今日も修業
次の日、俺は正直怠いまま厨房で朝飯の準備をしてた。昨日の事もあり女性陣は皆寝坊だ。と言いつつも俺もまだ怠さが抜けない訳だが。
大きな欠伸をしながら全員分簡単な朝食を準備していると一番最初に来たのはダハーカだった。
「昨夜は随分と大変だったようだな」
「おはよダハーカ。疲れた顔でもしてたか俺?」
「とても疲れた顔をしている。声は聞こえなかったがいつまでしていた」
「ほぼ夜中ずっと、こりゃ忙しくても定期的に一緒に居ないともっとヤバい事になりそうだ」
話をしていると言うのに欠伸が出る。軽くしか寝られなかったからな。
そんな俺を見てかダハーカは苦笑いをする。
「番が居ると苦労するようだな」
「でも今の俺には丁度いいんじゃないか?責任がある以上手は抜けない」
「私にはよく分からん。一度も雌を迎え入れたいと思った事すらない」
「ま、その辺は個人差があるもんだろ。ほれ、運びな」
飯が出来たのでダハーカに運ばせる。そう言やマークさんはどこ行った?普段ならとっくにいる時間だが。
「おはようございます。リュウ様」
「おはよマークさん。今日は遅れてたけど仕事でもしてたのか?」
「いえ、少しメイドに奥様方の事を任せただけです。男性の私が行くと滅ぼされてしまうかも知れませんから」
「そんな事は……」
そんな事は……ありそうだな。リルとカリンは最終的に獣の姿に変わっていたがオウカとアオイは人型のままだ、つまり裸。
うん。あいつらの性格からして殺しに来る可能性は高いだろうな。魔物って純情と言うか決めた相手以外にそう言うものを見られたりされたりするのを嫌う事が多いから。
「ごめん。一応俺も起こそうとしたんだけど起きなくてさ」
「たまにはよろしいのでは?常にこう言った状態なのは問題ですが夫婦の営みとなれば問題ないでしょう。リュウ様のご子息には私も興味があります」
「何かアオイの時と似てるな……そのセリフ」
まだ国じゃなく町だし、と言うか国になるまで発展させようとは思ってないけど。
それも視野に入れておかないとダメなのか……便利さと魔物達の暮らしやすい街づくり、本当に難題な気がする。
とりあえずは町としてちゃんと機能するようにしてから考えるか。
そう思っていると慌てたような足音が聞こえた。勢い良く入ってきたのはリル達だった。
「ごめん!寝坊した!」
「パパ起こしてよ‼」
「ご飯の時間なのだ!」
「も、申し訳ございません!」
「あぁ別に良いよ。とりあえず飯食って今日も頑張りますか」
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慌ただしい飯を食った後、俺はティア達を迎えに龍皇国に行く。
今日も子供達と遊ばせながら体力を鍛えてもらう。その後は適当な魔物を狩って飯にする。大まかなプランはそんな感じだ。
俺は城の前に転移し、ティア達の部屋に向かう。
その途中でメイド達に会った。
「おはようございます。リュウ様」
「おはよ、ティア達の様子は?」
「勇者様達は一部問題ないようですが僧侶と魔術師が少々問題ありかと」
「肉体的に?それとも精神的に?」
「僧侶は肉体のみです。筋肉痛だとか。魔術師は筋肉痛の他に怯えているようです」
「怯え?あの程度でか」
「はい。多くの狼のに追い掛け回されたのが恐怖になっているようです」
「ふーん。聖女みたいな感じじゃないなら良いか」
要はただビビっているだけだ。それなら無理矢理連れ出して修業させれば問題ないだろう。必死に逃げている内に恐怖なんて忘れるだろう。
「教えてくれてありがとね」
「私はただ状況を話しただけです。礼を言われる程の事ではありません」
「それでもだよ。じゃ、迎えに行くからありがとね」
そう言って部屋に向かう時にメイド達はお辞儀を一つした。
で、少し歩いて男子部屋をノックしてから入った。
「おーいおはよー、今日も元気に修業と行くぞ~」
「あ、リュウおはよう。ちょっと手伝って」
「ん?何をだ?」
「ローゼンさんがその、情けない状態になっちゃって」
「どういうってあれか?」
一つの布団に包まっている誰かをひっぺ反そうとグランさんと鍛冶師の人が布団を掴んで引っ張っている。
確かにあれは情けない姿だな……本当に勇者の仲間か?
「タイガ、あれが魔術師の人か?」
「うん……昨日の修業でメンタルが完全にやられちゃったみたいで……」
「はぁ。グランさん、鍛冶師の人おはようございます。ちゃんと休息は取れましたか?」
「おう!リュウ!これどうにか出来ねぇか!全然離さねぇ!」
「おいローゼン!もうリュウの奴が来たぞ!諦めろって‼」
「あれは修業じゃありません!と言うか魔術師の私は魔術研究をすれば強くなれるので肉体の鍛錬は必要ないんです!」
子供みたいな事言ってやがる。そりゃ魔術研究をしている内に強力な術を覚えれば強くなったかと思うだろうけどさ、基礎魔力が少なければ出せない魔術もかなりの数になるぞ。だからこその修業だってのに。
「なぁタイガ。魔術師って皆こんなもんなのか?」
「えっとそうだね。魔導書を読んで強力な術を覚えようとする事の方が多いかも。基礎魔力を鍛えて魔力量を上げようとする人は少ないね」
「それじゃどうやって強力な術を使うんだよ?魔導書に書いてある魔術だって魔力消費を出来るだけ削ったものだってそれなりにあるだろ」
「そのための魔術研究かな……」
くっだらねぇ。新しい魔術を開発するためならいざ知らず、すでにある魔術を改造するだけとか意味なくね?
それじゃダハーカに頼んだ結界の開発とかどうすんだ?結界関連のスキルを持った奴頼みか?そういや森に侵攻してきた人間をぶっ殺す時も枢機卿任せだった気がするな、あの結界。だから枢機卿を守ってたんだなあいつら。
「はぁ、とにかく起きてください。さっさと起きないと無理矢理森の中に送りますよ」
「魔術研究で強くなりますから止めてください!」
「基礎魔力の強化もあの修業の中に含まれているんで行きますよ」
「それでも嫌です!」
「…………」
もう面倒臭い。
そう思った俺は転移魔方陣を魔術師の人を中心に描く。そして布団の中の魔術師の人を強制的に森へ直接送り込んだ。
「よし、そんじゃ女性陣を迎えに行くか」
「お、おい。どこに送ったんだ?」
「昨日と同じ所ですよグランさん。一足先に一人で鬼ごっこをしてもらいましょう」
「……普通にひどいな」
「駄々をこねるのがいけないんです。それよりゲンさんは?」
さっきから見かけない、と言うか俺が部屋に来た時には既に見かけなかった。
「ゲンならティア達の所だよ。先に呼んでくると言って行っちまった」
「もう帰って来てるけどな」
「あ、ゲンさんおはようございます」
「おはよ。嬢ちゃん達もすぐ後ろに居るぞ」
「おはよリュウ」
「リュウちゃんおはよう」
「おはようございます!リュウさん」
「おはよティア、マリアさん、アリス。それじゃ今日も元気に修業と行きましょうか」




