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フェンリル人気は凄い

 そして少ししてマナさん達を連れてフェンリル達の群れを紹介したところ、マナさん達は号泣している。流石のこれにはフェンリル達も戸惑い気味だ。

 特にフェンリルの子供達は俺の影響か、人懐っこいと言うのにまるで近付かない。

 軽く触れ合わせるのもいいかなっと思っていたんだが……


「リュウさん。これ、どういう状況です?」


 あ、アリスがやって来た。ある意味いつも通りフェンリルの子供に乗って現れる。

 その光景を見て俺はアリスに仕事を頼む事にした。


「アリス。この方達は獣公国からやって来たマナさん達だ。ぜひフェンリル達と触れ合って欲しいんだが……取り持ってくれない?」

「え!何で私なんですか!?1番仲がいいのはリュウさんでしょう!!」

「俺の場合は爺さんたち一家って意味の方が強いから。でもアリスは子供達を通じて色んな人達と仲良くしてるって聞いてるぞ」

「それは……間違ってないですけど……」


 アリスの仕事は基本的に森の環境調査及び異変の察知だ。

 この仕事はフェンリルの子供達や大人達を含めて行っているのでフェンリル達と仲良くなるきっかけになる。そしてアリスはフェンリルの子供達から絶大な人気を得ていた。

 子供達からすれば遊び相手兼面倒を見てくれるお姉さん。大人達からすれば子供の面倒を見てくれる優しい人間となっている。

 おそらく群れ全体で見れば俺よりフェンリル一族に好かれているんじゃないか?俺の事をボスの孫娘をもらった存在として見ているフェンリルもいるし。


「で、でもですね。私使者様のお相手をした事なんてないんですよ!基本的に裏方だし、礼儀も作法も心配で……」

「大丈夫だって。俺よりはマシだろ?」

「分かりませんって。私が学んだのは本当に最低限と言うか、聞き込みとかで使えるものだとか、ってまた遊んであげるからちょっとだけ待って、ね?」


 アリスの相棒となりつつあるフェンリルの子供がアリスを舐める。でも構って欲しいのかアリスの側を離れようとはしない。

 爺さん曰く、そろそろ大人になりつつあるって聞いてたんだけどな……


「それにアリスに丸投げって言うつもりもないって。ただ人間が仲良く出来たから、みなさんのも仲良くできますよ~ぐらいな感じで」

「うう、怒られた時は助けて下さいよ~」


 自信なさげなままマナさん達と、戸惑うフェンリル達の間に入る。

 アリスは言葉を選びながらとにかく顔を上げてもらう。


「えっと、リュウさんから間を取り持ってっと言われてきました。アリスです。是非みなさんにもフェンリルと仲良くしたいただきたいと思い、参上しました」

「仲良くとは」

「触れ合ったり、毛繕いしたり?」

「触れてもよろしいのですか!」

「大丈夫ですよ!?あ、でも無理矢理はダメですからね。手招きして、近付いてくれた時にそっと撫でたりとか」


 所々気圧されてるな……本当に獣王国の人達フェンリルの事を持ち上げ過ぎじゃないか?それとも信仰してると言うべきか?

 フェンリルに憧れた獣人が国を作ったという話だが……やっぱその辺が関係してくるのかね?


 アリスが仲良くする、と言う部分で相棒のフェンリルも分かりやすく態度に表しているせいか、結構うまくやってる。

 平和だな~と言うかこれであってるのかな~文化交流。

 ほとんどの連中がフェンリルだけに注意が言っている様な気がするんだが……落ち着くよな?落ち着いてくれるよな?


「リュウ様、少しよろしいでしょうか?」

「ん?どうしたコクガ」


 少し遠くからコクガに声を掛けられた。

 なんだろうと思いつつ聞いてみる。


「ここでは流石に。それに使者様達にはもう少し時間を空けてからの方がよいかと」

「……どんだけ重要な話なんだよ」


 そう言いながらもコクガと共にその場を離れる。

 アリスはあの子フェンリルに任せれば大丈夫だろう。力もそれなりに持っているし。

 そしてコクガと共に来たのは家の会議室だ。俺だけではなくカリンやオウカ、アオイ達全員が揃っている。

 え、そんなに重要な話なの?


