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調教師は魔物に囲まれて生きていきます。祝コミカライズ  作者: 七篠
アフターストーリーと言う名の好き勝手に書くお話し
234/238

ウルの正体

あけましておめでとうございます。

超久しぶりの投稿です。

今回はぶっちゃけ話と言う事でウルの事をご説明したいと思います。

 俺、リュウと妻であるウルは東の国から買い付けたこたつでまったりと過ごしながらみかんを食べる。こたつはテーブルに布団をかけただけの物だが、魔法で温まる感じとはまた違うからか眠たい。

 新年あけたばかりで欠伸をしたり、眠たそうにしている者も居るが、ほとんどの者は新年の挨拶として外に出ていた。

 アトラスや迦楼羅天などもこの国におり、ティアも居るのでこの森に棲んでいる者だけではないのでかなりにぎわっている。


「……平和ね、リュウ」

「そうだな……去年起こった事で一番の出来事はアリスの結婚だし、平和だな」


 そんな事を言い合いながらみかんを剥いて食べる。

 時々緑茶を飲んでただぼうっとする。この時間が何とも心地いい。

 本当にはアトラスや迦楼羅天に挨拶をしなければならないだろうが、朝日が昇った後でもいいだろう。


「ねぇリュウ。平和になったし、話してもいい?」

「何を?」

「私が何者なのか。話しておこうと思って」


 それは確かに気になる。

 最初こそただ特別なだけの蛇型の魔物と言うイメージしかなかったが、アオイが頭を下げ、魔王の中で最強と言わせる調停者からも神と呼ばれる。

 これだけで十分普通ではない事は分かるだろう。

 だがその理由は知らなくても問題なかったし、知ったところで俺達の関係が変わる訳でもないので追及する事もしなかった。


「よく分からないが、俺に話してもいい物なのか?俺以外のみんなはおおよそ分かってるみたいだけど」

「ええ。龍族のアオイとカリンは当然だし、魔王になっている者達も当然私の事について知ってる。知ろうとしないのはリュウだけなんだから」


 そう言うわりには穏やかな雰囲気だ。

 ウルの正体を語る内容にしては随分と穏やかで、何気ない世間話でもするような空気だ。


「そんじゃ俺はバカだから単刀直入に聞くぞ。ウルって何者?」

「私の種族は無限蛇龍ウロボロス。この世界を管理している最も神に近いドラゴン」


 神様に近いドラゴンね。


「それって教会が言っている様な神様?」

「流石にそれとは違うわよ。私はあくまでもこの世界の管理、および始まりと終わりを司っているだけ。あとは役割なんて特にない」


 世界……と言われても規模がデカ過ぎてよく分からない。

 俺にとっての世界はこの大陸の事だけだからな。もっと言えば俺が恥ずかしげなく好きと言える連中がいる場所の事だし。


「世界ってどれぐらいの規模なんだ?」

「目に見えない範囲も管理してるのよ。例えば……星空とか」

「星?星って夜に見えるあれ?」

「そう。それがいつ壊れていつ新しくするのかも管理してるの、と言ってもほとんど自然崩壊に任せてるから管理と言う程でもないけど。私から見たらこの星も小さなものよ」

「………………つまり俺らが居るこの大陸もあの小さな点と同じって事か?」

「大陸どころかこの星全体がそうなの。星と言う概念もないし、知っているのは古い存在達だけ。一時期は人間も知ってたけど……1度文明が滅んじゃったからね、伝える人が居なくなっちゃったの」


