてやるのだ」

 オウカは顔を少し赤くして、俺の前に立つ。

 どんなおまじないか?と聞く前にオウカが俺の頬に軽く口を付けた。


「えっと?」

 はっきり言って頭の中が真っ白になった。

 突然過ぎてうまくリアクションすら取れない。


「ふ、震えは止めたので私は席に戻るのだ!」

 そう言ってダッシュで帰った。

 確かに手の震えは止まっていた。

 だが……


「荒療治過ぎねぇか?このおまじない」

 お互いに赤面ものだろ。

 実際自分で顔が熱くなってるのが分かる。


「リュウ様、闘技場にどうぞ」

「あ、ああ」

 全く、勝たざるをえなくなっちまった。

 気合いは充分、勝ちにいくか。


「お久しぶりです。リュウ様」

 闘技場の上でティアマトさんが話し掛けてきた。

 闘技場の上のティアマトさんはいつもと違い、給仕の服ではなく全身を包むスーツのような物を着ていた。

 今日までティアマトさんとはろくに話してない。

 お互い今日のために調整して来てきたから。


「お久しぶりです。ティアマトさん、今日勝ちにいきます」

「早くも宣戦布告ですか」

「まぁ、負ける訳にはいかないので」

「それはリュウ様のためですか?それともオウカのため?」

 ここは格好よくオウカのためと言うべきなんだろうが……


「俺のためですよ」

「そうなのですか?てっきりオウカのためと言うと思ってました」

「いえ、俺は所詮人間です。俺は俺のためにオウカを旅に出してやりたいと思ったし、ティアマトさんも結局は俺一人では守りきる自身が無いからこその今回の賭けです。所詮俺は弱い人間なんですよ」

 情けは人のためならず。所詮は俺のため。


「そうですか。ならその自身のために頑張って下さい」

 ティアマトさんは人間の姿のまま構えた。


「ドラゴンの姿にならないんですね」

「この方が小回りも利くので」

 なるほど納得。


 俺も構えて少しした後、戦闘が開始した。

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