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式典当日

 式典当日、流石にこの日はアオイに頼んで正装と言うものに着替えた。と言っても少し素材の良いスーツなのだが他にもリルやカリンも居る。ダハーカは来ないんだと、何でもまだ喧嘩したばっかりだからもう少し様子を見るとか。


「着替え終わりました」

「ありがとアオイ、それでカリンは大丈夫か?」

「はい、あの鳥から貰った正装でなら宜しいと」

 あの鳥って言うなよアオイ、仲が悪いのは知ってる事だがもうちょい穏やかになろうよ。

 アオイを落ち着かせようとしているとリルとカリンが現れた。


「リュウ、ここで着替えてもすぐに汚れない?」

「私もお母さんに貰った服だから汚したくないな」

 見違えるぐらい綺麗になってた。

 リルはシンプルな漆黒のドレスであまり大きな飾りなどは付いていないが元々の素材、リル自身の美しさが極まっている。

 カリンはカリンの母親とほぼ同じ服装になっていた。紅を中心とした服に金の刺繍、脚を動かしやすくするための切り込みから見えるカリンの足は何だかなまめかしく感じた。


「リュウ、どうかした?」

「パパ?」

「あ、いやごめん。見とれてた。それよりアオイ、大丈夫なのか?主役より綺麗になっちゃいけないもんなんだろ?」

「ご安心を、グウィバーも着飾りますしシンプルなデザインですので問題ありません。それからもう一つだけ」

 アオイは俺の耳元にそっと近付いて言った。


「女王としての私も見ていただけると嬉しいです」

「お、おう。期待してる」

 ちょっとドキッとしたのが分かったのか、少し嬉しそうな顔。そういえば普段から見ているのはメイド業中の姿だけだ。ちょっと女王としての姿に興味がある。

 ついでにオウカは昨日の内に龍皇国に帰っている。本来であればアオイも帰っていてもおかしくないんだが俺達の事が気になるから良いんだと、先代の女王としてそれでいいのかと少し気になる。


「それじゃダハーカ、送ってくれ」

「では土産を期待している」

「マークさんも留守番頼むね」

「お任せ下さい」

 今日はマークさんも留守番、従者として馳せ参じたい感情はあるらしいんだがまだまだ中途半端なこの街を守る事にしたそうだ。

 俺もダハーカとマークさんが居れば大抵の事はどうとでもなりそうなので安心していける。

 その代わり祭りの飯でも持って帰ろう。


「リュウ遅いのだ!早くしないとお祖母様とお母様に怒られる!」

 ダハーカは転移で俺達を半分俺の部屋の様になった龍皇国の客室に送ってくれた。事前に連絡していたしすんなりとここに来れた。

 それにしても……今日はオウカもお姫様らしいドレスだな。ピンクでちょっと子供っぽさが出ているが可愛い感じに仕上がっている。


「今日はオウカもおめかししてんだな」

「当たり前なのだ。今日の式典はそれだけ重要なものだし、失敗してはいけない式典なのだ。したらお祖母様にも……」

「ではリュウ様、私は着替えて参ります」

「おう。普段と違う姿見せてくれ」

「はい。鈍感なリュウ様に気付いていただけるよう頑張ります。それでは」

 部屋を出るとすぐ城のメイドに連れられておそらく自室に向かうんだろう。それとも衣装部屋みたいなところもあるのか?


「では客席まで案内するのだ」

 オウカは張り切った様子で俺達を案内する。こうして城の中を歩くのは久しぶりだな。


「リュウ、今日は挨拶とかを中心にするんだよね」

「そうなるなリル。式典は終わってもお城でパーティーするらしいし、その時にあらためて長老達にも挨拶回りしないといけないからな」

「縄張りの確認は必要な事だからね。カリンもリュウの妻として品のない事しちゃダメよ」

「しないってお姉ちゃん。女王の風格って言うのはお母さんに教えてもらったから大丈夫」

 それ少し不安だな。ガルダの女王の風格、ドラゴンの人達は嫌がるだろうな……


「あ~カリン、脅すのはなしな」

「うん。パパを立てながらそっと隣に居ればいいんだよね」

「笑顔も忘れちゃダメよ」

「はーい」

 軽く言ってリルに撫でられるカリンだが本当に大丈夫なんだよな?関係に傷をいれる様な事は……しないな、絶対。そのぐらい信用できる。

 そしてオウカの後を付いて来た場所は……想像と違う。観客席と言うからてっきりアオイ達を遠くから見るような場所に居ると思っていたのだがなんか玉座の近くの家族席みたいなところに案内にされた。

 え、本当にここ?