 本当に大規模な話だ。それに俺が今この場に居る場所があの夜空の点と同じと言うのも信じがたい。

 今は夜で窓の外の星を見るが、あの小さな点と同じとは全く想像だにしなかった。


「ところで文明が滅びたって言うが、どれぐらいで滅んでるんだ?」

「う~ん。ざっと1千万年ぐらいで滅んでるかな~。宇宙規模だと100兆年に1度は滅んでる。私はまだ経験してないけど」

「……100兆とかって言われても流石に分かんないんだが?」

「とりあえず魔物でも生きていられない時間って事だけ分かってくれればそれでいいよ。この星だと50億から40億年ぐらいから原型は出来てたかな?」


 本当に何を言っているのかさっぱり分からない。

 あまりにも価値観が違い過ぎて、もっている知識の量が違い過ぎて何をどう理解すればいいのかすら分からない。

 混乱している俺に対してウルは言う。


「ま、宇宙の事は置いておいて。人間と言う種は絶滅しなくても何度も絶滅しかけてはまた文明を復活させるの繰り返しをしてた。そして文明が頂点に達したと思う時に、毎回私の力の一端に触れて絶滅しかけた」

「ん?ウルの力に触れると絶滅していたんなら、どうして俺は、俺達は生きているんだ?俺はウルのおかげで生きているのに」


 これはとても大きな矛盾だと思う。

 今より昔の文明と言う物がどれほどの物だったのかは分からないが、ウルの力を利用して力を得たと言うの出れば、すでに絶滅していてもおかしくないのではないだろうか?

 そう思って言うとウルは儚げに表情を崩した。


「私も寂しくってつい手を出した。それが今の世界」

「そりゃどう言う事だ?」

「ある意味私が神様っていうのは間違ってない。今回の文明に私は深く干渉し過ぎた、その結果がこの世界に当然にある魔力の正体。魔力って私の力がとても薄まった物なのよ」


 それはとても大きな驚きだ。

 当たり前として使っている魔力の大元が、ウル自身だったなんて。


「私は元々ただの概念。意思はなく、ただそこにあるだけの何か。本当は寂しいと言う感情すら沸かないはずなのに、どうしてか寂しいと言う感情をきっかけに私は肉体を得た。元々前の世界が滅んだ理由は無限の力が爆散したため、つまり濃すぎる魔力中毒による死亡だったの」

「魔力中毒って本当に基礎中の基礎の話じゃねぇか。なんでその世界は滅んだんだよ」

「文明が違えば考え方も得た力も違う。前の文明は魔力なんてものは存在せず、すべて人間が様々な物を燃やして電気に変える方法で魔力の代わりに使っていたの。電気って色んな事に使える便利な力よ」

「……本当にその文明は電気だけで生活してたのか?火とか水とかは魔力を使わないでどうやって運んでたんだ?」

「ほとんどは電動で動くポンプのおかげ。電気を使って地下水をくみ上げたり、電気を金属に通して熱する事で火の代わりに使っていた。電気が使える事が大前提だったからこの世界じゃ確かに考え辛いかも」


 この知識はダハーカも持っているんだろうか?

 魔力を使わない文明。魔力を当然に使っていた者としては想像すら出来ない。

 必死に想像しようとしているとウルは話しを戻す。


「とにかくその世界には魔力と言う概念がないためにみんな魔力中毒で死ぬはずだった。でも1部魔力に耐性のある人間が生き残った、それがあなた達人類の先祖。その先祖たちが色々頑張って現在につながるの。そして同時に人間以外の動植物にも影響を及ぼし、フェンリルや迦楼羅のように特殊な動物達も生まれ始めた。無限の力はありとあらゆる生物の進化の上限を破壊し、魔力を利用して身体能力を強化した存在、生物では本来到達できない速度を出す存在、炎や水を出す存在。悪魔達は私の魔力から自我が芽生え、魔力そのものが肉体となった最も私に近い存在。だから調停者である彼は私の子供の様な部分があるの。と言っても孕んで産んだとは大きく違うけどね」


