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魔王への切符

 アトラスから届いた連絡は直ぐに会議室へと直行となった。あまりにも唐突で、面倒な話だ。たった今文化交流が終わったところなのにすぐ次かよ。

 この事はリルにも思念伝達で伝わっており、急いで帰るとの連絡が入った。爺さん達から許可は貰ったそうなので、まずはアトラスに説明してもらおう。


「アトラス。まずは状況を説明してくれ」

「は。今回は魔王同士専用の魔術連絡によって伝えられました。最初こそは我をからかうのかと思っていたのですが、我を通してリュウ様に『魔王』となる事をご検討できないかと、連絡が入りました」

「その時どう返事をした」

「伝えはするが、期待もするなと言っておきました。以前リュウ様は『魔王』にご興味が無いようでしたので」


 ふむ……返答に関しては無難だ。まだはっきりと伝えていないのだから今後どうするのか自由に決められる。

 とりあえず気になる点から聞いておくか。


「まず初めにその話は嘘という事はないよな?」

「当然です。各魔王にのみ繋げる事の出来る魔術ですので、偽者が連絡してくる事は出来ません。そして私に連絡を寄こしたのは巨人の魔王です」

「巨人の魔王?信頼できるのか」

「ふざけて連絡を寄こす様な者ではありません。口は少々軽いですが、このような事で掻き乱す様な事はしないかと」


 う~ん。デマではないと言うと色々どうするべきなんだろうな……

 魔王になる事での利点などは何だ?魔王の知り合いは目の前のアトラスとカリンの母親だけ。あとの2人については全く知らない。


「そんじゃ次に、魔王になる事を了承した場合どうなる?」

「その場合は次の新月の夜に魔王による会議の場に出席していただく事になります。そこで『魔王』としての格を審議し、認められた者が『魔王』を名乗ることを許されます」

「格って何を見て決めるんだよ」

「簡単に申し上げますと、そのものが纏っている魔力や雰囲気を直接見て判断するだけです。主に実際に会ってみると言うのが目的ですから」


 顔合わせの場、と思っていいんだろうか?他の魔王が俺を見てどう思うのかは不明だが、とりあえずアトラスとカリンの母親は認めてくれそうだからあと2人がどう思うかが問題か……

 そう思っていると感じ慣れた強い炎の気配がこちらにやって来ている。

 どうやらカリンの母親もやってきたようだ。


「カリン、出迎えてあげて。そしてこの会議室に来てもらえるよう頼んでくれないか?」

「分かった。お母さんにも相談するって事でいいんだよね」

「ああ。少しでも印象ぐらいはよくしておきたいからな」

「『魔王』になる気満々なの?ちょっと意外」

「お前らを守るために肩書が必要になってきたかもしれないからな、本音ではひっそりと仲間内だけで楽しく暮らすつもりだったけど。肩書1つで得られる安全があるのなら、それも手段の1つだ」

「分かった。それじゃお母さんに頼んでみる」


 そう言ってカリンは一時会議室から出て行った。

 では話を戻そう。


「ちなみにアトラスはまだ『魔王』なんだよな?」

「は。ですがこの度私はリュウ様に敗北しました。この件で我を『魔王』の座から落としたい者がいるかどうかは不明です」

「そうか」

「ですが現在の我はリュウ様の配下、『魔王』の座は自ら返上したいと考えております」

「え?何でそんな事するんだよ?」

「我はリュウ様の配下となり、樹魔の撤去、配下の安全など多くの所で頼っております。最近では1部の配下がこの森で暮らす事を許され、元の森の木々も樹魔にならないように手配してくださいました。ならばこの忠誠、リュウ様のために捧げたく存じます」


