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勇者を迎えに

 俺は朝、早く起きて日課の運動をする。運動と言っても体が鈍らない程度の物だがアオイに付き合ってもらい、軽い組手をする。その後一度水で身体を洗ってから朝食だ。

 今日はティア達を迎えに行かないといけないので今日は余計に早く起きた。

 お子様達はまだウトウトと半分寝てる。


「そんじゃ今日からティア達が来るからよろしくな」

「承知しました」

「何度も言わなくても大丈夫なのだ」

 飯を食い終わった後、アオイとオウカが代表して言う。そんなにくどかったかな?

 ま、とにかく遅れるような事にならない様にライトライトに転移した。魔王化した事により魔力量も上がった事とウルの魔術制御、ダハーカの魔術講座により転移ぐらいは簡単に行なえるようになった。

 そんな生活で唯一不満があるとすれば……


『何でお前だけはずっと俺の中に居るんだよ、ウル』

『ここが私の縄張り(テリトリー)だもの』

 そう、魔王化して外に出れるようになったのにウルはいまだに俺の中に居る事の方が多い事だ。せっかく自由にできたと思ったのに自分の意志で俺の中に居るのだから何とも言えない。

 流石に制御の訓練中などは俺の外に出るがそれ以外は俺の中。飯も食わず、俺が食うと食った気がするからと言って出てこない。ほんと何のために魔王化したんだか……


『そんな風に思わないでよ。これでもたまに外に出て直接風や森の匂いを嗅いだりするのが楽しいって思ってるんだから』

『それなら街でのんびりして来いよ』

『それでもここが一番落ち着くの』

 本当にどうしようもない。

 俺はため息を付いてからライトライトの門の前までたどり着く。普通にカードを見せて入国する。こういった行動一つ一つで教会が俺の事を隠しているのは分かるので恐らく表立って攻撃してくる事はないだろう。そうでなければ俺を入国したりしない。

 だから俺は平然と街を通り、騎士団の場所に着いた。


「おはようございます。ティア達居ますか?」

「今日も来やがったな坊主!」

「リベンジだ!」

「おーリュウ、嬢ちゃん達、と言うか女性陣はまだだぞ」

 まず最初に反応したのはこの間軽く倒してやった若手騎士達だ。どうやらティアにくっ付こうとする悪い虫だと思ったらしく次々と決闘を申し込まれた。結果だけ言うと何十人もの騎士を相手にしたが特に強い奴はいなかった。

 ただ気になったのは何とか魂、と言いながら倒れていった騎士だが、騎士魂で良かったのか?

 騎士団のテーブル近くにはグランさんにいつもの優男スマイルのタイガ、見た目だけなら場違いなゲンさん、後は知らないやけに筋肉が付いた人とタイガとはまた違った優男っぽいおじさんだ。

 皆自分のすぐ近くに大荷物を置いている。


「リベンジより先にティア達って遅れてるんですか?」

「ああ、色々女は準備があるんだろうよ」

「そう言わないものですよグランさん。清潔のためでもあるらしいですから」

「全く、アリスの話を聞く限りそこまで入念に準備しなくても良いはずなんだがな」

「あ~何となく分かるなそれ」

 俺の周りで言うとオウカだな、準備とかで時間かかるの。王族みたいなものだから当然かな?って思う部分もあるがやっぱり待たされるよな……

 他のリルとかカリンは元々魔物として生活の方が多いから基本手ぶらだし、アオイは要る物要らない物をきっちりと分けるタイプだから問題ないんだけど。オウカは時間掛かるんだよな……


「……お前がリュウか?」

「え、あ、はい。俺がリュウです。えっと?」

「俺はリューズ、嬢ちゃん専属の鍛冶師だ。よろしく」

「よろしくお願い」

 何だか筋肉がしっかりしている人だと思ったら鍛冶師だったのか。てか鍛冶師がなぜここに?ティアの見送りか?

 まだ喋ってる最中に肩を組んできた。


「そう固くしなくていいぜ。嬢ちゃんの腐れ縁なんだろ」

「ええ、まあ」

「なら固くすんな!何ならお前の武器も作ってやろうか?」

「あ、それは間に合ってますので」

「リューズ、その辺にしてあげたらどうです?戸惑ってますよ」

 この暑苦しい人を止めたのは多分魔術師のおっさんだ。


「何だよローゼン。このぐらいの方が親しみやすくていいだろ?」

「いきなり過ぎるんですよ。それから初めまして、私はローゼンです。魔術師団長をしています」

「あ、俺はリュウです。しがない調教師です」

 肩を組みのを止めてくれた後、軽い握手をした。何だか物静かな雰囲気の人だな。


「今回は大森林までの道案内と宿舎の提供ありがとうございます」

「そこまで畏まらなくても、俺の方が年下なんですからもっと楽にしてください」

「そうだぞローゼン。堅苦し過ぎるぞ」

「……黙っていてくださいグラン。私は貴方の様に軽々しくないんですよ」

「あ?別に軽々しくもないだろ」

「軽いですよ。貴方はいつもそうなんですから」

「……もやしが」

「……何ですか脳筋」

 あれ?なんかよく無い雰囲気。もしかしてこの二人仲悪い?

 そう思っているとゲンさんが俺を引っ張ってテーブルに座らせる。タイガとさっきの鍛冶師の人も座っている。


「あの二人は決して戦闘以外で混ぜるな。すぐに喧嘩するから」

「あ~やっぱりあの二人仲が悪いんだ」

「そう何だよね。リュウも一応気を付けといて」

「もっとやれー二人共!」

 なんか鍛冶師があおってるし収拾着くのかこれ?