 本当に、本当になんて事のない世間話の様な感じでウルは話した。

 つまり言ってしまえばこの世界に住むほとんどの者がウルのおかげで今があると言える。魔術と言う概念も、その魔術を使うための魔力すらウル1人のおかげで成り立っている。

 全ての生物の母と言ってもおかしくない存在だ。


「……その中で何でオウカとアオイ、龍族だけがウルの事を信仰してるんだ?普通なら、それこそ教会の連中がウルの事を神として崇める事だって当然だと思うのに」

「その辺りは……人間の傲慢かな。もしくはプライド?私が生まれる前までは魔物もいなかったって言ったでしょ、だからそれまではこの星を人間が支配していたの。野生の獣では勝てない武器を作って好き勝手に生きていたのに、突然生態系の頂点から最下層に近い所まで落とされたら当然不満を持つ。龍族は私の事を母として崇めていたけど、人間はそれを認めなかった。私の事をただの無限の力を持つエネルギーとしか見ていなかった」


 みかんを食べながら言う話ではないと思うな。

 まぁ俺も姿勢を正して改めて話を聞くっていう感じではないけど。

 ウルはそんな俺を見ながら真剣な声色で言う。新しいみかんのの皮をむきながら。


「それでリュウはどう思う?私の事、怖いって思う?」

「別に、何とも思わん」


 即答する俺に対してウルは驚いて目を大きくした。

 俺は逆に何でそんな表情になるのか分からない。


「なんだよ、そんなに意外な答えか?」

「ううん。そう言ってくれるだろうな~って思ってはいたけど。はっきりと言われるとは思ってなかった」

「そうか?ま、なんにせよウルの事を知れたのはよかった。そりゃ想像以上に大き過ぎる存在で驚きはしたけど」

「本当にそれだけ?私の力をもっと使いこなせるようになりたいとか思わないの?」

「う~ん………………規模がデカ過ぎて想像できない。それに使いこなせるようになりたいかって言われても既にやってる訳だし」


 今でもウルからもらった魔力、今では無限の力とでも言うべきものを安定できるように今もしているのだから、特に何か思う事はない。

 それに無限の力を得て何がしたい?っと聞かれてもそんな力を得て何かを生そうと思った事もない。

 結局言えるのはいつものバカな事だけ。


「とりあえずリルとかカリンとか、みんなを守れるだけの力があれば十分だ。それ以上の力は何のために使えばいいのかすら分からない」


 そう言うとウルは少しだけ呆けた表情を作った後、思いっきり笑った。


「ははは!!や、やっぱりリュウって面白い!!そして子供っぽくて真理をついてる。だから私の力をちゃんと使いこなせる訳だ」

「どう言う事だよ?」

「簡単に言うとね、私の無限の力は何かを成し遂げたいって思うだけの必要なエネルギーを与えるの。だから自分自身の限界以上の望みを持ては自然と膨大な魔力によって自爆する。逆に明確に、自分で制御できるだけの望みなら自爆せずに力を与える。それだけなんだよ。でもほとんどの無限の力を得ようとした人達は高望みし過ぎた、身の丈に合わない願いを叶えようとした。それが失敗の最大の原因」


 身の丈に合わない望みね……最強種を守ろうとしている時点で、元人間の俺には高望みしている様な気がするけどな。


「ちなみに参考までに聞きたいんだが、他の連中ってどんな使い方をしようとしたんだ?その無限の力を」

「それは本当に色々。単に無限と言う力を証明してみたいって思った研究者、改めて無限の力を注ぐ事で死者蘇生を目指した医者、無限の力を兵器に込めて世界を支配しようとした大統領、無限の力で不老不死を成し遂げようとした聖職者………………本当に色々」

「不老不死って、その聖職者がそうなりたいって思ったのか?」

「ううん。この世に終わりがある、死と言う当然の現象に逆らおうとした聖職者が、不老不死を当時のすべての人間に与えようとしたの。うまくいっても最後は絶望だけでしょうけど」

「あれ?でも不老不死の研究って人によっては良い事なんじゃ?」

「人間ごときが1000年も生きていられないわ。肉体的な問題ではなく、精神的な問題でね。肉体は永遠に生きられるようになったとしても、精神は200年経たずに悲鳴を上げる。もう死にたい、十分に生きた、これ以上生きてなんになる?そんな苦痛が必ず人間達を襲う。それにきっと子供も生まれなくなる」

