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龍皇と勇者

 魔術師の人をトイレに行かせた後、俺達は城に入っていた。武装とかは解除しなくていいと言われると少し驚いている様だったが逆に安心出来た様にもみえる。


「あの、リュウさん。勇者様達、皆緊張してますけど大丈夫ですかね?」

「どーだろ?相手はドラゴンの皇だからな。緊張しない方が厳しいんじゃないか?俺も初めて会う時はビビったし」

「威厳ありますからね。他の王様に会った事ありませんけど」

 フォールクラウンで会ったろドワルとドルフに。そりゃ喋った事はないかも知れないが。


「それよりあの要望、本当に聞くつもりですか?向こうも来たがらないと思いますけど」

「一応書類だけ送っただけだからどうなるかは分かんねぇ。魔物には必要のない物の方が多いし、どちらかと言うと人間ばかりが得すると思う。でも将来的には必要な事かな~と思って」

「将来、本当に認められるんですかね?魔物が」

「そればかりは俺達の頑張り次第だろ。ダメなら鎖国的な付き合いになるだろうし、認められればお互いに無駄な血を流さずに済む。問題は教会と他の魔王達がどう考えているかだな」

 教会の方はほぼ無理だろうが魔王の方は上手くいけばどうにかなるかも知れない。と言ってもどこに居てどうしたら連絡が取れるのかも知らないが、そこはカリンの母親に頼ってみよう。