「ここがリュウと私達の席なのだ」

「特等席だ!」

「見やすい位置で良かった」

「いやいやいや、何でリル達はそんなあっさり受け入れてんの?結構重要な席なんじゃないの?」

「重要と言うよりは単なる親類のための席なのだ。リュウは私と婚約しているし、お祖母様とも親しい間柄、当然の席位置なのだ」

 そう言われればそうなのかも知れないが……

 龍皇家族の中に普通に居るってどうなんだ?反感買ったりしない?


「……何やら不安そうな表情をしているが問題ないのだ。リュウは国を救った英雄なのだ、堂々としていればいいのだ」

「英雄って言い過ぎじゃね?ダハーカとの事だったら皆で倒したじゃん、俺一人じゃねぇだろ」

「それでもダハーカと戦い、とどめを刺したのは間違いないのだから心配しなくていいのだ!」

「リュウ、気にしなくて良いんじゃない?文句を言ってくれば力で屈服させればいいんだから」

「そうだよパパ、パパが嫌なら私が代わりにしよっか?」

「それ本気でやめようか。ドラゴンの国でガルダが暴れるとかシャレにならん」

 カリンが暴れると魔王も出てきそうだからな。

 とにかくこの席だと言われたのなら諦めるしかないのだろう。落ち着いて座るしかない。

 式典が始まる前に呼ばれて座るらしいのでしばらくは客室で待機、リルとカリン、オウカの頭を撫でて待つ。


 少し待っているとメイドが来て移動だと言われたので例の席に行く。

 家族席と言っても新参者の俺は正面右端、そこが新参者の席だとオウカが言っていた。一応位は低かったんだと一安心、で、さらに俺の隣にリルとカリンが座って更に待つ。

 大勢の人化したドラゴンやドラコニュート、リザードマン達を見ると俺の事ではないのに緊張する。

 そしてファンファーレが鳴った。長老のドラゴンが司会を担当し、進行を進める。

 俺はとにかくだらしないと思われない様に姿勢を正しながら座っているとグウィバーさんが右から現れた。真っ白なドレスを着て髪も普段とは違い纏めている、少し待ちアオイが来るのを待っていると左の奥から現れた。


 俺はアオイの美しさに息をのんだ。普段とは全く違う雰囲気、蒼いドレスにはあまり装飾はされておらず、まるでアオイの美しさを際立てさせる事すら出来ないと言わんばかりのシンプルなドレス、しかし頭に小さなティアラだけが乗っかっていた。

 グウィバーさんはアオイが目の前に来ると片膝を付いた。


「グウィバー、貴女はこれよりドラゴンの女王となります。貴女にはその覚悟が出来ていますか」

「出来ております。夫を立て、この国のために身を捧げます。そして必ずやお母様を超えるよき女王へとなって見せます」

「そうですか。それではその言葉を信じ、行動で示しなさい。その証としてこれを授けます」

 そう言ってアオイは頭のティアラをグウィバーさんの頭に乗せた。

 その時大歓声が起こった。俺もリルもカリンもオウカも拍手で答える。


 式典そのものはこれで終わりだ。

 だがこの後はパーティーという名の顔合わせ会だ。運良く……というよりは後ろで怖そうな二人がいたからか舐められずに済んだと言える。

 フェンリルの孫娘にガルダ、この二人の肩書だけで近付いて来る存在はだいぶ減ったと言って良いだろう。後はフェンリルの爺さんや婆さん達に挨拶、街に居る長老達とも挨拶をした。

 それともちろん龍皇とその妻、グウィバーさんにも挨拶した。

 他の人達も居たので簡単におめでとうっと言ってプレゼントであるドルフから買った宝剣も渡したら嬉しそうに受け取ってくれた。

 本当に光物が好きなんだと改めて感じる。

 そしてアオイとも話した。


「アオイ、お疲れ様」

「リュウ様、お気遣いありがとうございます。あまり疲れてはいませんよ」

「それでもだよ。これからのアオイってどうするんだ?」

「これからもリュウ様のお側に居させていただきます」

「そうじゃなくて、オウカから聞いた話だと普通は隠居してのんびり過ごすそうだが?」

「私は何かをしている方が性に合っています。それにリュウ様の周りは何かと楽しくなりそうな気配がします」

「ま、俺もこれからもアオイに頼らせてもらうつもりだけどさ、明日と明後日はゆっくりしよう。そのぐらいはいいだろ?」

「では今夜、甘えさせていただいてもよろしいですか?」

「どんと来ーい。それも旦那の務めだ」

「それともう一つ宜しいですか」

「なんだ?」

「今日の私は綺麗でしたか?」

「……とてつもなくな、恥ずかしいからこれで我慢してくれ」

「十分ですよ、とても嬉しいです」

「そっか」

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