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ちょっと密会に行ってきます

 ティアが俺の嫁になって2日後、ティアを含めた勇者パーティーはライトライトに帰る事となった。

 本当はティアが俺の嫁になった次の日には出発するはずだったのだが、パーティーのほとんどの者が二日酔いでダウン。ティアの祝い酒!っと言うノリで飲み、タイガだけは失恋を吹っ飛ばすように飲みまくった。

 それが原因で頭痛やら何やらで動けないと言う状態に陥ったのだ。


 なので1日開けての出発。だがティアとタイガに関してはライトライトには戻らない。

 それは以前から言ってたように俺と枢機卿のお忍び会談に同行するため。少しでも信用を得るために一緒に来て欲しいと伝えてある。

 そして逆にリル達はお留守番と言う事になっている。

 それは枢機卿達に敵対する意思はないと少しでもアピールするため。

 もし嫁全員を引き連れて行けば警戒されるのは当然と言える。なので出来るだけ人間であるティア達と一緒に行動する事にしたのだ。


「って事で行ってきます」

「気を付けてね。枢機卿って意外と強いらしいから」

「それは今俺達と戦争準備してる連中がほとんどだろ。それからナレルも連れて行くから」

「お世話になります」


 久しぶりのナレル登場。初めて会った時の枢機卿としての服を着ているのは本当に久しぶりだ。

 ナレルはダハーカと共に結界に関する研究ばかりしているので基本的に引きこもっている。その間の服装は白衣を着ているので見方を変えると薬剤師とか医者とかそう言う感じの人に見える事も多い。

 ナレルの事を何も知らない魔物達はダハーカの研究に付いて行ける凄い人間っと言う感じで見られている。


「さて、一応言っておくが転移で移動できるのは森と人間の領域付近までだ。そこからは馬車……って言っていいんだよな?それで行くから」


 ドルフ達が大森林の木々を使って作った馬車だ。普通の木材を使った馬車の数倍は頑丈と言う事で採用。人間が使える魔法や剣技程度では傷もつかない程である。

 頑丈さでは何の問題もないのだが……問題はこの馬車を引くのがリルの群れの子供の1体である事だ。

 馬車を引く力などは何の心配も要らないのは分かり切っているが、彼は当然馬車など引いた事がない。力加減など大丈夫なのかな……っとどうしても思ってしまう。


「まぁ大丈夫でしょ。あの子べた惚れだから」


 そう言うリルの視線の先は今回馬車を引く子フェンリルとアリスが居る。そう、今回馬車を引くのはアリスの相棒だ。

 アリスも今回の作戦に加わっている。なので馬車を引くのを誰に頼むかと考えている時に、アリスの相棒が名乗りを上げたという事だ。


「まぁ確かにスゲー仲いいもんな。一部は既にアリス離れを始めたってのに」

「あれ?リュウは気付いてないの?」

「え、何が?」

「あの子アリスの事本気で狙っているって事。でもアリス自身も気付いてないみたいだけど」


 ………………え、マジ?


