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調教師は魔物に囲まれ生きていきます。

 帰国後、ライトライト国王に言われた通り生き残っていた奴隷に関しては開放する事は出来るが数は少ない。

 今ではほとんどが苗床になっていたようで生き残っているのは50人にも満たない。

 誰もがやせ細っており、骨と皮だけが残っている感じだ。

 そいつらを前に俺はアトラスに聞く。


「苗床になった連中からはどれぐらい孵化したんだ?」

「1人に付きおよそ100の幼子たちが生まれました。苗床になった者達はおよそ1万、多くの幼子達が産まれました」

「あれ?そんなに捕まえた奴ら居たっけ?」

「新鮮な死肉にも卵を植え付けましたからそれだけの数になったと言う事です。ちなみに奴隷として扱っていたのは5千ほどです。ちなみに時間の経った死肉は卵を産み付けた母親達の食糧として与えました」

「子供を産むのも体力使うからな。ちゃんと今も生きてるんだよな?」

「はい。十分な食料をいただいておりますので」


 それならいい。

 普通の昆虫だと卵を産んだ後死んでしまう個体も居るからな、そうでないのはとても良い事だ。


 俺がそう満足して頷いていると奴隷たちの1部が怯える。

 残りの大半は感情をなくしてしまったようにただ突っ立って指示を待っているだけだ。

 酷い労働内容に既に心をすり減らし切ったと言う所か。

 それともアトラスと言う強者の前に居続けた事が原因だろうか?

 まぁどうでもいいけど。


 今回この奴隷たちはマークさんが転移魔法で以前転移した城の庭にまで転移させると言う。

 そこでライトライトの兵に奴隷たちを渡し、後の事はライトライトに任せるそうだ。

 様々な国の人間達なので故郷に帰すにはそれなりの時間がかかるだろう。


 そして余談だがナレルは無事新たな教皇になった。

 俺と面識があり、他の枢機卿達からの信頼も厚い事が決め手だと本人は言っていた。

 それから教会の聖騎士団については再び編成していいかと聞かれた。

 例え俺に滅ぼされたといったとしても、国に関係なく市民の信頼を得ている教会騎士が突然いなくなるというのは色々と問題が出るのだと言う。

 今回の一件でどの国も兵は不足しているし、支援しなけらばならないらしい。


 それは教会も同じなのだから大丈夫なのかと聞いたら、地元の教会騎士見習いを送るから問題ないそうだ。

 それに俺に向かって行ったのは基本的に教会騎士の上位戦力ばかり、逆に言えば俺に手も足も出ない下っ端たちはそれなりに残っていると言う。

 それに前教皇の様に魔物絶対ぶっ殺す、ではなく市民のために戦いたいと言う者達も少ないが居たそうなので、その残った者達が新たな教会騎士団長として国や市民を守る仕事に就かせるそうだ。


 そういう理由なら良いと俺は許可を出した。

 ただし俺と敵対行動はとらないように、と言ったら俺に立ち向かう者は居ないと笑われた。

 それなら別にいいか。


 それから黒牙のギルドにも大きな動きがある。

 まずはパピーたち潜入組が1部帰って来たので人が増えた事、それに伴いギルドの完成、魔物の素材の販売だったり人間の相手をする事が多くなった。

 俺は仕事大丈夫か~っと聞きに行ったら訓練する余裕がないとコクガは怒っている。


 ちなみに人間への販売はパピーが頑張っている。

 時々幼い子供達を抱きしめて癒されていると言うが、その子達も魔物だぞ?ぬいぐるみやペットじゃないぞ?

 分かってるけどやめられない?確かに気持ちいいけど。

 これはこれで魔物とのいい関係と言っていいのかも知れないからあまり強く言えない。

 でもあまり構い過ぎると嫌がるぞ?あ、ほら逃げた。


 それから流通という点ではガイの国、獣王国とも正式に流通が行われる事となった。

 向こうからはこの森にはない果実や海の魚などを持ってきてもらっている。

 流石に生魚とはいかないが干物を持ってきてくれるのでとても美味い。

 こちらからは木材や魔物の素材などを売っている。

 ちなみに獣王国から買い付けた果実でドワーフ達が新たな酒造りに挑戦すると意気込んでいた。


 それからちょっとしたトラブルも1つ。

 獣王国からやって来る使者や商人たちがとにかく爺さん達に会いたがる。

 まぁそこまではいいのだが、勝手に貢物持ってくるのはどうよ?

