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襲来

投稿再開します。

 次の日の朝も爺さんと龍皇が修業の手伝いをしてくれている。二対一で軽く身体を動かす。

 所詮身体を軽く動かす程度なので殺気もろくにないしあまり緊張感もない。殺気交じりの本気は朝食を食べた後からだ。


「ありがとうございました」

『うむ。しかしリュウにとってはあまり修業になってはおらんのう……』

「え、なんでです?」

「気付いていないのかね?」

 確かに今のは修行と言っても本当に軽いものだ。

 確かに俺のためになっているかと聞かれるとあまりそこまででもないように感じるが……

 そう思っていると爺さんが言う。


『リュウはいつまで経っても力の加減が分かっておらん。そのせいで身内には負け越しじゃろ。もしくは引き分けじゃな』

「え、でもそりゃやっぱり殺す勢いで殴る訳には」

『じゃからそこが下手だと言っておるんじゃ。お主は全力かゼロの両極端なんじゃよ。実際に魔王に勝っておきながらここでは一度も勝てておらんのが証拠じゃ』

 そう言われると弱い。

 確かに魔王がカリンの母親だと分かってからは初めて戦った時よりも力を抜いているような感じがする。

 でもそれは相手も傷付けない様にするためだし


『そこが甘いんじゃ!魔王も儂もそうそう簡単に死ぬような存在ではないわ‼それなのに傷つけたくないなどと言って、手を抜き過ぎておるから周りの者にとっても修業にならんのじゃ』

「…………ごめんなさい。もうちょっと修業します」

 俺の課題は力のコントロールか。結構初期段階の問題だよな……

 正直落ち込む。いまだに力のコントロールが出来ないと言われるなんて……


「しかしフェンリル殿、それはリュウの優しさであって」

『分かっておる。しかしそれではいかんのじゃ。もし身内から敵が現れたらどうする?リュウはその者を殺せるのか?その際に殺さない程度に倒すとしてもあの程度では逃げられるわい』

「確かに王としてその判断は重要です。ですが今の所その様な邪な者は」

『今はじゃよ。この先現れんとは限らん。特に昆虫の魔王との戦いが終わったらな』

 爺さんが心配してくれている事も一応分かる。

 多分名付けした皆が裏切る事はないだろうがその他が裏切らないとは限らない。


 …………そう言えば一度も考えた事ないな。

 皆自然と一緒に居たからそう言う事全然考えてなかった。

 そう言う事も考えておかないとダメなのか……


『厳しい事言うがそう言う事も頭の片隅程度に入れておいた方がよい。では飯としよう』

「私は国に帰ります。対策の方もそろそろ仕上がりそうですから」

『うむ、ではまたな』

「今日もありがとうございました」

 そう言った後、龍皇は国に飛んで帰って行った。

 それにしても今さら力のコントロールか……やっぱりショック。

 そんな様子を見て爺さんはため息をする。


『もう少し信じてみてはどうじゃ』

「信じるって何をです?」

『孫やリュウの妻達の実力じゃよ。おそらくお主が考えているよりもずっと強いはずじゃ』

「……俺、どこかで信じてなかったんですかね?」

『信じていないというよりは過保護なんじゃよ。儂はそう思う』

 過保護……そうなのか?

 過保護なのか俺は?あまり実感がわかない。


「これは……直した方がいいんですかね?」

『……儂にも分からん。よく妻や娘に孫に甘いと言われるからのう。だがその優しさは持ってて悪いという事はないじゃろ。ただ逆にとらえれば不安なんじゃろう』

「不安……」

 確かに俺が見てない所でリルやカリン達が傷付くのは嫌だ。

 俺より強いとか弱いとか関係なく心配だ。あ、これが不安か。


「……確かに不安です。強いとか弱いとか関係なくリルとカリン、オウカにアオイ、ダハーカにマークさん、そしてウル。皆俺の知らない所で傷付いたりするのは嫌です」

『その臆病さに屈してはいかん。それに今言った者達はそれ程弱くはないぞ?』

 爺さんが苦笑いをしている。

 特にアオイやダハーカなんて俺が心配する必要がないぐらい強いか。


 そう思った瞬間だった。

 まだ、まだまだ遠いが何か小さい存在が飛来している。一つ一つはとても小さいがとてつもない数の何かが飛んできている。


「爺さん、まさか」

『来たようじゃな。飯は簡単に頼む』

「はい」


 街の方に急いで走ると既に厳戒態勢と言った雰囲気で長老達だけではなく、他の者達も武器を持ち、装備に身を包んでいた。

 そして中心には魂の契約を結んだ全員揃っている。


「リュウ、来たみたいだよ」

「そうみたいだなリル。全員腹ごしらえと戦争準備は万全か?」

「食べてないのはリュウとフェンリル殿だけなのだ。早く食べないとやって来るぞ」

 そう言ってオウカはテーブルまで俺を引っ張る。


「分かったオウカ。なら飯を食いながら確認だ。今回敵陣に攻め込むのは少数で俺とその魂の眷属のみが行く、防衛は龍皇と精霊王に任せる。街の長老達は二人の指示に従ってくれ」

「承知しました」

 エルフのアル長老が代表して言う。

 他の長老達も頷いている。


「それから無茶はするなよ。俺の屋敷に回復用ポーションがあるから惜しみなく使ってくれ、ダハーカお手製だ。効果は保証する」

「念のため解毒剤や麻痺回復も用意している。今日のために大量生産しておいた。戦力としては心もとないがナレルも回復や結界術に精通しているからな、いざとなればナレルに癒してもらうと良い」

「全力でやらせていただきます」

 ダハーカの言葉に美しい礼で返すナレル枢機卿、それなら癒すという点から見れば十分と言えるだろう。

 そして迎撃の方だが……そこは長老達の実力と龍皇と精霊王の指揮能力に任せるしかない。


 そして重要なのは俺達だ。

 俺たちが速く昆虫の魔王を倒す事が出来ればこの戦争も長引かずに済む。

 出来るだけ早く倒さないと。


 食事を終えて俺は立ち上がる。

 後ろを振り向くと既に皆準備万端と言ったところだ。


「いつでも行けるよ、リュウ」

「パパ、初めてかもね。皆で戦うのは」

「この戦いでリュウに私はもう大人だと見せてあげるのだ!」

「……久々に本気を出してもよさそうですね」

「ほう、ティアマトの本気か。それは中々いい物が見れそうだ」

「ふふふ、この戦いでより有能であるところを見せましょうか」

 リル、カリン、オウカ、アオイ、ダハーカ、マークさんが気合の入った声を出す。

 とても頼もしく感じている中、ふと体内から声が聞こえた。


『皆元気ね。私もサポートするから頑張ってリュウ』

『ああ。ここで頑張らなきゃ男が廃るって奴だろ』

 静かに覚悟を決めて気合を入れる。


「それじゃ行こうか。昆虫の魔王との一戦に」

5月1日より新作を始めました。

題名はケモナーのフィールドワークです。

楽しく書かせていただきました。

興味のある方は是非読んでください。

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