表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/238

アンデットの魔王

 転移したその場所でティアが殺されそうになっていたのでとりあえずティアを殺そうとしていた騎士を蹴って壁に叩き付けた。突然の増援だったにもかかわらず、その騎士は盾で防いだので十分脅威として見れるだろう。ティアは突然の事で呆けていたが手を差し伸べた。


「まだ生き残っていたようで安心したよ、ティア」

 鎧も所々欠けていたり、凹みや傷が目立っていた。ここに着くまでもおそらく相当厳しい戦いをしていたのだろう。そっと手を出すとティアは俺の手を取って立ち上がった。


「……ごめん」

「仕方ねぇよ。相手が魔王じゃお前もまだまだ実力が足りなかったって事だろ。で、なんだってあんたは俺に攻撃してこないんだ魔王」

 俺は玉座と思われる椅子に座った骸骨に目を向ける。魔術師風の黒いローブを着た骸骨は指に豪華な宝石が付いた指輪や金ぴかの杖なんかを持って偉そうにしている。

 骸骨だから当然目玉はないが眼玉があった場所には黒い炎の様な物はある。そしてその炎は何となくこちらを見ている。

 敵の数は三、いや四か。この場にいる魔王とさっき蹴飛ばした騎士ともう一体の骸骨、こっちは魔術師風だがこっちはそんなに豪華な装備はしてないな。そして問題はこの場にいない四体目だ。今はまだこの場に現れていないが相当の魔力量だ、しかもドラゴンに近い気配がする。

 俺個人は問題ないがティア達を護りながらとなると問題ありだな。この場にはティアの他にタイガに聖女が居る。聖女は気絶してるみたいだがタイガは意識はあるけどかなりの重傷、俺を見て笑っているが放っておけば勝手に死ぬな。

 まずはティア達を集めてから治療、その後結界を張って守るか。


『貴様は何者だ?ここがどこか分かっているのか』

「てめぇが魔王なのは分かるよ。でも名前とかは知らね」

『では名乗ろうか。我はアンデットの魔王、ピリオド。生者を終わらせる魔王である』

「ふーん。俺はリュウ、ただの調教師だ」

『調教師?そんな弱小な存在に頼るとは勇者の格も知れたものだな。どれ、他の者共のように軽く倒すか。やれ』

 魔王が俺に指を向けてすぐに騎士が動いた。動きが早いだけではなく技術もかなりある。師匠と対峙した時と似た雰囲気だから相当強い事は間違いない。しかも今回は魔物の身体能力も相まってかなり面倒臭い。一人ぐらい出してから守りに行っても良いが、今回は力試しも兼ねてるし一人で頑張ってみるか。

 そう思って俺は騎士以上の素早い動きをしながらティアを抱えてタイガの元に行った後、聖女も拾って結界を張った。


『結界を解呪しろ!』

 魔王が魔術師風の骸骨に命令をして解呪しようとするがこっちにはダハーカが居る。魔術で勝てる相手は居ない。

 俺はまずタイガから魔術で治療し始める。タイガは魔術師骸骨と戦ったせいか精気や魔力、体力も相当減少しているしもっと厄介なのは呪いだ。死霊術と呼ばれるまだ成仏していない魂などを操る事で精気やら色々奪う厄介な魔術、と言っても簡単に言ってしまえば成仏させる事が出来れば解呪は簡単だ。なので早速俺はダハーカの知識から魔術を選択、最も適した魔術を使って解呪する。


「ホーリーフレイム」

 聖属性の炎によって悪霊を成仏させた後すぐに魔術で治療を行う。傷を塞いだりするのは大丈夫だが体力、魔力までは戻せないのでそこは踏ん張ってもらうしかない。

 ある程度傷も治した後、ティアと気絶している聖女を同時に治療している時にタイガが声を掛けて来た。


「……お…そい」

「わりぃ。でも生きててよかった」

「……おれ…も……まだ」

「少し休んでろ。ティア、この二人は頼んだ」

「でも相手は魔王の他に二体の魔物が」

「安心しろ、同時に相手出来るだけの力は得たつもりだ。今は回復に勤しめ」

 そう言った後、俺だけ結界の外に出たのと同時に魔術師骸骨を殴った。骨しかないせいか、やはり軽い。ただダメージを与えたか、やっぱり分かり辛いな。筋肉が全くないせいで表情が全く読めん。

 拳の場合はやっぱり骨を粉砕した方がダメージ高いんだろうか?それとも炎で焼くか?

 そう思っていながらも騎士が攻撃を仕掛けてくるが俺は避けまくる。今回使うべきは蒼流。炎の効果を考えれば当然の選択だ。ロウで切ると勝負がいつまでも終わらなそうだしこっちを使う。


 今のところは騎士が前衛で、魔術師骸骨が後衛としてタイミングよく攻撃してくるので隙がない。この二人は相当長い事コンビを組んできたんだろうが、俺の体内にはお前らを超える仲間と実力者は揃っている。蒼流で斬りに掛かるが上手く盾と剣をぶつける事で炎に触れないようにしている分相当できる。後衛の魔術師骸骨も中々の絶妙なタイミングでの、騎士へのサポートに舌を巻く。騎士への付加術や俺への魔術攻撃はとても素晴らしい。時に俺に直接ぶつけてきたり、足元を魔術で構成したりと騎士が優位になるように魔術を使っている。

