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VS昆虫魔王1

 初手、俺はロウを無造作に振るった。

 だがそんな攻撃でも雑魚ならあっと言う間に両断される。

 しかし魔王はその攻撃を同じように無造作に振った手で弾き飛ばした。


 ああ、確かにこいつは強敵だ。

 だからこそ闘争心が沸き起こり、面白そうだと感じてしまう。


 即座に使ったのは『魔狼王の加護』、このスキルが今一番使い慣れているスキルだ。

 それを使いながら肉薄する。

 今度は無造作などではなく確実に殺すつもりでロウを突き出す。


 それに対して魔王は腹の脇にある腕をクロスして守り、人間同様に肩にある残りの腕で俺を掴んで膝蹴りを食らわせる。

 分厚いオーラのおかげで直接的なダメージはないが衝撃は俺を襲う。

 素で食らっていたら当然死んでいただろうと、容易に想像が付くほどの威力だ。


 俺は空いている左手で魔王の脇腹を鋭く突く。

 オーラで守りながら出なければ突き指どころか指の骨が砕けていただろう。

 それ程までに、堅い。

 魔昆虫の外骨格はとても防御力があるようだ。


 その衝撃で手を放したので俺は一旦距離を置く。

 魔王は突きを食らった部分をそっと撫でながら確認する。


「力の無いと言ったが……やはりそんな事はなかったか」

「必死こいて手に入れた力だ。一矢報いるには十分だったみたいだな」

「だがまだ全力ではないだろう」

「当然!」

 俺はスキルを切り替えながら魔王に再び向かう。

 次に使うのは『龍皇種の加護』だ。

 これはとてもバランスがいいスキルだが、ややパワー寄りで『魔狼王の加護』に比べると動きが遅い。

 その代わりに今回の様な防御力が高い相手には相性がいい。


 俺が繰り出した拳を魔王は避けた。

 それだけでこの拳が当たれば魔王でもダメージが通る事が分かる。

 だが問題はあの翅か。


 先程まで閉じていた翅を広げて低空を飛ぶ事でより早く動いている。

 それに小回りが利くのか森の中だと言うのに自由自在に飛び回る。

 この森に住んでいるからこその動きなのか、元々こういう場でも行動できるように進化していたのか、どちらかは分からないがそんなところだろう。


 ……だが当たらないな。

 確実に攻撃を当てるのなら魔狼王のスピードが必要だ。

 だがそれだと今度は攻撃力が足りない。


 一応全てのスキルを同時に使用する事は可能だが、その分魔力の消費が激しいし、制御も難しい。

 リルやカリン達が中に居てくれているんなら、制御の面はどうとでもなるのだが今は戦闘中だ。

 今呼んでも厳しいだろう。


 そうなると……

 俺は再びリルのスキルに切り替える。

 当たらない強い攻撃より、当たる弱い攻撃で確実にダメージを与えていくのがいいだろう。


 再びスキルを切り替えようとした瞬間、魔王の拳が迫っていた。

 俺は魔王の拳を二つは逸らす事が出来たが残りの二つの拳は腹に入った。

 丁度スキルの切り替え途中だったせいか、先程までよりもダメージが初めて通った!


 そのまま俺は後ろの樹に激突し、口から血を吐く。

 口に血の味が広がりちょっと不快感を覚える。

 樹への衝突そのものは大したダメージにならなかったが、まさか切り替えの隙を狙っていたとは。

 そしてその瞬間を的確に攻撃できる技量にも驚きだ。


 そして魔王は飛んで追撃に出る。

 俺もただやられるのは面白くない。

 既にスキルの切り替えは終了、ならこのスピードを生かして少しでも俺に優位な状況をまずは作り出す‼


 素早く体勢を整え、飛び出す。

 魔王の上下の腕が迫って来るのと同時に俺もロウを振るう。

 お互い避けながらの攻撃だったので掠る程度だ。

 だが攻撃範囲は俺の方が広い。

 お陰で魔王の翅を切り落とせた。


 ダメージとしてはそんなに与えていないだろうが、これで機動力は削ったはずだ。

 魔王は残った翅をしまう。

 あくまでも切ったのは翅だけなので、翅を守っている外骨格には傷一つない。


 これで先程の動きは出来ないだろう。

 実際魔王は走って来るが先程のスピードはない。

 その内にまた追う形のスキルに切り替え、正面から殴る‼

 蒼流で斬るのも手かもしれないが魔王にはが通るのかは分からない。

 斬るという意味ではロウがもっとも鋭いからな。


 一発一発が重たい拳のやり取り、オーラで身を守っているとは言えその衝撃は凄まじい。

 だが分かるのは魔王の拳は俺より劣っているという事だ。

 魔王の拳は俺のオーラを突き抜けて生身にダメージは入っていない。


 それに対して魔王の様子は時折りぐらついている。

 と言っても俺よりも二つも腕が多いのだから当然手数は向こうの方が多い。

 だが俺のダメージは表面上だけ、内臓や骨にまでは届いていない。


 しばらく殴り合っていたが魔王は手を伸ばし、鎌の様な爪で俺を切り裂こうとする。

 俺は自然と蒼琉に手を掛けた。

 そして一閃。


 魔王の腕を切り落とすには至らないが確かに薄くだが斬った。

 そして俺は蒼琉で魔王のある部分を狙う。

 真っ直ぐに構え、右へ左へと避けてひたすら神経を集中する。


 そして魔王が腕を伸ばした瞬間、魔王の腕を切り落とした。

 外骨格と外骨格の間にある隙間に刃を通し、切り落とす事に成功した。


 この結果には魔王も驚いている。

 だが残り三本、まだまだ油断できない。

 そう思っていると切り落としたはずの腕が俺の脚を掴んだ‼


 そう言えば昆虫って切り落とした部位もそう簡単には死ななかった!

 でも相手を握って止める程の力があるとは!?


 掴まれたせいで反応が遅れ、残った三本の腕で俺を切り刻もうとする。

 俺は身を護るが何度も殴られ少しずつダメージを負う。

 掴まれていない方の脚で勢いよく魔王を蹴り上げる。

 すると魔王は一度下がり、切られた方の腕を拾って傷口を傷付けた。


 その行動に何の意味がある分からず、警戒するが魔王はその傷付けた腕を腹の横に当てると引っ付いた。

 そして少しピクピクと動くとすぐに自在に動けるようになった。


 ……まさかくっ付くとは。

 確か蒼流で斬った際に傷口は焼いたはずだが……あ、だから傷付けたのか。

 火傷を起こした肉をそぎ落し、くっつけたと言う事か。


 ………………いやどんな事だ?

 普通はそんな事をしてもくっ付かないだろ。

 本当にどんな身体の構造してんだ?

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