 爺さん達もこの国では俺が群れの頭と言う事で俺に話を通してくれと何度も言っているのだが聞かない。

 爺さん達はきっぱりと断れるが大人になったばっかりの子達が、もらっちゃダメ?ダメなの?我慢するけど一口ぐらい……みたいな表情をする。


 ガイ曰くこっそりとフェンリルの誰かが獣王国に来てくれないか本気で考えているそうだ。

 そのためにはまずは印象よく貢物から始めよう、と国で動いているらしい。

 と言うか国で?穴だらけの作戦の様に聞こえるがいいのか?バレても問題ない様にしてるから敢えて穴だらけにしてる?

 あ~それじゃその内誰かが獣王国に行きたいと言った時はちゃんとそっちに言うから。

 え?出来るだけ永住希望は居ないのか?

 それは……今度聞いてみる。

 だからもう少し待って。


 トラブルと言えばもう1つ。聖女問題だ。


 聖女は現在俺の国にいる。

 理由は全ての魔物が人間と敵対していない事を教えるため、となっている。

 ちなみに発案実行はティア。

 今現在は自分達が通った修業内容と同じ事をしながらたわむれている。

 大人になったばかりのフェンリルの子供達だけではなく、他の種族たちの子供や魔蟲達とも鬼ごっこだ。

 それにより聖女の悲鳴がこの国で日課となりつつある。

 まるでティア達が来たばっかりの頃を思い出す。


 そして現在、今俺の前には最大のトラブルが発生していた。


「で、何で調停者様がこの国に居るんだよ」

「それは私よりも人間への影響が大きくなり過ぎてしまったからだ。全く、調停者以上の恐怖の象徴となった魔王はリュウが初めてだ」


 そう言いながら優雅に紅茶を飲む悪魔の魔王。

 突然来たと思ったら俺と話がしたいと言う。

 一応相手は魔王の頭みたいなものなので丁重にもてなす。

 ちなみに側近と思われる悪魔メイドも調停者の後ろに控えている。


「仕方ないんじゃない?詳しい事は知らないが調停者が恐れられていたのは大昔の話なんじゃないか?たとえ長命な種族から見ればそう昔でなかったとしても、人間から見れば大昔なんだろうよ。それに比べて俺はついのこの間大暴れしたばっかりだ。昔の脅威よりついこの間の脅威の方が印象が強いのは仕方ないだろう」

「そう言われればそうとしか言いようがないな。では私の跡を継いでみるか?」

「断る。今は色々と忙しいんだ。外交に貿易、下らない人間への対応。色々あるんだよ」


 冗談半分と言うのは分かっているがそれでも嫌な物は嫌だ。

 これ以上手を伸ばすつもりはない。

 調停者は苦笑いしながら菓子を食べる。


「そこまでか」

「どこに住んでるかバレてるからな。とりあえず100年の平穏を得た後にまた人間達がバカな事しないか確かめる。その時はまた動き出す予定だから手は出すなよ」

「知っている。神よりそのように言われている」


 神?それに知ってるってどういう事だ?


「おい。そのこと誰に聞いた」

「リュウの側にずっといる者だ。いい加減話してもいいのではないか?」


 そう言うと珍しくウルが現れた。

 開放したと言うのに相変わらず俺の中にこもっているので本当に困ったものだ。

 まぁ最近は町の様子を散歩していたり、ハーレムメンバーと一緒に菓子を食べたりと色々してる。

 そんなウルは不機嫌を隠さずに調停者を睨む。


「何のつもり?私は幸せに浸っているの。それを邪魔するのであれば、滅ぼすわよ」

「そのようなつもりはございません。ただそろそろお話しすべきではないかと」


 調停者が敬語?

