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世界会議

 戦争から半年後、俺達はティアの案内でライトライトの会議室に向かっていた。

 もちろん国民に混乱が起きない様にひっそりとだ。

 より具体的に言うとタイガが覚えた設置型の転移魔術で王城の庭に転移したと言うのが真相。

 そして今回来たのは前から言っていたように俺、アオイ、マークさん、アトラス、迦楼羅天の5人に加え、ナレル枢機卿の6人だ。

 ちなみにティアにタイガ、聖女ヒカリはナレルの護衛という形で同行している。

 俺の国に居たからと言うのとそれ以上の護衛は用意出来なかったからだろう。


 初めて通るライトライトの王城は確かに様々な面から見て素晴らしい城と言える。

 芸術的な面だけではなく、所々に戦争時も使える様に強固な作りをしていた。

 ドワーフの国の城は山の中にあるせいか実用性重視という感じで砦っぽい部分がある。そのため優雅さの様な所は謁見の間とか要所要所にしかない。


 俺の国にもこう言う城って必要なのかな?悪目立ちしそうな感じがして気は乗らないけど。

 国を守る結界はあるけど城壁みたいなものはないからな……考えとこ。


 そんな事を考えながら案内役でもあるティアの後ろを通って行くと、大きな扉の前で止まった。

 そしてティアは緊張しながら言う。


「今この扉に居るのは本当にこの大陸の王達。魔王迦楼羅天が参加するって事から極東の征夷大将軍まで来てる。その全員がリュウに注目してるっと言うかリュウの事を見定めに来たって言って方が正しいかも。だからリュウ、気を付けてね。私が出来るのは案内までだから」

「忠告ありがとな。まぁ強気に行ってみるさ」


 肩をすくめながら言う。

 口のうまさでは確実に勝てないだろう。

 ならば少しでも強気に出て雰囲気にのまれない様にするぐらいは心がけよう。

 ティアと聖女が扉に手をかけ、扉を開けた。


 その先の光景は圧巻と言うのが正しいだろう。

 俺が想像していた以上に多くの王達が参加している。

 恐らく中小様々な国も俺に対して強い興味、もしくは警戒心を持っているからだろう。

 それぞれ護衛や文官なのか、後ろには4人ずつ従者と思われる人達も居る。

 人間の中ではかなり強い方の雰囲気を纏った騎士も居る。

 だがあの教皇ほどの力は感じない。

 つまりここで武力で訴えられても余裕で勝てる。

 まぁ魔王3柱にドラゴン、悪魔を前に戦う気など起こさないと思うが。


「きょ、今日はお越しいただきありがとうございます。魔王リュウ様、枢機卿ナレル様。それぞれお席までご案内いたします」


 給仕なのか文官なのか分からないが震えた声で男性は言う。

 ナレルを案内する者達はナレルの前に来て、そそくさと去るように案内する。

 俺の案内人は……冷汗が止まらないと言う所か。

 それでも笑顔を浮かべ、少しでも機嫌を悪くしない様にしているのが分かる。


 そこまで俺は恐れられているのか。

 まぁ通信機で俺の顔は知られているし、人類の貴重な戦力をほとんどそぎ落としたのだから恐れられて当然か。

 俺は大人しく指定された席に座る。

 そこは長机の端、しかも誰からでも見る事の出来る長方形の短い部分に座らせた。

 俺には両隣は居なく、向かい合うのは議長なのか遠いがライトライト国王と対面する形になっている。

 ま、誰も俺の隣に座りたくないだろうし、俺はこの世界会議で最も若輩の身として甘んじてこの席に座ろう。

 だからお前ら~そんな不満そうな雰囲気を出すな~他の人達が震えだしたぞ~


 ちなみにナレルは前に顔を合わせた枢機卿の隣の席だ。

 教会に属する者はあの辺に座るルールでもあるのだろうか?