「不老不死と子供が生まれなくなるって関係ないんじゃないのか?」

「それが関係大有り。どうして生物が子供を残すかリュウは知ってるでしょ」

「そりゃ自分が死んでも自分自身の血を残すため……あ」


 そこでウルが何を言いたいのか分かった。つまり――


「自分自身が死なないなら子孫を残す必要がなくなる。子孫を残す必要がないから生殖器官にも何らかの影響が出る可能性が高い」

「正解。ご褒美にみかんをどうぞ」


 そう言ってウルからみかんを転がされて渡されたが、そう言う事か……


「それじゃ仮に俺達が生まれる前にその聖職者が成功させてたら……」

「リュウ達は生まれてすらいなかった。それに不老不死と言っても老いずに死なないだけで病気にかからないとか、事故に遭っても五体満足でいるとは限らないからね。ただ死なないってだけならあまりにも半端すぎるよね」


 それは……かなり嫌だな。

 事故に遭って死にかけるような肉体損傷を受けても死ねない、死ぬほど苦しい病気にかかっているのに死ねない。そう言う事態が生まれる可能性が非常に高いと言う事か。

 想像した事すらなかった。


「だから聖職者も失敗した。色んな人が失敗し続けて、最後はリュウ。あなたが身の丈に合った願いのおかげで生き残って願いを叶えた。人が人を救いたいと言う願いから始まって、家族を守ると言う正直あまり変わらない願いを叶え続けている。これは実は偉業なんだからね」

「……はぁ。とんでもない願いを叶えようとした連中が途中でダメになって、大した願いでもない俺が成功するっか。皮肉だな」


 俺にとってそう言うしかない事にウルはさらに言う。


「それでも世界のどこかでは成功しているかもしれないけどね」

「世界のどこかって、今自分で全員失敗したって言わなかったか?」

「あ、そう言う正解じゃなくて、この世界とは違う異世界の事。私は無限に居るから」

「………………また更に訳の分からない事を言っている気がするんだが?」


 ウルは目の前に居るウルだけじゃない?

 ダハーカの眷属召喚みたいになんかすれば増えるのか?


「簡単に言うと各世界に必ずウロボロスは存在するって事。異世界の私って言えば何となく分かる?」

「ん~。なんとなく」

「ウロボロスは必ず世界を維持するために必要な存在だから絶対に各世界に1体は必ずいる。イレギュラーな事が起こらない限りはウロボロスは基本的に1体だから」

「………………イレギュラーな事?」

「例えば……その世界ではウロボロスは元々2体いる者として崇められているとか、無限に至った存在が居るとか、眷族を増やすと言う形で増えるとか、そんな感じ?」

「なんでウル自身も疑問系なんだよ」

「だって普通ならあり得ないもん。自らの力だけで無限に到達する可能性は低いし、眷族にするとしてもリュウみたいに特別な存在じゃないと上手くいくはずがないし、可能性はとても低いの。もしくは……元々1体のウロボロスが自ら2体に増えるかどうか、かな。それなら最初からウロボロスが2体いる方が自然だけど」


 よく分からないが自然と増える様な事はあり得ないと言う事だけは理解できた。

 あれ?そうなると俺はウロボロスになっているのだろうか?


「ちなみに俺ってウロボロスになってるの?」

「ううん。私の眷属にはなってるけどウロボロスにはなってない。リュウは寿命があるし、子供も残せるよ」

「そりゃよかった。自分の子供の顔ぐらい見たいからな」

「……うん。だよね」


 何気ない一言で落ち込むウルだが、ウルは子供が出来ないのだろうか?

 よく分からないが俺は言う。


「ウル」

「なに?」

「子供の顔、早く見れる様ちょっと頑張るか」


 そう言うとウルは顔を真っ赤にして「うん」とだけ答えた。

 来年には誰か俺の子出来てくれないかな~

次はもうちょっと間を開けずに投稿したいな……

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[一言] いつ子供達が出て来るのか楽しみにしています!
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