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魔王となる理由

「ではこれより彼、リュウを新たな魔王として認めるかどうか会議する」


 調停者の1言より始まった会議、俺は取り合えず堂々と椅子に座る事にした。これは先にカリンの母親やアトラスにとりあえず堂々としろ、決してなめられるなと言われているからだ。

 新たな魔王となるかどうかの会議ではあるが、いくつかの工程をクリアする事が出来れば問題ないと言う。


「それでは始めに彼の力についてだが、ガルダ、アトラス。彼との戦闘はどうだった」

「私が初めて戦った時は私の全力の一撃で生き残ったほどだ。今でも時折組手もするが力との点は問題ない」

「我はリュウ様に負けました。それだけで十分かと」

「ふむ。では力は問題ないと見ていいな。バロール、カーミラは問題ないか」

「俺はいいと思うぜ。遠くから見てたがありゃ一定以上の力は持ってる。問題ないさ」

「私も問題ないと思うわよ。力だけなら私も負けちゃうかも?」


 巨人の名はバロール、吸血鬼の名はカーミラの様だ。当然ながら名前持ちか。

 それにしても吸血鬼の方は何と言うか態度が軽い。魔王らしい態度と言うかそんなものを感じられない。一体どうやって魔王になったんだか。


「では力の部分は問題ないとしよう。続いてはリュウ自身に問おう。君の支配領域はどこにするつもりかな」

「俺の縄張りは大陸中央聖魔龍の大森林だ。龍皇や精霊王には話を付けている」

「ほう。それは詳しく聞いておきたい事だ。説明を求める」

「別に大した内容じゃない。俺はその内そこに居るオウカと結婚する事を条件に龍皇から許しを得た。そして精霊王からは精霊達への守護だな。精霊王自身も人間達の勝手な行動に悩みを抱えていたらしい、なので俺が彼らを守る事で協力を得たと言う訳だ。と言っても、精霊の地を守るだけであまり干渉するつもりはないが」

「なる程。では実質君があの大森林の主として他の者達から認められている訳だ」

「そう言えるな」


 そう答えたがアオイからの訂正はなし。どうやら問題ない様だ。

 こう言う政治的な場はほとんどアオイや長老達に任せているのではっきり言って慣れていない。なので言ってはならない点、間違っている点は念話で訂正するように言っているのだが、その訂正が来ないという事は問題ないんだろう。


 俺の話に耳を傾けていた巨人や吸血鬼から若干オーラが乱れたような気がした。

 興味深いと思っているのか何というのやら、とにかく敵対するような事だけは避けないと。


「では続けて君の支配領域について質問しよう。ガルダやアトラスに聞いた限りだが、君は2人ともとても仲良くしていると聞いている。いずれはガルダの娘であるその子の夫となるんだろう。さらに君はアトラスの森にも手を付けて色々協力していると聞く。君は2名の支配領域にも手を伸ばすつもりかな?」

「手を伸ばすつもりはない。ガルダの地に足を踏み入れた事はないし、どのような土地なのかも実はあまり知らない。アトラスの土地に関しては友好な状態を続けながらアトラスに任せるつもりだ。それにこれは俺のためでもある」

「俺のためとは具体的に?」

「再び大森林に攻めてこないための投資だ。あの森で十分に暮らせるとなれば、こちらに攻めてくる事もないだろう」

「なる程。理解した」


 ちょっとアトラスには悪いがこう言わせてもらう。

 これは元々事前の打ち合わせで話していた事だが、アトラスの土地を支配しないと言うにはきっぱりと言う必要があると思ったからだ。

 人間の国をまたいだ土地の管理など出来るはずがない。たとえ駐在する者を準備できたとしても、すぐに行動できるかどうかと聞かれると不可能に近い。

 ならば友好なままアトラスに任せ続けるのが1番いいと結論付けたのだ。

 当然何かあればお互いに協力し合う状態にするつもりではある。


「アトラスに聞く。それは真実か」

「真実だ。リュウ様は我々を支配するつもりはない。樹魔の撤去、元の森の大きさに戻るまでは協力してくれるがその後は自由にしてよいと言われた」

「そうか。ではガルダの方は」

「私はいつでもあの土地を渡してもよいと思っているが、それはリュウではなく娘のカリンにだ。代々あの土地は我らガルダが治めてきた。力あるとはいえ元人間に渡しては私達を信仰する者にも混乱が起こるだろう。それは私も望まない」

「だが結果的に君の婿の土地にもなるのではないか?」

「それはカリンが決める事。私はあの地を守護するだけ」


 調停者相手に全く動じないな。

 自分の代では渡さないが、カリンの代までは関与しないって所か?