 しかし同時に感じる事が一つ。この二人が組んでいる状態の方が魔王よりも強い気がする。魔王は今のところ玉座に座っているだけだが、あまり脅威に感じない。何でこの二人?が大人しくあの魔王の言う事を聞いてるのかよく分からない。


 俺も反撃し、魔術と剣術を混ぜながら騎士から襲う。魔術の制御にはダハーカや悪魔に協力してもらいながら放っているのでこっちは簡単。炎と光を中心に魔術師骸骨に向かって攻撃してはいるものの、向こうも上手く魔術で防いだりしているし、目の前の騎士は盾と剣のコンボで意外と手数が多い。盾で剣の動きを隠したり、盾を構えたまま俺に体当たりなどと意外と技のレパトリーも多かった。

 単純な技だけの試合なら確実に負けてたな。でも今はただの殺し合い、それで俺は負ける訳にはいかない。

 俺は蒼流で上段から斬り下ろすと同時に炎を放つ事で牽制した後、魔術師骸骨に向かって聖属性の魔術を高速で撃ち出す事でいくつか食らったはずだがまだ浄化できない。

 騎士は鎧のおかげで斬れなかったが何故かさっきの炎を食らったはずなのにいつの間にか鎮火している。奇妙な部分が多い。

 このままでは無駄に体力を消耗しそうだし、それではそろそろ新しいスキルでも使って。


『何をしている!調教師一人に手間取ってからに!来い‼エンドドラゴン!』

 そう言って魔王の奥から更に嫌な気配がする存在がようやく動いた。魔王の玉座の奥から歩いて来たのは骨だけのドラゴンだった。死んだドラゴンを再利用したんだか、それとも進化の過程でこのような姿になったのかは不明だが見ていてとても気に入らない。俺の中にいるオウカとアオイから怒りの気配を感じる以上恐らく再利用された可能性が高いな。

 ま、とにかく今は強敵が一体さらに増えたとだけ認識するか。


 俺は蒼流を駆使しして騎士から仕留めようとするが中々上手くいかない。しかも骨ドラゴンも前衛として前脚で潰そうとしてきたり、牙で噛み付こうとしてくる。

 しかも騎士と魔術師骸骨も攻撃の手を緩めないのでさらに厳しくなった。それじゃ、早速新スキルを試してみますか。


 まずはスキル『魔狼王の加護』から。全身をリルのオーラが包み、何だかオーラの形がガイのような人狼のような形に変化する。何故か知らないが狼の耳っぽいものと尻尾がオーラのみではあるけど生えてた。

 それと戦闘面では嗅覚と聴覚がさらに発達したように感じる。そして今俺が握っている蒼流にもある能力が加わった。恐らくこの能力は本来ロウに付いていた効果だったんだろう、その効果で騎士の剣を切った。

 すっぱりと綺麗な断面のまま切断できた。兜を被っているので表情は分からないが雰囲気から相当驚いている事は分かる。ロウの様に斬撃を飛ばすことは出来なかったが十分強力になった。

 もしロウを使った場合でこのスキルを使ったらどうなるんだろう?

 それは得物の無くなった騎士を強い蹴りで壁に激突させ、戦闘不能。これでまず一体。


 次に骨ドラゴンだがこいつはどう倒せばいいのか見当がつかない。焼いても既に骨だし、心臓も何もない存在ってどう倒すんだ?魔術師骸骨もそう考えると無理矢理成仏させるしか倒せない気がするし。

 ならさっきのホーリーフレイムで焼くか?流石に聖属性の攻撃をまともに食らえば倒せるはず。


「特大の‼ホーリーフレイム!」

 蒼流の炎と共に聖属性の炎を同時にぶつけるが何ともないだと!てかさっきから戦ってる連中全員妙だとは思ってたがここまでおかしいとは思ってなかったぞ!


『カースバインド』

 魔術師骸骨が俺を魔術で拘束してきた。タイガに掛けた呪いと同系統の魔術だがこの程度は何ともない、しかし耳障りな声みたいなのが聞こえてくる、何て言ってんだこいつら。


『よくやった。では今度は我がこの者を我の物にしようか』

「……何する気だよ」

『何、貴様の魂を抜き取りその肉体を支配しようとしているだけだ。痛みも何も感じない、我は優しいからな』

「じゃあこいつ等も」

『我の配下は皆そうだよ。全魂は我の手中にある。貴様の攻撃など無意味だったのだよ。しかし貴様は特別待遇をしてやる、中々素晴らしい魂を持っていそうだからな』

 なる程ね。今まで攻撃を受けて何ともなかったのは魂がなかったからか。

 アンデットでも魂はある。この世界での生きている云々は心臓が動いているかどうかだけではなく、魂があるかどうかも関係する。たとえ死んだとしても、アンデットとして復活するのがいい例だ。

 つまりこいつ等の不死性は魂の無い空っぽの器ばかりを攻撃していたからか。

 ようやくその結論に達すると魔王は何やら詠唱をしている。


『これで貴様の魂も我の物だ。デットエッグ』

 確かこの魔術は初級の禁術だ。魂を無理矢理ひっぺ返す禁術、では食らったふりをして反撃のチャンスを待ちますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アジダカーハにも聖属性は使えないくらい特別って言ってなかった?聖女の話が出たあたりで
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