 ウルって本当に偉いんだな。

 その言葉にウルは俺に不安げに言う。


「リュウは……私の正体知りたい?」

「知ったらどうなる?」

「私は……何もしないけど」

「ならどっちだっていい。これまでの関係がこれからも変わらないならどっちだっていい」


 そう言うとほっとした様な表情を見せた後、調停者に勝ち誇った様な表情を見せる。


「どう?これが私のリュウよ。小さな事ぐらいじゃ私達の関係は壊れないの」

「あなたの正体を小さな事と言いますか。まぁいいでしょう。では私はこれで」


 そう言って席を立ち、転移魔方陣を展開する。


「帰るのか?」

「ああ。そろそろ帰る。これ以上ここに居る理由はないが、それでもたまに様子を見させてもらうからな」

「これで魔王4人目が常駐するようになったらどうなるんだろ?この国」


 それだけは避けたいな……面倒臭さが倍増しそうだ。

 そう言うと本当におかしそうに顔をゆがませてから言った。


「また来る」

「今度来るときはちゃんと連絡を入れてくれ。そしたらちゃんともてなしてやる」


 ちゃんと聞いたのかどうか分からないがお付きのメイドと一緒に帰って行った。

 残された俺とウルはこの部屋を後にして家に戻る。

 そしてその道中ウルは俺の腕を組みながら言う。


「ねぇリュウ。本当に気にしてない?」

「何がだ?」

「私の正体。本当に気にしないの?私本当に神様みたいなものよ?」

「一緒に居てくれるなら神様でも何でも構わねぇよ。リルやカリンだって信仰の対象だしな」


 神様っぽいのは意外といる。

 今更そんな事に気を遣っていたらどうしようもない。

 俺にとって神様だろうが何だろうが気に入った者と一緒に入れればいい。

 好きだと言ってくれる誰かが居ればいい。

 大好きな連中を悲しませる奴らはぶっ殺す。


 そんな子供の様な考えでここまで来たのだ。

 もしそんな好きな者達の中に神様が居ても気にしない。


「そっか……うん。本当にリュウは変わらない。いい意味で全然変わらない」

「人間から魔王に変わったのに全然ってのも変な話だな」

「確かに変なの。でも周りは変わったよね」


 そう言って街を見渡す。

 確かに最初は町を作るとか国を作るとか一切考えていなかった。


 力が欲しいとウルに頼んで。

 力を扱えるようになりたいとリルに出会って。

 武器を作りに行ったらカリンを拾って。

 大森林の危機に立ち向かったらダハーカと友達になって。

 そしたらオウカと婚約して。

 そのためにアオイに勝ったらアオイにも気に入られて。

 マークさんの正体には驚いたけど、やっぱり気に入ってて。

 アトラスがもったいないと仲間にして。

 ティアも魔物と居る俺を諦めないと言って無理矢理一緒になったり……


「……本当に忙しかったな」

「だよね~。切っ掛けは私だろうけど」

「自分で力が欲しいって言ったんだ、なら切っ掛けも俺が作ったんだろうさ」


 何て話しながら家に帰って自室に戻ると嫁達が全員集合していた。

 そしてアオイ以外は全員ベッドの上に居る。


「どうかしたか?みんな揃って」

「そろそろ良いかな~っと思ったから」

「何が良いんだ?」


 リルはそう言うが何を言いたいのかよく分からない。

 そう思っていたらリルは俺の腕を思いっ切り引っ張て来た。

 俺はベッドに引きずり込まれると全員俺に向かって言う。


「大分この国も落ち着いてきた事だし」

「もう十分じゃないかな?って」

「だからなにが!?」


 リルとカリンの言葉に突っ込むと全員から返事が返ってきた。


「「「「「子作り!!」」」」」


 その返答に俺は固まった。

 そして嫁達の暴走は続く。


「そろそろ私もその、リュウと一つになっていいとお婆様とお母様に許可をもらったので大丈夫なのだ!」

「リュウ様、オウカもようやく大人になってきました。龍皇国のためにもよろしくお願いします」

「いや大丈夫か!?オウカ小っちゃいじゃん!大丈夫なのか!?」

「大人状態でするから大丈夫。お婆様からもその、そう言う知識だけはあるから、多分大丈夫」


 心配しかない!!

 オウカが大人状態になりながら迫ってくる。

 そして最後にティアとウルが言う。


「問題は誰からか、なんだけど……お嫁さんになった順でいいよね?」

「あれ?その場合私って何番目?」


 ティアの言葉に疑問を持つウル。

 こ、これはヤバい。今までで1番ヤバい!!


 逃げようとする俺に嫁達は見事な連携で取り押さえる。

 これは……諦めるしかないか。

 平和には平和なりの苦難と言うものがあるのかも知れない。

 全く予想すらしてなかった。

 こうして俺は魔物達みんなで手に入れた平和の中で。


 調教師は魔物に囲まれて生きていきます。

突然ですがこれで完結とさせていただきます。

今後はアフターストーリーと言うか、好きに今後の話をほのぼの感覚で書いていく予定です。

出来るだけ現実と同じ時間軸に合わせて書いていきたいと思っています。


今まで読んでいただきありがとうございました。

他作品でも頑張っていますのでご興味がございましたらそちらも読んでいただければと思います。

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