「分かった。だが……それでも君の影響力はとてつもないものだね。リュウ」

「そうか?」

「そうだろう。今君の元には2名の魔王が協力体制にある。この会議を開くために必要な事は聞いているかな?」

「聞いてない」

「では言おう。この会議は魔王3名が同意した事により始まる。今回はバロール、カーミラ、そして私が賛成したからなのだよ。現在の魔王は5名だが、あと数100年しない内にガイも魔王を名乗るのにふさわしい存在となるだろう。そしてそのガイとも君は良好だ。そうなると君の仲間となる魔王が3名、これは人間だけにとどまらず私や他の者にとっても脅威だ。この魔王の会議場も君が好き出来るかもしれない。君の1言で合意が3名届かなくなってしまうのだから」


 確かに俺は恵まれている。カリンの母親にアトラスと言う強い後ろ盾が居るからだ。

 いや、力という点に関してはフェンリルの爺さん、龍皇、精霊王などなど他にも強い存在が居る。外交的な部分で言えばドワルやガイだって含まれるだろう。確かに第三者からすれば脅威と言っていいのかも知れない。

 でも俺はその力をただ振るうつもりはない。


「とりあえず調停者、俺の話を聞いてくれないか」

「どんな話かな」

「俺が魔王になる理由だよ。今回の議題にぴったりな内容だろ?」

「それは興味深い。ぜひ聞かせてくれ」


 では語らせてもらおうか。俺の理想を。


「今回魔王になると決めたのは人間が原因だ。もっと特定するように言うと教会の人間が原因だ。あいつらは俺達に勝手に喧嘩を売り、それを俺達のせいだと言わんばかりの態度だ。それがとても気に入らないし、ウザったい。でも俺は大らかでね、並大抵の事で腹を立てるつもりはないんだが……あいつらは一方的に俺を異端として、俺の縄張りである大森林を土足で踏み荒らそうとしている。それがとても気に入らない。と言っても今の状態じゃ大森林は俺の縄張りといくら言ったところで嘘と言われて終わりだろう。だからその証拠として魔王となり、大森林は俺の物だと大々的に人間共に告げたいのさ。それ以外は特に興味はない。だから俺はそちら側が何をしようが気に留めないし、どうでもいい。俺達の幸せを壊さないのなら、な」


 長々と言うと調停者は笑いを堪えながら身体を震わせている。


「つ、つまり君はそれだけの力を持っていながら平穏に暮らすためだけに力を使うと?平穏のために魔王になると」

「そうだ。そのためだけに俺は魔王になる」


 青臭いとでも思われているのだろうか?

 でもこれが俺の目標なのだから仕方がない。俺は自分の群れを守るためだけに魔王となる。それ以外は基本的にどうでもいい。


「がっはっはっは!!そんな平穏のために魔王になる奴なんざ初めて見た!大抵の奴は誰よりも強くなるためとか、魔王となって人間共に復讐だとか、見下してた奴を見返すとかそんな理由はごまんと見てきたが!平穏のために魔王になると言った奴は初めてだ!」


 巨人の魔王は腹を抱えて大声で笑う。

 それに関しては他の魔王も同様のようだ。笑っていないのはカリンの母親とアトラスだけ、後はそれぞれ笑っている。

 後ろからリル、カリン、オウカから怒りのオーラが漏れているが今は我慢しろよ。


「なる程。だから神は君を選び、穏やかに過ごしているのか」


 何か調停者が呟いて周りの魔王に言う。

 それの表情は笑いだけではなく、何か確信がいったような表情の様に俺は見えた。

 そして調停者が1度手を打ち、周りを静かにさせる。


「それではそろそろ決めよう。彼が新たな魔王として認めるかどうか。賛成の者は挙手を」


 そう言ってカリンの母親とアトラスが手を上げる。そして次に手を上げたのは意外な事に調停者だった。

 最終的には全員挙手し、俺の魔王となる事が決まったのだった。

来年もよろしくお願いします!

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「は」とか「の」とかがセリフから抜けてるから威厳が感じられない
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