表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/238

開戦

 儀式をしてから1か月後、大森林周辺では新たな魔王を討つべしと連合軍が大森林を取り囲んでいた。

 最も多いのは魔物の縄張り周辺、次に多いのは南の精霊の縄張り周辺、最も少ないのはドラゴンの縄張り周辺である。

 精霊王は1部地域で信仰されているし、龍皇は力のない魔王よりも強力な存在として知られているので少数精鋭の教会騎士のみで構成された結果だった。


 最も進攻しやすいのはそう言ったしがらみがないと言う理由から、どうしても東寄りからの侵攻となってしまう。

 だが1国ならともかく、歴史上初と言える大連合。その数は万を軽く超え、億単位の軍である。


 当然今回の作戦に参加しなかった国もある。

 ライトライトを筆頭に防衛を選んだ各国。そのほとんどは南の精霊信仰が中心となっている国に、戦いを避けるべきと言った枢機卿達が派遣されている国、戦いに参加する事すら出来ない小国だ。

 彼らは決して不参加ではなく、防衛に力を注ぐと言う内容であるため全くこの戦争に参加していないとは言い切れない。

 だがこう言う表向きの理由がなければ強制参加させられてしまうほどの影響力を持っているのが教皇である。


 攻勢を任された国の中では以前リュウたちによってあっさりと倒された国の軍部も参加している。

 当時こそ正体不明の事態となっていたが、現在では魔王と至ったリュウが軍を消し去ったという説がに日に日に増していた。

 当時の恨みを果たすべく、軍は今まで無い程人員を動かしたのだった。


 そして正午、彼らは動き出した。

 宣戦布告も何もない。彼らは魔物であり、討伐すべき対象であるという理由だけだ。

 フォールクラウン国王ドワルや調停者によって国と認められているが強国はそれに否を突き付けた。

 これは国際法に反するものであるが、かの国には魔物しかおらず、しかも人間と友好的な態度は見受けられないと判断したからである。

 ただし森にはドワーフの研究者達が居るため、その者達だけは決して傷つけてはならないと強く言われている。


 彼らが森に侵入する寸前、大森林全体に巨大な絵が現れた。

 しかしその絵は大森林だけではなく、各国の広場や大通りなどにいきなり現れた。

 巨大な絵に映されているのは不機嫌そうな青年である。

 頬に手を付き、気だるげな様子を見せる。

 そして青年は不機嫌なまま足を組み、周囲に様々な化物達が集まった。


 黒い狼、金が混じった紅い鷲、桃髪で角のある女性、首が3つある白いドラゴン、1歩引いた位置に居るメイド、同じ1歩引いた位置に居る執事、そして不機嫌そうな青年に絡みつく蛇。

 明らかに異常な見た目なのはドラゴンだけだと言うのに、普通にしている他の獣や人達からも異様な気配が絵から伝わる。

 そして絵が動き、絵から声が聞こえた。


『俺はリュウ。ついこの間魔王になったばかりの元人間だ。今君達が殺しに行こうとしている化物だよ』


 各国の広場や大通りに居る平民たちや通信魔法を知らない一般の騎士達は驚く。

 そして通信魔法を知っている上位の者達は息をのむ。

 そしてとても意外と思った。

 魔王と言うからには人外の美、もしくは醜悪な姿であると誰もが思っていたからだ。

 だが魔王を名乗る青年は少し探せばどこにでも居そうな顔、普通より少し顔がいいぐらいの青年だとは誰も思わなかった。


『俺はこの結果にとても残念に思う。君達人類の代表として俺は教皇に手紙を出した。その返答が戦争これとは……とても残念と言わざるを得ない。だが寛大な心を持ってこう言おう。まだ君達は拳を振り上げただけだ、まだ振り下ろされてはいない。なのでその振り上げたこぶしを収めると言うのであれば俺は何もしない。屈辱だ、不服だと思うだろうが……はっきりと言って君達人類と全面的に争う気持ちはないし、好んで人類(君達)を殺す趣味もない。なのでここで引いてくれると言うのであればこの事はなかった事にしよう』


 その言葉にざわめきが起きる。

 魔王の言葉を信じられない者、目の前に敵がいるというのになかった事にしようとする意味に混乱する者、脅威ではないと言われた事に憤慨ふんがいする者、様々な者が様々な心境であった。

