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狼に拉致られる形で冒険が始まりました

 狼を助けたその日の夜。


 何となく眠れなくて窓から月を見ていた。思い出すのはあの綺麗な狼のことばかりだった。

 まさかあそこまで綺麗な生物が存在するとは思ってもみなかった。


 ウトウトとしてきたのでそろそろ寝ようかと思った時、狼の遠吠えが聞こえた。

 牛と馬が襲われるとヤバいので慌てて着替える。


 俺には戦闘能力は皆無なので牛や馬が全て舎に居るかをチェックするのが俺の仕事になる。

 それが終わったら外で狼が来ないかを警戒する。昼間は助けたが牛や馬を襲うならこっちだって戦うしかない。


 ただやけに遠吠えが多い?あっちこっちから聞こえてくる。

 まぁいいか、まだ被害が出たわけではないようだし狼を見たという報告もない。


 このまま何事もなく過ぎるというならそれでいい。

 人間同士の喧嘩ぐらいならどうとでもなるが殺し合いはしたこと無いんでな、それに狼に食われて死ぬのも嫌だし。


 そう思いながら牛舎の前を陣取っていると何かが吠えた。

 吠えた方を見るとあの狼がいた。

 昼に会ったとてもきれいな狼が、群れの仲間だと思われる狼たちと共にいた。

 夜の闇に紛れて金色の瞳だけが相手の位置を教えてくれていた。瞳の数を数えるだけで十匹以上入ると思う。


 これじゃ勝てん。死ぬ気もないが牛と馬たちを食わせるわけにもいかない。

 さてどうしたもんかな?


 『こんばんは、いい月夜ね』

 声が聞こえた。凛としたハスキーボイスでたぶん、俺に聞いてきた。


「ええ、いい月ですね」

 とりあえずそう答えるしかなかった。たぶんこいつらはかなり上位の魔物だ。


 魔物は基本、人語を話すことはない。

 理由は二つ、一つは人語を話すのは長命種であり長い時間をかけなければ覚えることはないというもの、もう一つはただ単に人間を見下しているだけだ。


 長命種、有名なところではドラゴンや悪魔なんかが多いが、どれも人間なんて取るに足らない相手でしかない。相手になるのはそれこそ『勇者』ぐらいなものでその他の人間じゃぁ国一つ分集まっても勝てないらしい。


 そんな奴が俺に何の用なんだか‥‥


『今日はあなたに質問があってきたの』


「質問ですか?自分に答えられるものでしたら何でもどうぞ」


 とりあえず下手に出ないと一瞬で殺される。


『あら、素直なのね。ではさっそく聞かせてもらうわ、あなたはなんで私を助けたの?貴重なポーションを使ってまで』

 さてどう答えたものかね。


 素直に「あなたが綺麗だったので」なんて言って信じてもらえるとは思えないし、かと言って適当な嘘ついたらそれはそれで殺されそうだし。


『早く答えなさい。私はそんなに気が長くないの』


 やっべ、これはさっさと答えねぇと。しゃーない、一か八かで正直に答えるしかないか。死んだら死んだで諦めよ。


「あなたがあそこで死ぬのは勿体無いと考えたので助けました」

『勿体無い?何が勿体無いと思ったの?』


 後ろ足で頭掻きながら聞くのはやめろよ、余裕丸出しかよ。


「綺麗なあなたがあそこで死ぬのは勿体無いと感じたので助けました」


 その言葉を聞いて狼はピクリと耳を動かした。そしてやけににおいを嗅ぐ様な仕草をしたと思ったら急に笑い出した。


『何よその理由!人間が私を綺麗だと思ったから助けた!?長い事生きてきたけどそんな理由で助けたのはあなたが初めてよ!』


 そう言って思いっきり笑ってるところすみませんけどね、そっちのお仲間に一部が思いっきり威嚇してきているのをやめさせていただけませんかね?めっちゃ怖いんですけど。


『本当に面白いわ、あの遊びで助けた数少ない人間の中でも特に稀な部類よあなたは‼』


 へ、遊び!?あれ遊びだったの!なんだよそれ助ける必要無かったじゃん。


 てかよく信じたな綺麗だって言ったところ。


『ねえ私あなたの事を気に入ったわ。名前は?』


「え、あぁ自分は『畏まって言わなくていいわ』‥‥俺はリュウだよ、ただのリュウ」


 人のセリフに割り込むな。つーか逆にタメ口で良いんだ。


『リュウね‥‥珍しい名ね。リュウ、今からあなたは私のものよ。異論は認めない』


 ‥‥‥はい?


 狼は仲間になにか伝えると他の狼たちがキャンキャン鳴いてたけど狼が黙らせた。なに、これからどうなんだ?


「えっと、私のものっていったい?」


『そのままの意味よ。今からリュウを私のペットとして連れて帰ると言うことよ』


 はあ!?何だよその突然すぎる展開は!俺をペットとして連れて帰るとか!!


『じゃ行くわよ』


 そう言って大型犬程の大きさから10メートルぐらいの大きさまで巨大化して俺を咥えた。


「ま、待てって!何処に行くんだよ!後、せめて荷造りぐらいはさせろ!」


『荷物なんて邪魔になるだけだから要らないわよ。それと何処に行くかはすぐ分かるわ』


 そのまま俺を咥えたままどっかに走り出したのだった。


 ‥‥‥‥‥マジどうなるんだろ俺。

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