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結界試験

あけましておめでとうございます。

 俺はまずダハーカの結界をアオイを連れて見に行く事にした。ダハーカの実験が成功すれば防衛の要になるし安心して住める街に一歩前進する。

 期待してダハーカの実験室に入ると意外な人がダハーカの隣に居た。


「なぜあなたがここに居るのですか?ナレル枢機卿」

 そう、俺が人間を大量に殺した際に連れてきたナレル枢機卿がダハーカの隣に居た。


「これはリュウ様、ご機嫌麗しゅう」

「そういう言葉遣いはよく分かんないから、俺よりダハーカの実験はどうなった」

「リュウ、結界は出来た。実験結果も上々だ」

 機嫌よく言うダハーカ。本当に中々の物が出来た様だ。


「物理、魔術はもちろんの事、最上位魔術にも耐えられる作りにした」

「そうか。それより何で枢機卿が居る?」

 そこが不思議なんだ。確かに枢機卿はこの街で軟禁中だがどうしてここに?


「それは私が自室で結界の研究をしている際に面白いと言われて共に研究しないかと言われてこちらに」

「この者は自身のスキルと併用する事で結界を強固していてな、面白い術式を書いていたものだ」

「いえ、ダハーカ様の知識がなければこのような難しい識別の出来る結界など出来ませんでしたよ」

 俺がダハーカに結界を製作するうえで頼んだのは魔物達の識別だ。

 単に魔物が自由に出入り出来る結界では野生の魔物達も入ってきてしまい、防衛とは言えない。なので街の魔物と野生及び敵対意識のある魔物の識別が可能な結界の製作を依頼した。

 ダハーカは笑いながら依頼を受け取ったため、楽にこなせるのかと思ったがそうではなかった。むしろ今まで製作した事のない結界であり、難航を極めていた。

 人間の町で張られている結界は魔物全てをはじく結界が多い。人間にとって魔物はたとえ弱くても脅威であり、殺すべき対象でもあるからだ。



「それでどうやって製作したんだ?」

「この者は元からそう言った識別する作業が得意だったのでな、それを利用させてもらった」

「それでもダハーカ様の術式は美しく丁寧なものです。まだまだ拙い術式であると理解させられました」

「それでも面白い術式であった。今までは私一人を守れればいいだけだったのでな、久しぶりに繊細な術式を描いたものだ」

「それで実験ってのはどんな実験なんだ?」

 ダハーカの方から会った実験をしたいと言う申請、どの程度の規模で言っているんだろうか。


「面倒なので町全体を覆う結界を張りたい」

「いきなりして問題ないのか?エネルギー問題や結界の攻撃性は?」

「まず攻撃性に関してはない。と言うよりより止められた」

「私の方から進言させていただきました。安全性を確保した後にするべきと」

「と言う訳だ。本来であれば呪いや麻痺なども付与したかったのだがやり過ぎると維持に苦労しそうなのでな、そういった要素は省いた。結界に触れても精々壁に当たる感覚と変わらないだろう」


 枢機卿、止めてくれてどうも。あくまで防衛が目的なのだから攻撃とか付けられても困る。

 それに新しい住人希望の様な者が来た時にいきなり攻撃を受けたりしたら問題だ。絶対嫌うって。

 それに精霊やドラゴン、後カリンの母親とか来た際にも不安だし攻撃性はなくしてくれてよかった。他の国みたいに城壁で囲うとなれば時間も掛るしそれだけの資材もないのだから仕方ない。

 結果結界という選択肢をとった訳だが大成功かも知れない。


「アオイ、いつごろから実験した方がいいかな?」

「早い方がよろしいと思いますので三日後にしましょう。まずは住人への説明も含め、その後の改善点を発見するためにも必要かと」

「分かった。それじゃ三日後に試験だ、それまでに改善できそうな部分は改善してくれよ。それと結界を維持するエネルギーってどうなってるんだ?」

「リュウ経由でウルより貰っている。直接だと結界の方が崩壊してしまうからな」

「ウル様の魔力は素晴らしいのですがあまりのエネルギーに術式の方が耐えきれないのです」

「そうか、でも俺経由なら問題ないんだな」

「ウルがリュウを壊してしまう程の魔力を送るはず無いのでな、そこからほんのわずかだけ拝借している」


 ウルから魔力を供給されているなら問題ないだろう。

 後はダハーカ達に任せる。


「上手くいけば安心して住める街になるな」

「私としては既に十分安全になったと思いますが」

「そう?広さもまだまだだし家がない連中だってまだ居るぞ」

「元から一定の場所に定住していなかった者ではないですか。定住していた者は既に家を持ち、安全に暮らしています。さらに言えばリュウ様や私達が居る事が一番の安全なのですから」

「それだけの力があれば逆に狙ってくる連中もいるかもしれない。例えば魔王とか?」

「滅多に領土を増やそうとする者も少ないですが……用心に越した事はないかと」

 適当に言ってみたが魔王が襲って来る事があるのか疑問だ。

 その理由とはいくつかあるが俺の中で大きいのはカリンの母親とガイと仲良くしているからだ。魔王現役に魔王候補、この二人とつるんでいるのだから注目を集めるかもしれないが友好的な付き合いをしているのだから俺と敵対するとカリンの母親も出てくる可能性があると思われてもいいはずだ。流石にガイの方は弱いと思うが。

 そう言う事でそうすぐに襲って来る様な事はないと考えている。でも油断大敵、カリンの母親の庇護下にあると思われっぱなしだとカリンの母親に迷惑を掛けるかもしれないのだから自分で出来るところは自分で行動しないと。


「それで勇者達の様子はどうですか?」

「ティア達も元気に修業中、最近じゃ全く怖がれなくなっちゃって遊ばれてるよ」

 勇者なのになぁっと思いながらため息を付く。

 きっかけは子供達との鬼ごっこだ。ティア達はどうにか子供達との鬼ごっこについって行けるようになったのだが途中町の子供達がその様子を見ていた。

 そこから子供達がティア達で遊ぶようになった。基本遊んでいるのはいつも通り鬼ごっこなのだがそこに多種多様な魔物の子供達が混ざった事により難易度が急上昇、サルに近い子、蜥蜴に近い子と数も増えて探し方、隠れ方も増え苦戦している。

 しかも遊んだ後は自力で獲物を探して食らい、その後は爺さん達との実戦練習だ。


「俺もしてきた事だが客観的に見るとすんげぇ酷いありさまだな」

「フェンリルに聞きましたがリュウ様はあそこまでは酷くなかったそうですよ」

「そうかな?意地やら何やらで無理矢理乗り越えた感じだけど」

 振り返ってみるがあまりそんな感じがしない。文字通り地べたに這いつくばって頑張った感じしかしない。

 というか本当に生きるのに必死だったし。

 少し昔の事を思い出しながら執務室に戻ると事務仕事を再開、書類を確認し、了承したり色々する。


「そういやそろそろドルフを受け入れる準備もしないとな。護衛として誰が適任かな?」

 一応大森林には知性のある魔物より普通の獣と同じような魔物の方が多い、なので護衛が欲しいと手紙に書いてあった。


「コクガってもう帰って来てる?」

「カガからの報告ですともう少々時間が掛かるそうです。説得の方で難航している様です」

「そうか。せっかく場所は確保できたのにな」

 実を言うと場所だけはすでに確保してある。まだ手の付けていない少し広い土地を残しており、そこを新しいギルドにしようと考えているのだが肝心のコクガ達が帰ってこない。


「帰ってこないのは仕方ないし、ドルフの護衛を考えるか」

「それがよろしいかと」

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