 そして議長と思われるライトライト国王が声を上げる。


「全員が揃ったのでこれより世界会議を行う」


 俺はその言葉を聞いてどのような内容になるのかとても興味深い。

 まぁタイガも予想していた通り俺への話し合いがほとんどになるんだろうけど。


「では初めに、半年前に行われた魔王リュウ殿と戦争に関わった者達への説明を要求する」


 説明と言われてもな……攻められたから迎撃しました。ぐらいの理由でしかない。

 言葉を飾るのは苦手だが……まぁ仕方ない。

 それに説明は俺からではなく、教会とその戦争に協力した国々から説明を始めた。

 その内容は俺ですら稚拙と思える内容であり、俺はため息しか出てこない。


 教会側は教皇の暴走と魔物と関わってはならないと言う教義に準じた物であると説明。

 そして俺の国に兵を向けた国々はそれに賛同しただけだと言う。

 そんな態度に兵を殺された国だろうか?俺に鋭い目線を向けて来る。


「では次に魔王リュウ殿。あなたからお言葉をお聞きしたい」


 俺はライトライト国王からの言葉に渋々言葉を継げる。


「俺は初めに教会へ手紙を出した。これはあの戦争の時にも言ったな。その内容は俺の住む森の資源をお抱えの商人などを通して流通させると言う内容であり、決して敵対心をあおる内容ではなかった。だがこの間殺した教皇はこちらが魔物と言うだけで殺しに来た。魔物と分かり合うつもりはないと、では滅ぼすしかあるまい。お前達が我々を否定した様に俺達はお前達を否定しよう」


 そう話している間にアオイが1つの手紙をライトライト国王に届ける様周囲の者に命じた。

 手紙を震えながら受け取ったその者は急いで届けた。

 その手紙に目を通している事を確認して言う。


「それは教皇に送った手紙の下書きだ。俺はそれを証拠として掲示したいのだが、まだ足りないか?」

「……これは一字一句差異はないと思ってよろしいか?」

「その通りだ。字が汚いのは目をつむってほしい」


 あれは地味に大変だった。

 アオイやマークさんに確認してもらいながらだったから時間がかかったし、何度も誤字や言い方など指摘され続けたので結構な量を書いたのだ。

 それをナレルではない枢機卿に渡り、確認して内容は同じだと認められた。

 さらにその手紙は他の国王たちも確認する。

 その最中にもライトライト国王は俺に確認を取る。


「では人類と敵対するつもりはないと」

「当然だ。いくら弱いと言っても数はそちらが勝っている。それに絶滅させると言っても面倒なだけだ。興味はない」

「では流通に関してはまた後程確認させていただきましょう」


 俺の手紙を読んで驚いている者が意外と多い。

 中には頭を抱えていたり、「教皇め……大人しくしていればよい物を」「この内容であれば戦争は必要なかったのでは?」などと言う声も聞こえる。

 俺だって別に最初っから戦争しようと思ってはなかったよ。でも教皇が突っぱねたからな。ぶっ殺すしかないだろ。


「では次にリュウ殿にお聞きしたい。兵は、あの戦争であなた方に向かって行った兵はどうなっておりますかな」


 手紙の次はそれか。

 それに関しては聞かない方がいいと思うんだけどな。

 ま、聞かれたからには応えるしかないか。


「ほとんどは生きて捕らえたが、捕虜と言う立場ではない。今は奴隷として働かせている」

「奴隷ですと!?具体的にはどのような」

「内容に関してはアトラスの方が詳しい。アトラス、説明してくれ」

「は。では僭越ながらわたくしからお話しさせていただきます」


 という事で始まったアトラスの奴隷事情。

 内容は……かなり酷い。

 アトラスの森で農作業をしているとか新たな苗木を育てていると言う点に関しては問題ない。

 だが食糧は1日にパン1つなど、睡眠時間は3時間だけなどと状況は悲惨だ。

 さらに死んだ者、働けなくなった者は魔蟲達の餌となるか、卵を植え付けられて苗床になっている。

 その状況を想像したのか各国の国王たちの顔色が悪い。

 特に兵を出した国王は今にも倒れそうだ。


「その者達を帰していただく事はできないだろうか?出来れば死体もあれば供養したい」

「出来そうかアトラス?」

「帰す事は可能ですが死体に関してはできません。すでに配下の魔蟲に食われていたり卵を植え付けられた者達は原形をとどめていません」

「骨ぐらいは残ってないのか?」

「骨だって貴重な資源です。主に顎の強い者が食しています。それに労働力に関してはあまりにも脆いのでほとんどは苗床になっています」

「あ~それじゃ生きてる奴らに関しては帰しても大丈夫か?」

「ではそのように伝えます」


 生きてる連中に関しては帰せそうだが……どれぐらい生き残っているだろう?

