宴と世界会議
下らない戦争が終わり、俺達は国に帰ってきた。
俺達の群れで負傷者はいたが重傷者、死傷者はなし。これで完全勝利と言えるだろう。
ちなみにティアは聖女と共にライトライトに戻っており、終戦した事を伝えるのだと言う。
生き残った人類側の兵はすべてアトラスの部下に引き渡し、新たな労働力として組み込まれるはずだ。
硬い外骨格に包まれているとは言え、嬉しそうな雰囲気が出ていたのできっとほくほく顔で連れて帰った事だろう。
ちなみにアトラスの森とは地下で繋がっている。
地中を移動する魔蟲達が頑張って造り上げた安全な道なので大森林とアトラスの森の流通は盛んにおこなわれていた。
と言っても今日は終戦及び勝利の宴。
ドワーフ達がいつの間にか作っていた酒で盛り上がった。
そして次の日にはティアが訪れた。
「戦後処理のために来て欲しいの。その場でリュウの意思も確認したいらしいから来て」
どうやら人類は教会が負けた事で少し頭が冷めた様だ。
これで俺は特に人類と敵対する意思はないと伝えたいのだが……教会滅ぼしちゃったからな。
今更伝えても信用されないだろうな……
ま、最終的には脅しでも何でも使って黙らせればいいか。
どうせ敵だし。
「なら行くよ。俺も言いたい事あるし」
「そう。それから他国の王様達も呼んで世界会議に近い形で行うからもう少し時間を頂戴。予定では半年後にしてるから」
「そうなのか?それじゃその前に聖女の事を連れてきてくれ。ナレルに会わせたい」
「ナレル枢機卿に?分かった。無理やりにでも連れて来る」
「頼む」
という事で半年後に世界会議に参加する事になった。
場所はライトライトで行うのだが、国民に混乱を招かないためにお忍びで来て欲しいとも言われた。
うるさいのは好きではないのでこれも承諾。特に都合が悪いと言う事はない。
さて、次の問題はその会議の際に誰を連れて行くかだ。
俺を含めて5人までにして欲しいそうだ。
とりあえずアオイとマークさんは確定として、あと2人誰を連れて行こう?
ナレルはその場で紹介して新たな教皇になってもらうために連れて行くとして……後1人……
「ナレル枢機卿の事は伝えたけど、枢機卿にはリュウ達の事を客観的に教えて欲しいから従者の1人として連れてこないで欲しいって」
「え?連れて来ちゃダメなの?」
「連れて来るのは構わないっと言うか連れてきて欲しいけど、従者としてではなく説明する人として来て欲しいからってだけ。教会が潰れたって言っても物理的に壊されただけで信仰は消えてないから」
宗教って根深いんだな。
となるとあと2人か。
コクガ達を連れて人間と仲良くしてますよアピールでもするか?
いや、仲良くしててもその関係は遠いどこかに伝えるつもりはないし、面倒臭い。
ならここは徹底的に脅す方向で行くか。
それでしばらくは安泰を築けるだろう。
そして100年後ぐらいに緩和させておけばいいだろう。
その時また戦争を仕掛けると言うのであれば、その時はまた堂々と滅ぼせばいい。
なら連れて行くのはアトラスとリルでいいかな?
ティアの武器のためにフェンリルを狩ろうとしてた事があるし、牽制にはなるだろう。
とりあえずリル、アオイ、マーク、アトラスの4人で仮定しておくか。
その事を伝えてティアは帰って行った。
宴は1週間続けるつもりだそうなので一緒に騒がないかと言ったが、事情説明の最中で忙しいからと断られてしまった。
なら仕方ないと見送る。
早めに戻ってこないかな~っと思っていたら想像以上に速く聖女を連れて戻ってきた。
しかも勇者パーティー全員で。
「いいのか?ライトライトの防衛って今じゃ人類の防衛って言った方が正しいのか?」
「むしろここで魔王を見張ってる方がいいって内容になったから大丈夫。そう思うように僕も国王に進言しておいたから」
そうタイガが言った。
ライトライトの国王が決めたのなら良いのだが……そこのリューズやローゼンさんが潰れてますが?
あの酒確か相当強くなかったけか?
ドラゴンでもほろ酔いになるぐらいの酒。
あれキツイんだよな。
ついでに聖女は既にこの状況に呆然としている。
様々な種の魔物達がどんちゃん騒ぎをしていたらそりゃそうなるものかも知れない。
当然魔物達は聖女の事を警戒しているが俺自ら見張ると言う事で一応の納得はしてくれた。
まだまだ人類は敵と思っている魔物は多いが、これからはたがいに平穏が築けるように頑張りたい。
そして聖女はナレルと話をしている。
何というかナレルがこちらに来たばかりの話をしているから、思い出話でもしているんだろうか?
ちょっとでも印象がよくなればと思う。
宴の後はいつも通りの日常に戻る。
と言っても一部二日酔いなのかフラフラしていたがまぁ見逃しておこう。
そして次は半年後の世界会議の話し合いだ。
会議に出席するのは決めたので問題は誰を連れて行くか。
俺は想定した通りに連れて行こうと思ったのだが、乱入者が現れた。
「その会議、私が共に参ろうではないか!!」
乱入して来たのは迦楼羅。
そして何故か俺と共に会議に行くと言う。
「何でですか。あなた魔王でしょ?俺の従者みたいなことをする必要はないと思いますが?」
「なに、血の盟約を結んだ際に私は子分側の盃をいただいた。つまり従者として動いても問題あるまい」
「それ色々バランスがヤバくなりますから。俺と言う魔王の元に魔王が2柱居るって大問題ですから」
「もう既に私達の関係はあの戦争でバレているも同然。それに今回の従者にアトラスを連れて行くと言う事は他の魔王を配下に加えており、再び戦争を起こすのであれば我々も動くと示したいのであろ?」
確かにその通りだ。
そして迦楼羅が動いてくれれば確かにより脅しが効くと言うものだが……
「本当にいいのか?」
「構わん。老いれば子に従えと言う。ならば娘婿のために少しばかり力を貸すのは当然。これで老後も安泰である」
そう言って笑うが妹さんの方はため息をついている。
迦楼羅の暴走ではないか確認する。
「本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。カリン様がリュウ様の元に嫁に入った話はとっくにしていますし、実力主義という点は迦楼羅族も同じ。実力のある方と縁を結べたのは喜ばしい事です。ですが」
「ですが?」
「落ち着いたら1度こちらの領域に来てください。歓迎いたしますし、カリン様の事を見たいと他の者達も言っていますので」
「分かりました。それは会議の前がよろしいでしょうか?それとも後?」
「後で構いません。落ち着いた頃にみな様でどうぞ」
ではその予定もたてないとな。
俺はそんな感じで半年後の会議に力を注ぐのだった。