 娘の安全を第一に考えるから多分大丈夫だとは思うが。


「難しい話ですね」

「当たり前だ。しょうもない違いから差別や偏見が生まれるんだから難しいに決まってる。それに俺達がしようとしている事は種族が違うんだから更にだろうな」

「……悲しい現実ですね。良い子もいるのに」

「だから偏見って言うんだよ。自分で見た物じゃなく噂で判断している内は一生消えねぇだろうさ」

 真っ直ぐ先を見ながら顔も合わせないで話していると何故か服の裾を引っ張られた。引っ張られて初めてアリスに顔を向けると不安そうな顔を向けていた。


「頑張れば、出来ますか?」

 なんだかんだでアリスもこの森にかなり馴染んでいた。特に魔物の子供達とは仲良くしているしその子達が傷付いたりするのは嫌なんだろう。

 ならやる事は一つ。


「……成功させに行くに決まってんだろ。手伝って貰うぞ」

「……はい!」

 そう言った後軽く笑うと視線が強い事に気付いた。

 振り返ってみるとティアとゲンさんから特に強い視線を感じる。ティアは頬を膨らませてるし。


「なんだよ」

「いや、何だかアリスさんとも仲良さそうだなーって思っただけ」

「そりゃなんだかんだで長い付き合いだからな。な、アリス」

「はい。そうですよ勇者様。特別仲が良いって事はありませんよ」

「アリス、念のため言っとくが諜報部は恋愛禁止だぞ」

「え、好きな人なんていませんよ?」

 俺はティアから、アリスはゲンさんから強い目線を受け続ける事になった。俺の場合は聖女からもまだ疑われてる視線を感じているが。

 そうしている内に玉座の間の前に着いていた。ティア達は扉の向こうから感じる強大な魔力を感じているせいか表情が硬い。


「なぁ、いきなり食われちまうって事はないよな?」

「ここまで連れてきて今更そう言う事はないと思うけど……」

「戦う気ですか?どうやっても勝てませんよ。それどころか逃げる事すら難しい」

「大丈夫なんだよなリュウ?」

 鍛冶師の人から疑問の声は上がり、マリアさん、魔術師の人、グレンさんの順で最後に俺に聞いてくる。


「大丈夫ですってグレンさん。嫌だったら最初からここに連れて来ませんよ。ま、最初は少し驚かすとは言ってましたけど」

「最後に何て言った!重要な事じゃないだろうな!」

「そんな重要な事じゃないですよ」

 ただドラゴンの状態で驚かすという話は聞いているが別に命にどうこうするものではない。

 そう話している内に扉が開いた。

 俺達が入るとそこには大量のドラゴン達が居た。そう言えは現勇者を自分の目で見て確かめてみたい者も集めるとか言ってたな。

 ティア達はこの光景を見てかなり驚いている。

 そして俺達の視線の先には二体のドラゴン、ドライグさんとグウィバーさんがドラゴン状態で俺達を見下ろしていた。

 ティア達は自然と膝を付いた。


『その者達が勇者かリュウ』

「そうだよ。ティア、挨拶」

「え、う、うん。初めまして、勇者のティアと申します」

『勇者ティア、我は龍皇ドライグ。この国の皇だ』

「お名前は聞いております」

『我も名だけはリュウから聞いている。今回はこの地で修業を積むそうだな』

「はい。この大森林で修業と聞いた時は魔物の地で行うと思っていたので光栄です」

『では手短に伝えておこう。この地で寝食をするのは認めているが基本、修業は他の地で行ってもらう。そのあたりはリュウに聞いているか』

「まだ聞いていません」

『そうか。説明を先にしてほしかったなリュウ』

「悪い。修業内容はドライグさんに挨拶した後で良いと思ってたから」

『では修業のプランはリュウから説明してくれ。私から言いたいのはこの地で暮らす条件だけだ。一つ、国民を傷付けるな。二つ、町に出る時はメイド達と共に行動する事。三つ、決して我々と戦うなどと考えない事だ。以上の三つを守れば我々は何も危害を加えない。守れるか?』

「はい。遵守します」

『なら良い。ではこの場で勇者達の世話役となるメイド達を連れ行くと良い。皆、腕は確かだ』

 そっと音もなく勇者パーティーと同じ人数のメイド達がティア達の後ろに居た。俺以外はまだ気が付いていない様だが。


『リュウ、例の話で一つ相談したい事がある。ここに残ってくれ』

「分かった。それじゃ後はメイドの皆さんに任せます。俺もすぐ行けると思うからティアの部屋ででも待ってて」

「え、うん。分かった」

 こうして俺だけがこの場に残り、皆はメイドさん達と一緒に部屋に向かった。

 さて、ドライグさんの話ってあれか?

 そう思っているとこの場でドラゴンの姿から皆人型へと変えた。


「狭くなかった?」

「正直な。それにしてもリュウ、今回の勇者は随分と弱そうだな」

「実際に弱いよ。俺より弱いんだから」

「リュウを基準とするのもおかしいと感じるが、まぁ良い。この企画について説明を求める」

「説明ってこの間渡した店舗建設の話か?」

「そうだ。なぜあの町に店を建てたがる?あそこには金の概念もない魔物ばかりではないか」

「俺もそれは分かる。でも俺の街に少数でも人間が居るんだ。アリスとかコクガとかな。それに長期的な計画の話ではそのうち人間も来れるようにしたいんだ。と言っても数百年後を目途にしてるんだけどな」

「それなら余計要らぬだろ。なぜ今なのだ?」

「ガイって人狼の事、覚えてるか?実はあそこの国にも協定を結ばないかって手紙出したんだよ」

「確か……獣王国だったか?遠く、あまり縁のない国だが」

「実はガイとタマに聞いたんだがあっちの国って結構いい作物とかあるんだと。そこから金の概念や便利さを学ばせながら少しずつ人間側の文化も触れさせたいと思っての話だ。そっちにも利益のある話だと思うけど?」

 獣人の国について興味半分でガイとタマから色々聞いていた。何でも獣王国はほぼ平地で建築用の木々や鉱物があまり取れない国だとか。その代わり作物や木の実の類は多く栽培されているそうで、食料は十分取れているそう。その話が出た際に貿易が出来たらどうよ?と言ってみたら結構食いつき気味に、主にタマの方が頷いた。

 と言ってもこちらには金の概念も物々交換の概念もない。獣王国は主に物々交換だと言っていたがそれすら街の住人達に出来るか疑問だ。


「とにかく今すぐって話じゃない。名産どころか売る物もない、そんな状況で商売なんか旨くいくはずがないし、そこはマークさんと相談しながらだな。まずは町に発展と教育だな」

「随分と大雑把だが長い目で見たものだ。人間故に出来る事か?」

「さぁ?まずは商売について学ばせたいし、色んな所との交流は地盤をしっかりと整えてからだ。でないと隙を付かれて殺される」

「ならこちらも検討しよう。この国にも利益のある事だからな」

「ありがと。それと一応フォールクラウンにも似た手紙を出した。危険な所だから多分来ないと思うけど」

「ドワーフにもか。しかし意外と来るかも知れん。あれは研究のために身を削る種族だからな」

 ……ちょっとあり得る気がする。ダハーカに刺激を受けた魔術師みたいな連中が居る気がするし、それにドルフみたいな奴なら危険なんて考えず来るだろうな。

 ま、ドルフは次期国王らしいし、来るとは思えないけど。


「そんじゃあとはティア達の修業に移るから。何かあったらアオイかマークさんに伝えてくれ」

「分かった」

 それじゃ、修業開始と行きますか。


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「ドライグ、ちょっといいかしら?」

「どうしたグウィバー?」

「勇者の様子を見てくるわ」

「リュウが見ている以上襲って来る事はないと思うが……」

「大丈夫よ。式も近付いているのだから必要以上に近付かないわ。遠くから様子を見るだけよ」

「……なら良い」

「ありがと、ドライグ」

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