「遅くなりましたがタイガ、ゲンさん色々情報ありがとうございました」

「僕のためでもあるから気にしなくていいよ」

「俺も情報貰ったりしたんだからそんなこと言わなくていいぞ」

「でも実際に助かった事も多かったので口には出しておかないと」

「結構お前って律儀だな」

「リュウは本当にそう言う所は変わんないね」

 そうだろうか?自分では分からん。

 とりあえず今は女性陣が来るまでの暇潰しとして先程リベンジと言っていた騎士達と決闘をして暇を潰す。それと同時にタイガと話す。ゲンさんは収拾のために動いてくれた。


「それで今回はどんな修業をする気?」

「基本的には全員の特性アップだからこの間と変わんないな。あ、今回も走ったりして基礎練習はさせるから」

「あ~またあの鬼ごっこか」

「安心しろ、今回はリルの子供達だからもっときついぞ。それに森の中だから余計走り辛いし」

「え、リュウとリルさんもう子供出来たの!?」

「違う!リルの群れの子供達だ!」

 何言ってんだこいつは。そんなに早く子供が出来る訳無いだろ。

 そんな話をしながら十人目突破、やっぱ弱いなこいつら。


「ああ驚いた。もしできてたらティアに何て言えばいいか」

「だからできてないって!」

 挑戦者と戦いながらなのでちょっと言い方が変になるな。


「できてないって、出来ても良いの?まだ若いのに」

「ま~その辺は仕方ないさ。惚れたし、その内欲しいな~ぐらいは考えてるし」

「…………それこそ気が早くない?僕達まだ二十歳にすらなってないよ」

「仕方ないだろ。惚れちゃったんだから。ほい次ー」

 また一人倒して次の挑戦者が現れる。たださっきの奴に比べてまた随分と力任せな。


「リュウが僕達を置いて行ってどんどん大人になって言ってるように感じる」

「そりゃ非童貞ですから」

「そんな軽い感じだったら軽い嫉妬で済むのに。そう遠くない未来ではすでに子供いるんじゃない?」

「それはどうだろう?力のある存在は出生率が低くなるからな」

 流石に堂々と魔物とは言えないのでちょっとぼやかしたが大丈夫だよな?

 また一人倒したと思ったら今度は集団で戦いに来た。もう決闘ではなくただの喧嘩とかだろこれ。


「……で、ティアとは結婚する気あるの?」

 その一言を聞いたからなのか更に人数と剣を振り下ろす力が増えた。だから力ずくじゃパフォーマンスを落とすだけだってのに。

 俺は軽くいなしてまた転ばしてから答える。


「今の所はねーよ。まずあいつ嫌がるだろ、ハーレム野郎と結婚だとか。昔っから誠実な人が良いって言ってなかったけ?」

「言ってたけどそれはリュウが誠実だったからでしょ。リュウは嘘つくの苦手だったし」

「それは誠実とは言えねーだろ。別に式を上げたりした訳じゃないけどさ」

 と言うか式を上げるのはドラゴンぐらいなものだ。他の種族と言うか、魔物の文化的にない。

 リルやカリンはまず結婚などと言わず、契りと言ってお互いに好きになりお互いに一緒に居て夫婦になりたかったらなる。みたいな感覚だそうで、森で生きている魔物は大抵このタイプ。

 次にドラゴンやガイのように国に住んでいる魔物は結婚と言う風習はある。だからこそ結婚したと周りに分からせるために式をするとか。と言っても王族のような場合は国民への報告のような感覚でもあるようだが。


「それに俺があいつに惚れられているのを知ったのがごく最近、そんな事つゆ知らず他の女とイチャイチャしてたのに何でこう、諦めなかったんだろうな?俺なら諦めそうだけど」

「それだけ本気で好きだってだけでしょ。あ~あ、僕も彼女欲しいな」

「知り合い絡みでもよければ紹介するぞ?」

「やめとく。リュウみたいになれそうにない。僕は普通に普通の人と結婚するよ」

 それはそれでどう何だかな?タイガは賢者だし俺よりイケメンだ。ちょっと彼女募集を掛ければあっと言う間に色んな女の子が手を上げそうな気がするんだけどな。


「すみません!遅れました‼」

「やっと来たみたいだね」

「本当に遅かったな。決闘相手全滅させちまったよ」

 手を軽くはたいてからティアの方に歩く。決闘で破れた騎士達は放置した。別に重傷は負わせてないし、皆腹を痛めてうずくまってるぐらいなものだし。

 俺は手を振りながらティアの元に行くと遠くから二度だけ見た事のある女が居た。

 聖女ヒカリ、俺の事をなぜか睨んでいる。


「リュウ、今日からよろしくね」

「おう、よろしく。マリアさんもよろしくお願いします」

「ええ、今日からお世話になりますねリュウちゃん」

「……あなたがリュウですか。私はヒカリです。聖女としてティアの相棒をしています」

「あ、どうもリュウです。しばらくよろしくお願いします」

「お願いします」

 聖女との会話は何だか業務的な感じになってしまったが今は良いだろう。それにしてもようやく全員そろった。

 大人の男性陣は何か真剣にカードゲームをしてるしもう出発しても良いよな?


「それじゃ大森林に案内します。行きますよ」

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