「今回このような形でお呼びだてしてしまい、申し訳ございません。とても重要な話ですのでお呼びしました」

「コクガ様の招集とは珍しいですね。それほどまでに重要なのですか」

「はい、アオイ様。実は教会に侵入させている仲間から緊急の伝手でして、リュウ様を『異端者』として扱うと教会内部で動いているそうなのです」


 その話を聞いて俺はマークさんに振り向く。


「聖女の方ではどうよ?」

「まだそのような話は出ていません。ですがその話が事実であればいずれ知ることになるかと」


 聖女はまだ聞いてないか。

 現在の聖女は教会直属の騎士として各地で魔物討伐を行っている。コクガ達やマークさんが集めた情報によると、その剣は以前より鋭くなっているとか。

 そして同時に何か思いつめた表情を見せる事もしばしばあるとか。そしてその表情を見せる度に剣が荒々しく動くらしい。


「聖女には伝わってないか。現協会のトップたちって武力派が多いんだっけ?」

「そうです。教皇様を初めとし、ほとんどの枢機卿が武闘派ですが……過激な方ばかりと言う訳ではありませんよ。およそ半分は自国や派遣されている国を守るためですから」


 そのナレルの言葉に少し考える。

 端的に言えば魔物の脅威から身を守るための武力と言う所だろう。こればっかりはどうしようもない問題だと思う。

 俺の縄張りはこの大森林だけ。他の野良の魔物がどこでどうしているのかは、把握していない。

 俺の見ていない魔物の悪さが俺のせいになるんかどうかは分からないが、そればっかりは自分達でどうにか対応してもらわないといけない。


「それから現在ですが、勇者様がこちらに居る事も問題視されているようで……」

「どう言う事だコクガ?と言うか俺達の存在がバレたのか!?」

「リュウ様個人の事はある程度掌握されていると思います。ですがこのように国を築いているという点に関しては気付かれてはいないかと。その者の報告によりますと、この大森林を住処にしている所までだと。それから勇者様の件はあくまでもこの森に居るために不安が少し募っているという点です。勇者様は本来国を転々と旅をしながら魔物退治をするものですので、大森林に留まっているという状況に不安を抱えていると言う所でしょう」

「あ~そう言えばもう1,2ヶ月は経つか?ティア達の修業状況どうよ?」


 普段はリルから報告を受けているんだが、今日からは代行としてカリンが見ていたはず。


「勇者達はこの森で普通に生きるぐらいにはなったよ。でも安全に生きるとすれば真ん中辺りが良いんじゃないかな?」

「真ん中辺りか……人間や野良相手になら十分か」


 一応どれぐらい強くなったのか、確認してから戻すつもりだが現在どれぐらいなんだろう……

 特に気になるのはティアだな。途中から焦りの様なものがあったし、今じゃ各人の才能を伸ばす特訓に切り替えたはずだが直接見るのは狩りの時だけだからな……


「その判断はパパがするしかないんじゃない?元々パパが不安だから修業って事になったんだし」

「まぁな。今度直接会って組み手でもしてみるさ。魔術組の方はどうなんだ、ダハーカ」

『ある程度は認めてやらん事もない。だがやはり全ての術を覚えるという部分ではまだまだだ。見込みがありそうなのはあの中年か』

「ローゼンさんか。確かにあの人根っからの魔術師気質って感じだったからな」


 タイガの奴は賢者と言われてもまだまだか。その辺は経験的な問題もあるんだろう。

 こればっかりはどうしようもないからな。


「そして最後にコクガ。俺の異端者として世間に知らされるのはどれぐらいだ」

「直ぐにでも動きかねないかと、どうやら教皇はリュウ様の事をとても危険視しているようです」

「使者たちであるマナさん達に影響は出るか」

「……1部の方々が残る可能性はありますが、恐らく大丈夫でしょう。教会本部は西に在りますし、1週間で即攻めてくる事もないでしょう。危険視しているというのなら、必ず部隊を整えてから攻めてくるでしょう」


 コクガの事を確認する意味でもアオイとマークさんに目線を向けると、特に反論はない。

 2人も同じ予想という事だろう。


「ならいい。まずは使者のみなさんの安全が第1だ。その後教会が責めてくると言うのなら、滅ぼすぞ」

「「「は!!」」」

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