 確か生け捕りにした人間は1000を超えていたはずだ。だが半年も経って生きているとなると……100人居るかな?

 アトラスの森は今は精霊のおかげでだいぶ肥やし易くなってたりしているが、それでも土は硬い。

 魔蟲達だからこそあの土を掘ったりする事が可能なのだ。


「という訳で全員は無理ですが帰せる者は帰す。それでいいか」

「……はい。残念ですが――」

「少し待て!おい魔王!貴様人の命を何だと思っている!!それでも元人間か!!」


 俺と議長の会話に割り込んできた国王が居た。

 勇気は認めるが止めておいた方がいいんじゃない?他の王達も必死に止めてるよ?

 まぁこういうことを言われる可能性は考えてたけど。

 なので用意していた言葉をそのまま言う。


「悪いがこちらは宣戦布告もなしに攻められたのだから、そちらの兵に関して扱いをよくしようなどとは思わない。戦争のルールを守らない者の兵をどう扱おうがこちらの勝手だ」


 そう言うとその国王は怯むがそれでも言う。


「だ、だが貴様は元人間だろう!少しの慈悲ぐらい――」

「調子に乗るなよ人間。俺は俺の群れに手を出した奴らを許す気などない。慈悲などない。民を守る国王の行動にどこか矛盾はあるか」


 少しオーラを放ちながら言うとその国王はよろける様に椅子に座った。

 黙らせた後俺は再びライトライト国王に顔を向ける。


「だがほんの少しの慈悲としてまだ生きている者達は帰す」

「……よろしくお願いします」


 これで終わりだろうかと思っていると、意を決したようにライトライト国王は俺に聞く。


「最後にご確認させてください。後ろにいる魔王とはどのような関係かお聞かせください」


 なるほど。最後にそれを聞くか。

 こう言うのは簡潔に言うのがいいらしいが本当だろうか?

 俺は細かく言う方がいいような気がするけど。


「アトラスは俺が信用する配下の1人。そして迦楼羅天は俺の義母に当たる」

「義母ですか。詳しく聞いても?」

「簡単な話だ。彼女の娘を俺は妻として迎えた。故に義母となる」


 そう言うと明らかに動揺が広がる。

 隣の者と話し合う事はないが確かに空気が変わった。


「そう……ですか。迦楼羅天の娘を妻として迎えた、ですか」

「それ以上の事もそれ以下の事もない。他に聞きたい事はあるか」

「それでしたら兵の解放の日時を詳しく決めたいと思います」

「分かった」


 結果として1週間後にライトライトで兵達を渡す事が決まった。

 アトラスはそれに間に合うよう兵達を解放すると言う。

 それが決まった後はほぼ俺には関係のない話し合いが行われた。

 おそらくこれが本来の世界会議なのだろう。

 凶悪な犯罪組織、今後の教会のありかた、なくなった教会本国をどうするか。などの話し合いが行われる。


 ちなみに教皇位には俺が言うまでもなくナレル枢機卿が就任する事が決まった。

 小難しい事を言っていたが最終的にはナレルに押し付けたと言うのが正しい気がする。

 教会の動きによっては俺が再び動き出す事を恐れていたのは目に見えている。

 なので俺の事をよく知るナレルが教皇となる事で怒らせない様にしたいという意図が丸見えだ。

 それともそれすら計算の内かな?

 どうでもいいけど。


 という訳で世界会議が終わり俺は帰る事にした。

 ナレルは他の枢機卿達と教皇になるための準備だとか、他の教会支部に関して話をまとめる必要があるらしい。

 なので俺は兵達を返すために準備を始めるのだった。

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