土地開発
元気に修業と言っても昨日と同様に鬼ごっこな訳だがそこではすでに魔術師の人がくたくたになって倒れ込んでいた。周りに居た子供達も鼻先で突っつくがまるで反応しない。
「あれ?まだそんなに時間経ってないはずだが……」
「元々モヤシだからな、いきなり追い掛け回されりゃこうなるさ。みっともねぇなローゼン」
既にばてている魔術師の人にグランさんが笑う。
「これがこの子達を一人で相手にした結果ですか」
「むしろ頑張った方じゃない?」
そう言うのはタイガとティア、でも俺が最初の時はこうはならなかったぞ。
「私も一人だったらもっと酷くなりそう」
「私より体力なさそうですね」
そう言うのはマリアさんとアリス、アリスは外で相手を見張るために外回りも頑張ってたらしいから体力もあったみたいだったな。
「それじゃ今日も頼むぞお前ら。真面目にやってるかはアリスが見ててくれ、俺今日は他の仕事もあるから頼んだ」
「え!?私聞いてませんよ、そんな事!」
「そりゃあそこに居ないからな。そんじゃ頼んだ」
「お昼とかはどうすればいいんですか!?」
「適当に狩って食え!そんじゃ俺はもう行くぞ」
「ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!」
と、こんな感じで修業の監督はアリスに投げた。龍皇とかにバレたら細かい事を言われそうだが昼飯にはちょっとだけ戻ろうと思うので問題ない。
そして今日の仕事はカリンや精霊、エルフ達と協力して行う。今回選ばれた場所は長い事生きていても精霊にならなかった木々や年老いた木々の伐採だ。伐採された木々はそのまま木材として再利用される。
規模は大した事ないがちょっとした癒しのためと言う意味では丁度良い規模だとも思う。魔物の協力者も大勢いて楽しみしている雰囲気も出ている。
「おーいエレン!」
「あ!リュウ様」
「手伝いに来たぞ」
「ありがとうリュウ様!でも勇者の監視は良いの?」
「大丈夫、アリスに任せてきた。それにしても協力者も随分と居たな。これだけの数なら俺必要ないかも」
「私も驚きました。畑の方にも協力者はいますがこっちの方が多いです」
少し嬉しそうに言うエレン。エレン自身はあまりこの企画が通るとは思っていなかったらしくこの企画が通った時は大喜びした。
生産のために畑も同時進行となっているが畑の方はこっちに比べると少ない。菜食主義の魔獣はもともと少ないしエルフだって雑食だ。野菜中心の食をしているらしいが肉だって食える。
「本日はエレンの我儘を聞いていただきありがとうございます」
「そんな畏まんなくて良いですよ長老。俺が聞いて理があると思っての行動なんですから」
「そう言っていただけると助かります」
「そちらの準備は大丈夫ですか?こちらの方が多く感じますので」
「木々の伐採などに関しては畑や花畑など関係なく協力していただけるのでお気遣いなく。それに多くの精霊が協力してくださいますのでご安心を」
「それならよかった」
「あれ?パパ!?」
アル長老と話していると空からカリンが降りてきた。
「よ。手伝いに来たぞ」
「手伝いって今日も勇者の修業の相手じゃないの?」
「それはアリスに任せた。それも大事だが町の発展も重要だろ」
「もう。それじゃパパには樹を伐ってもらうからね。流石に巨木を伐るのはここの魔物じゃ厳しいのもあるから」
「運ぶのは任せて良いのか?」
「そのために出来るだけ大きな魔物を集めたんだからね」
なる程、だから魔物の中でも身体の大きい連中が多いのか。
この場に居る魔物の多くは四足型が多く人間やエルフの様な二足型は少ない。いや、元々少ない方ではあるが。
「じゃ、その分伐り倒すのを頑張りますか。そういや残った根っこはどうする?」
「それは私が燃やすから問題ないよ。精霊王も一応見てるらしいし」
監督は精霊王か。それなら安心だ。
「それじゃ作業始めるよー!」
「「「おお!」」」
カリンにもリーダーシップの様なものが芽生えつつあるようなのは良い事だ。という事で今回の俺は徹底的に裏方に回るとしよう。
カリンはアル長老と共に完成図を見ながら指揮を執る。俺はカリンに指示された樹をロウで伐っていった。切り倒した木はさらに俺やドラコ・ニュート達が建築用に切り分け、魔物達がそれを町に運んでいく。
こう言った木材はほぼ建築用としか使われない。何せこの間まで森の中で生きていたのだからテーブルや椅子などを使う習慣がない、なのでほぼ建築用として使われる。
ほぼと言うのはドラコ・ニュート達の中で家具も作る者もおり、余った木材で家具を作っているそうだ。その内、魔物の中でも家具を使いたがる者が出てくるのかはそっと期待しておこう。今じゃリルも普通にベッドで寝てる訳だしな。
しかしそうなるとやっぱり龍皇国の様に人型になってもらうのが一番手っ取り早いのだろうか?
魔物は基本的に人間より身体が大きい。全長三~四メートルぐらいは普通に居る。そう言った者達にベッドを合わせて作るとなるとやはり材料も多く使うし時間も掛かる、だからと言って馬や牛の様に干し草を敷くだけと言うのも納得がいかない。これは家畜と魔物を同一視したくない俺の感情だけなんだろうか?
今はそう言った要望がないがいずれ現れると考えておいた方が良さそうだ。町が安定し、物が現れる様になれば必然的に物々交換でも何でも経済と言っても良いものが生まれるだろうし何も悪い事だけじゃない。
そんな事を考えている間も作業は進んでいる。
畑のスペースと花畑を作るスペースが生まれた。残った木の根はカリンが慎重に燃やしている。大規模にただ燃やすだけなら問題ないが小さな物を燃やすのはまだ苦手らしい、これも良い修業になると思うぞカリン。
燃えた灰は精霊達の魔術によって地面とよく混ざり、肥やしていく。そういった作業はやはり精霊にとってはお手の物だ。こうして出来たのが畑と花畑の地面だ。
「それじゃ一度休憩を入れまーす!お昼ご飯とか食べてね!」
カリンが作業をしていた者全員に向かって言う。皆それぞれ飯を食いに動き出す。それじゃ俺はティア達の様子を見に行くか。
「パパもご飯狩りに行くの?」
「その前にティア達の様子を見てからだな。一緒に来るか?」
「行く!」
そう言って俺と腕を組んで歩く。カリンの最近のお気に入りはこれだ。理由は知らん。
「あ、あの……」
「ん?どうしたエレン」
「私も見に行って良いですか?」
「見に行くってティア達をか?う~ん」
それは保護者に聞かないとダメだな。そう思ってアル長老を探して声を掛ける。
「長老。エレンが俺と一緒に勇者を見たいと言ったのですが連れて行ってもよろしいでしょうか?」
「はい宜しいですよ」
「え、良いんですか?」
「勇者がエルフに手を出したと言う話は聞いていませんからね。おそらく人間に近い見た目のおかげだと思いますが」
その予想は多分あってる。ティアも流石にドワーフみたいな連中を魔物として見ていないからな、それと同様にエルフの事も魔物として見ていないんだろう。
普通の人間と比べれば寿命とか色々違いはあるもんだが。
「それでは連れて行きますね。カリンエレン、行こうか」
「うん!」
「お爺様行ってきます!」
本日11月15日にアース・スターノベル様より発売されました!
皆様のお陰ですありがとうございます!




