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戦後処理

「リュウ様、お次はこの書類にサインを」

「………………」

「リュウ様、お次はこの資料をお読みください。アトラスの森の復興状況です」

「………………」

「リュウ様、お次は――」

「………………アオイ、これいつまで続くんだ?」

「もうしばらく続きますよ。この大森林の復興だけではなく、アトラスの森の復興状況、互いに行き来させている魔物や魔昆虫の状況、それからドライグや精霊王との情報交換など様々な業務があります。それらの仕事は私達がしておりますが、最終的な認証、決定はリュウ様にしかできない事なのです」

「それは分かってるし諦めてるよ!!でもさ、この資料の山どうにかなんないの!?」


 俺は悲鳴を上げながら倒れる様に机に頭を下ろした。

 戦争終戦後はお祭り騒ぎでみんなして盛り上がっていたのだが、それはその日の夜だけだった。

 次の日の朝にはすぐアオイが資料を製作し、今後の復興の仕方、アトラスの立ち位置、アトラスの森の復興及び樹魔の撤去などなど、仕事が襲い掛かってきた。


 こちらの被害は少ないが、死者が少ないだけで重傷者はたくさんいた。

 運良くと言うか、俺やダハーカ達で作ったポーションなどを使った事によりすぬギリギリのところで持ちこたえる事が出来たらしい。

 それがなかったら死者はさらに増えていた事だろう。

 具体的にどう殺されたのかは結構気持ち悪くなる内容なので今回は省略させてもらう。


 とにかくこちらにも当然被害があったのでトップである者はこういう時働かないといけない。

 当然リルやカリン達も手伝ってくれているのだが、有能過ぎて俺の方でつっかえている。

 リルやカリン達は被害によって破壊された場所や、戦場になった場所の被害を細かく教えてくれているため、本当に助かるのだがあまりにも有能過ぎる。

 持ってくる資料を、俺が一つ確認し終える間に五つほどの資料を纏めてくるのだからこれがまた手が回らない。

 一応アオイやマークさん、忙し過ぎてダハーカにも手伝ってもらい、優先度の高いものから目を通しているはずなのだが、まるで減らない。

 これって俺が遅いだけなのか?


「どうにかと言われましても、これらは全てリュウ様が目を通されないといけないものばかりです。それに重要な物のほとんどは終えていますし、もう少しですよ」

「それ本当か?まだまだある様に見えるんだけど」

「現在優先するべき資料は現在机の上に置いてある物だけです。お客様用に置いてある資料は優先度の低い物ですのでご安心を」

「安心していいのか分からない……」


 まぁ確かにこれは俺が目を通さないといけないってものばかりだったので仕方ないと思う。

 ダハーカの結界の効果およびその強化と欠点、緊急で飲んだポーションの効果と副作用、戦っていなくなった者達への感謝状、アトラスの森の現状、協力してくれた龍皇との会談などなど、確かに重要だと思うものばかりだった。


 文句はないが疲れる。

 というか疲れた。

 目が痛い、肩が痛い、指が痛い、尻が痛い。

 やっぱ俺部屋で黙々と仕事をするより動いている方が性に合ってる。


「でもやっぱりキツイな……」

「最近は仕事ばかりですし、リフレッシュに散歩でも致しますか?」

「…………やっぱいい。ちゃっちゃと終わらせてから思いっきり休む」

「では疲れに効くこちらをどうぞ」


 そう言われて出されたのはお茶だ。

 普段飲んでいる茶よりずいぶんと色が薄い。


「これなんてお茶?」

「エレンの花畑で出来た花を使用したものです。スッキリとした香りなので飲みやすいですよ」

「へ~お茶になる花もあるのか。少しは薬草とか知ってるが食用の花までは知らなかった」


 興味深くてついお茶が入ったカップをじっと見る。

 ほんのりと染まったお茶を一口飲むと後味が確かにすっきりしている。

 香りも花の匂いがしていい。


「よし!軽く元気補給完了!次頑張るぞ次!」

「その調子ですリュウ様」


 こうして気合を入れ直して再び書類に目を通してサインをしていく。

 しばらく仕事部屋にサインする音と、ページをめくる音だけがしていたがノックがされる。


「どうぞ~」


 書類にサインをしながら返事をする。


「失礼します」


 そして入って来たのはマークさんだった。


「おかえり、アトラスの森はどうだった?」

「もうすぐ全ての樹魔を食べ終えるところですよ。それからリュウ様にお客様です」

「客?アトラスか?」

「いえ、獣王国の王子です」

「え、ガイの奴戻って来たのか」


 冬の前に国に帰ったが戻って来るとは思ってなかった。

 なんだかんだであいつは王子様らしいし、音沙汰なかったので勝手に忙しいんだろうと思っていた。


「はい。それで今回の勝利祝いの品を持ってきたそうです」

「そりゃありがたいな。けど会うのはもうちょっと待ってくれ、もう少しで一段落つくから」

「承知しました。では客室の方に通してもよろしいでしょうか」

「悪いね、ダハーカ達と結界の調整を頼んでるのに」


 現在のダハーカは枢機卿と共に結界の再調整をしている。

 何でも魔力の消費を省くために、地中まで結界を張っていなかったそうだが、今回の戦争で昆虫が地中を潜って侵入してきたため改良する事にしたそうだ。

 具体的に地中にも結界を張るが、大き過ぎる魔力消費を抑える実験を繰り返している。


「ダハーカ様がおられるので私一人抜けてもそう変わりませんよ。ダハーカ様の知識は我々悪魔にも引けを取らないほどの知識量ですから」

「……本当に何で俺勝てたんだろう?やっぱりあれか、眷族を出しまくってた後だからか?」

「それに関しては何とも、その情景を詳しく知っている訳ではありませんから」

「まぁいいか。今は仲間なんだし、気にする事もないか」


 ほんの一年前の話なのに、妙に懐かしく思う。

 それだけ大森林に来てから充実していたという事か。

 地元でただの調教師してる時はあんまりおもしろく感じなかったからな……


「それじゃ一段落したらガイの奴と会うから、調整頼む」

「承知しました。では失礼します」


 何だか懐かしく思える奴と久しぶりに顔を合わせる事になったな。

 元気でやってたのかな?ガイは。

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