 そんな心境を無視して魔王は続ける。


『ただし、この森に1歩でも踏み込めば開戦だ。その時は無慈悲に君達を殺し尽くす事を誓う。この戦場に立った者達は古い固定概念にとらわれた、魔物と人類の共存の礎の邪魔になる者として絶滅してもらう。別に今すぐ認めてもらおうとは思っていない。100年、もしくは1000年単位で認めてもらおうと思っている。その時には君達のほとんどが寿命で尽きているだろう。そして俺の手で人類を支配するつもりなど毛頭ない、面倒なだけだからな』


 最後にため息をつきながら言った。

 余裕としか感じられない行動に戦線にいる者達は憤りを隠しきれない。

 その言動はまるでやる気がないだけで、やろうと思えばいつでもできる様に聞こえるからだ。


『さてどうする?その振り上げたこぶしを俺に向かって振り下ろすか?それとも収めるか、選択肢は君達に任せる』


 魔王はそのままただの絵の様にこちらを見る。

 後方に居た司令部よりどうするか選択し、そして軍だけではなく、大森林に住まう魔王に聞こえるような大声で叫んだ。


「突入せよ!!」


 -


「あ~あ。結局こうなっちまったか。本当に残念」


 俺、リュウは通信で見える人間達の行動にそこそこ呆れた。

 一応大義名分は必要かな?と言う気持ちで選択肢を与えたつもりだったが……まるで意味がなかったようだ。

 それともこれが魔物による被害の結果だと言うのだろうか?

 魔物に対する怒りは俺の想像以上に深いのだろうか?


「それで最初はどうするの?」


 リルが聞いて来る。

 俺はそっけなく答えた。


「作戦通り手前から順に殺していけばいい。無理せず容赦せず、無慈悲に殺していけばいいだけだ。それじゃ俺達は準備しようか」


 座ってた玉座から腰を上げて俺達は()()()準備をする。

 そしてダハーカが思い出したように聞いてきた。


『ところでリュウよ。()の様子はどうだ』

「絶好調だよ。むしろ勢い余ってやり過ぎないかって方が正しい」


 儀式後、全員に捧げた右腕は新しい形で再び生えた。

 形こそ何1つ変わらないが、どういう訳かとても大きな力を感じる。

 ダハーカやアオイ、マークさん、ナレルが言うには俺の右腕が()()そのものになったのだと言う。


 小難しい事はよく分からなかったが、俺が国民全員に捧げた右腕は俺と言う王の象徴となったらしい。

 より分かりやすく言うならドラゴンなら角、獣であれば牙、鳥であれば翼、と言うようにその物の象徴と言える物がある。

 それが今回俺が右腕を捧げた事で、俺の右腕その物がこの国に住む者達の象徴となったらしい。


 まだ実感はわかないが……そう言うものだと言われてはそうだと納得するしかない。

 それにあの儀式で失ったものは本来再生する事が出来ないものだと聞いていた。

 つまり俺はあの時本当に右腕をあの場にいた全員に捧げ、二度と戻ってこないはずだった。

 しかしその捧げた姿を見たみんなは、俺の失った右腕を象徴とする事で運よく新たな右腕を得る事が出来た。


 それ故にこの右腕だけが今まで以上の力を持ち、何とも不安定な状態になってしまう。

 現在はこの力を身体全体に回す事が出来ないか試していたのだが……出来ない。

 だが力が今までにないほどに高ぶっているので調子がいいのも事実である。


 それは最も頭が凝り固まったジジイを倒す準備を始めますか。

一定以上のスキルの使用を確認。成長過程のスキルが全て進化しました。

『unknownの加護』が使用可能となり、『無限蛇オーフィスの加護』が使用可能となりました。


『血の盟約』により一定以上の眷属を得たため、従魔より得ていた加護を統合、スキル『魔物の王(テュポーン)』に進化しました。

基礎戦闘スキルが『魔物の王(テュポーン)』に統合されました。

さらに『血の盟約』により眷属に与えた力が還元、スキル『神格化』が顕現しました。


よって現在のカード情報は

名前 リュウ

年齢 18

スキル 『調教師』『剣豪』『魔物の王(テュポーン)』『神格化』『念話』

魔術 全属性 精霊魔法 悪魔術 禁呪 魔力放出

従魔 フェンリル族 迦楼羅ガルダ族 ドラゴン族 エルフ族 魔獣族 魔蟲族

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
オーフィスに王の右腕ねぇ…… まぁこのくらいならオマージュで押し通せるか どっちも今の世代だと知らない人多いだろうしなあ てか人数的にウルさんが蛇なんだろうけど、名前にウルの要素ないよな…… 最初はウ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