 そう言ってアトラスは頭を下げた。

 なんか想像以上に感謝されている様だな。確かに長年悩まされ続けた樹魔の撤去などで恩を感じているのは知ってたけど、『魔王』の座を返上するほどとはな……

 この件に関しては後でちゃんと言おう。礼は今言うけど。


「その言葉はありがたく受け取る。でも返上に関しては気にしなくていい。この事が終わってからだ」

「は!」

「本当に、堅苦しいなアトラスは」


 そう言いながら入ってきたのはカリンの母親だ。

 その後ろにはカリンの母親の妹さんも居る。


「……久しいな、ガルダ」

「この間の話し合いぶりだ。にしてもまさか本当に勝つとはな」


 カリンは元の席に戻り、母親は余っている席に勝手に座りながら言う。妹さんの方は母親の後ろで静かに立つ。

 そんな光景に俺は苦笑いしながら言う。


「俺1人じゃ勝てない戦いでしたよ。カリンや他のみんなの力があったからこそ出来た勝利です。俺は弱い」

「アトラスを軍門に下してからもそう言う事が言えるとは、他の者が聞けばただの嫌味になるのではないか?」

「そこら辺は……分かりませんが、少々お聞きしたい事があります」

「答えられるものなら何でも聞くがよい」


 それじゃ前に聞いた事の確認をさせてもらおうか。


「以前魔王になった時、縄張りの主張、そして不可侵条約が結べると聞きました。これに間違いはありませんか?」

「間違いない。私は大森林から見て東北に縄張りを主張している。これで他の魔王からは介入される事はない」

「俺がこの大森林を縄張りにした際、他の魔王達への影響は」

「ないだろうな。元々精霊王や龍皇ドライグの縄張りとしていたのでな、誰も奪おうとはしない。おっと、アトラスが居たか」

「ガルダ。今の我々はリュウ様に忠誠を誓っている。妙な事を言うな」

「すまんすまん。しかし本当によく勝てたものだ。我が子の力があったとは言えな」


 親バカ発揮させてるな~。

 まぁとにかく確認はできた。そして本題は次。


「俺が『魔王』となって、この大森林を縄張りと主張した時人間たちはどう反応すると思いますか」

「ふむ……おそらく大混乱であろうな。確か人間たちは、この森の魔物や植物から多くの恩恵を得ていたと聞いている」

「姉さま、おそらく大混乱以上の事が起こる可能性は高いと推測されます。魔王が縄張りとして主張しない肥沃な土地はとても少なく、狭い土地ばかりです。この大森林が魔王の手によって管理されるとなると、人間達に大打撃を与える事になると思います」

「俺は大森林にやってきた人間達を皆殺しにしても構わないんだよな?」

「もちろんです。相手は縄張りに侵入してきた愚か者なのですから」


 容赦なく殺してもいいって事か。まぁそこまで徹底的に管理するつもりはないけど。

 となると状況的にはかなりいいか。

 教会は恐らく俺に食って掛かってくる。理由は異端者としてだろうが、『魔王』となったらそう簡単には攻めて来られないだろう。『魔王』を名乗れるほどの力があり、他の『魔王』に認められたという事なのだから。


 なら前向きに『魔王』として検討しようじゃないか。

 それで俺の群れを守れるのなら何だって使ってやろう。


「アトラス。その魔王の会議の場でのルールはあるか」

「は。大きなもので1つあります。従者は5人までです。随分と昔に100体ほどの従者を連れて格を見せようとした者がいたのですが、それが面倒だとか、下らないとか、そのような理由で作られました」


 なんだそれ?そんな感じでルール作ちゃったの?まぁ確かに100体はウザったいだろうけど。


「理由はともかく5人までね。それならリル、カリン、オウカ、アオイ、ダハーカの5人でいいか」


 その場でパパっと連れて行く5人を決める。そう言うと選ばれなかったマークさんが少し寂しげだ。

 そんなマークさんには頼みがある。


「マークさん、そう落ち込まないで下さい。マークさんにはお願いしたい仕事があるんです」

「仕事とはどのような内容でしょう」

「コクガ達と協力して俺が異端者としてどれぐらいのレベルなのかきっちり調べてきて欲しい。それから聖女の方にも必ず接触するだろうから、そちらにも気に掛けてくれ」

「承知しました」


 とりあえずはこんなもんか。あとはリルが帰ってきてから細かく調整、そして他の町のみんなにも報告しておかないとな。

 それに精霊王、そして龍皇にも大森林を俺の縄張りとして主張するからその辺の説明。内容によってはきっかりと境界を決めなければいけないだろう。無理に縄張りを犯す理由はないし、実力は俺以上なんだから自衛手段何ていくらでもあると思う。

 となると次はそんなみなさんへの報告だな。

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