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準備開始

 まずはカリンにくっ付いている魔王に事情を説明する。


「ほう、もう戦うと決めたのか。随分と早い決断だな」

「だからカリンと俺を鍛えて欲しい」

「む?リュウもか?構わぬが私の技のほとんどはガルダとしてのスキルを使って行っている、故に人間もどきに使えはしない」

「一体化の事を忘れてもらっちゃ困る。そうすればカリン経由でガルダの炎が使えるし、蹴り技だけでも覚えておいて損はない」

「そういえばあったな。しかし娘が戦場に出るための手伝いと言われるとな……」

「お母さん、確かに生まれて一年経つか経たないかぐらいだけど戦えるよ。それに、子供だからって置いてけぼりはヤダ」

「しかし……」

「姉さま、カリン様は十分戦える年齢と同じぐらいにまで成長しています。それなのに炎の使い方も満足にできないというのは逆に危険ではないでしょうか」

「…………そういわれては仕方がない。カリン及びリュウの修業に付き合おう」

「ありがとお母さん!」

 カリンが魔王に抱き着くと嬉しそうな顔になるがふと真面目な顔をする。


「ところで人間への修業とはどのように教えればいいのだ?」

「どのようにって普通に教えればいいだろ」

「私も母様から教わった訳だが……他種族に教えた事などない。それ故にどうしたいいのかと」

「ああ、それなら問題ない。同族に教える様に教えてくれればいいから」

「そう、なのか?」

 不思議そうに言うが今までそうやって教えてもらってきたからな。

 人間だから、何て手加減は全くされずに爺さんに鍛えられ、ダハーカには魔術を体で教えられ、ハガネ師匠には容赦なくぶたれ、そうやって鍛えてきた訳だから今さら人間扱いされてもな。

 ま、俺の修業は多分相当まれだと思うけど。


「では容赦なく指導しよう。カリンはほどほどに指導しよう」

「姉さま、ガルダの姫が弱くてもいいのですか?」

「しかし身体を壊さない程度なら問題ないだろう」

 魔王と妹さんが修業方針について色々言い合っているが修業に付き合ってくれるのら何でもいいや。


「お父さん、今回もお父さん一人で行くの?」

「いや、皆で行く。流石に長老達は森に残ってもらうけど俺達は例の昆虫魔王の森に乗り込む」

「オウカちゃんも?」

「オウカもアオイもマークさんもだ。普段防衛側に回ってもらってる側も今回は攻めに移ってもらう。それだけ本気だし、前の偽物魔王より強敵なのは目に見えてるからな」

 それより問題は俺の方だな。

 本当に最近は事務仕事ばっかりでろくに修業をしていない。こりゃ相当きつい修業じゃないと魔王には太刀打ちできないかも知れないな。

 そのためにも現役の魔王であるカリンの母親と戦い、技を磨くしかない。


「やっぱり強いの?」

「強いだろうな。現役の魔王だし、昆虫を舐めると痛い目を見る」

「でも所詮虫でしょ?プチっと潰せないの?」

「それは掌より小さくて遅いから出来るんだろ、相手のサイズはまだ不明だがでかい奴はデカいだろう。それに小さいのも油断できない」

「なんで?」

「小さくて速いと動きを捉えにくい。もっと危険な事を想定するなら寄生性の高い昆虫だっているかもしれない」

「寄生?」

「簡単に言えば尻の穴から潜り込んで卵産み付けたりするかもしれないって事。もっと危険な寄生昆虫は脳の中にまで侵入するって聞くしな。牧場で働いてた時は牛とかが寄生されてた時もあったし」

 そういうとカリンはぞっとしたように身を震わせる。おっかない話だが事実だ。

 その時は動物の皮膚にある傷口に幼虫が寄生し、生まれる時は動物の皮膚から這い出てくるもんだから慣れてない者が見ると本当に気持ち悪い。

 そうならない様に清潔に保ったり色々していたがそれでもそういった昆虫が存在するのだから警戒はしておくべきだろう。


「虫って怖いね」

「だから警戒しつつも全力で倒しに行くんだよ。種類だって哺乳類や鳥類よりはるかに多い、食われまい、殺されまいと全力で戦って来るのは目に見えてるしな」

 そのためにも今回は蒼琉で立ち回った方がいいのかも知れない。ロウも十分に強力な刀ではあるが堅い甲殻を上手く斬れるという保証はない。ならば最初から両方必要になるかも知れないと想定しておく。


「相手の森はどうするの?燃やしちゃう?」

「…………出来るだけ戦う奴以外は相手にしたくないが森の住民全員で立ち向かって来るのなら燃やす事も想定しよう。気は進まないがな」

 本当に最悪の事態はそうするべきだろう。気が進まないのは本心だがそれよりも嫁やダチの方が大切だ、そのためなら森の一つや二つ、滅ぼしてやる。


「魔王。昆虫魔王の棲み処は分かるか?」

「む?この大森林から見て真っ直ぐ南にある森だ。うっそうとした森でな、この大森林より樹木の数は多い」

「そうかそれじゃ明日からお願いします」

「今日は修行しないの?」

「流石に今すぐって訳にはいかないな。相手の予定もあるし、余裕をもって明日からにしよう。ところで魔王はいつまで滞在できる?」

「私はここに居ても問題ないのだが……」

「一週間だけです。カリン様とリュウ様には申し訳ございませんがこれが限界です」

「いえ、仕方がない事ですよ。魔王には魔王の縄張りがあるのですから」

「ご理解ありがとうございます」

「……気になるが何故私にはため口で妹には敬語なんだ?」

「え、だって敬語じゃなくていいって言ってたじゃん」

 当然の返答に苦笑いする魔王。俺そんなに変な事言った?


「それじゃそろそろ行くから。修業相手になってくれる人全員集めないと、それから部屋の案内はメイドにさせるんで」

「少し待て」

 立ち上がりながら言うと魔王が待ったをかける。


「何か要望でも?」

「娘と共に寝ても良いよな?」

「……その辺はカリンと直接交渉でも頼みこむでもしてくれ」

 ブレないな~と思いつつ普通に言う。

 それじゃ後は……爺さんとか修業に付き合ってくれそうな人に頼み込んでくるか。

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