「それに最近あの子ったらお爺様やお婆様に相談して人化の術を積極的に教えてもらってるし、上手く人化出来る様になったら攻勢に出るつもりみたい」


 リルの言葉を踏まえて1人と1体の様子をちゃんと観察する。

 アリスの様子は……特に変わりない。相棒の身体を優しく撫でてスキンシップを取る。

 それに対して相棒の方はアリスを軽く咥えて自身の腹部に押し込むような動作をしていた。


「あの行動、確か自分の子供にする行動じゃなかったか?」

「正確に言うと愛する者に対する行動。人間で言うなら抱き締めている様なもの」


 あ~……ありゃ本気だわ。本気でアリスの事を気に入ってる。

 年下の男の子が近くの姉的な存在に恋をした、みたいな展開なのかどうかは分からないが多分そんな感じだろう。

 それに個人的には俺以外にも魔物と仲良くしている人間は必要だし、大歓迎だ。


「でも、まぁ、あれだ。仲良くするのは悪い事じゃないから好きなだけ愛し合えばいいさ。と言っても教会の件が落ち着いたらだけど」

「そうね。今アリスに赤ちゃんが出来ると大変だし、育てるのも不安あるからね」

「考えるとこそこ?まぁ俺も落ち着いたら子供欲しいし、早期解決につながる様に少しでも敵を減らすために頑張ってきますか」


 人間も魔物も関係なく子は宝。でもその宝を守れるように環境は整えないといけない。そのために教会とはきちん区切りをつける必要がある。

 それは俺だけの望みではなく、この国に生きるもの全ての望みであると思う。

 魔物と言うだけで争う世の中は面倒だ、安心して生きられない。ならば安心して生きられる環境を俺が作ろう。今日はそのための第1歩だ。


「………………」


 リルが顔を赤くしながら擦り付ける。

 俺はそんなリルの頭を撫でながら言った。


「そんじゃちょっくら行ってくる」

「うん。気を付けてね」

「ああ」


 軽いキスをしてから俺は馬車に乗り込んだ。

 馬車の中には既にティアとタイガ、ナレルが乗っている。

 そしてタイガは何だか寂しそうに言う。


「……僕も恋人が欲しい」

「どうした急に?」

「だってさ、リュウには恋人がたくさんいるのに僕には居ないんだよ。リュウみたいにハーレムとは言わないけど恋人ぐらい……」


 思っていた以上にタイガがダメージを受けてる!?

 そ、そりゃつい最近タイガから完全にティアの事奪っちゃったし、タイガは賢者として色々しているから恋人とか作る暇ないみたいだし、俺が紹介出来るとすれば……エルフぐらい?

 魔物との恋愛はタイガ的に大丈夫なのかな?他には魔物ぐらいにしか思いつかないし。

 あと思い付くとしたら……ガイに頼んでみるか?獣人の恋人紹介してもらえないかな?


「賢者様、恋人は積極的に動かなければ手に入りませんよ」

「え、もしかしてナレルって結婚してたの?」

「既婚者です。孫もおります。今年で……5歳になるでしょうか」

「あ~なんかそれ聞くとマジですまんって思うわ。孫可愛いでしょ?」

「はい。目に入れてもいたくないとはこう言う事を言うんだと自覚しました。話を戻しまして賢者様、恋はやって来るものではありません。手に入れるものなのですよ」

「ナレル様……」

「私も妻と結ばれるまでアタックし続けました。多少大変な事もありましたが今ではいい思い出です。ですので賢者様もいい恋を見付けたと思ったら積極的に参りましょう」

「ナレル様!!」


 あれ?なんかナレルがタイガの事を良い感じに導いてる?

 ティアの方を見るとティアは気まずそうに視線を逸らしていた。そりゃ逸らすか。振った側だもんな。


「みなさ~ん!準備できたので森の外まで転移しますよ~」


 アリスの方も準備終わった様だ。

 後はダハーカに森の外まで転移させてもらった後アリスとフェンリルの子が馬車を引く。

 この馬車での移動となるとざっと半日ほどかかる。


 本当の事を言うと転移で移動する方が早いし楽なのだが、これは見栄として必要なのだと言う。

 便利性だとか効率とは関係なく、こっちはこれだけの財力を持っているんだぞ~っと言うアピールらしい。本当は色んな従者を連れて行く方がもっとアピールできるそうだが、今回は密会と言う形なので派手にし過ぎても意味ないからこんな形になった。


 それからドルフからドワルへの連絡は既に終えている。

 フェンリルの子供に馬車を引かせてそっち行くからっときちんと伝えている。

 なのでフェンリルの子供がフォールクラウンに言っても問題ないのだ。


『それでは森の外まで転移させる』

「悪いなダハーカ。俺まだ転移の方不慣れでさ」

『構わん。たまにはこうして魔術を使いたい』

「帰ったら思いっ切り試合できる場所も作るつもりだからもう少し待っててくれ。そんじゃ行ってくる」

「「「「「行ってらっしゃいませ!!」」」」」


 国のみんなに見送られながら俺達は転移し、森の外に出てから馬車の乗り心地を確かめながらフォールクラウンに向かうのだった。

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