別な戦争
魔王になってから俺がしていたのはリハビリとティア達の様子を見る事だ。
リハビリの方は魔王化して影響から少しでも改善するためのもので、力の安定、後単に肉体の方も反動に耐えられるようにウルの魔力制御も含まれている。これによって少しは回復が早くなるとか。
ティア達の方は単に心配である事と、アンデットの魔王との攻防が一進一退を繰り返しているからだ。数だけで言えば、ティア達の方が多く有利らしいが相手もアンデットでいくら破壊しても、そのうち勝手に復活をするので攻め切れていないらしい。さらにティア達の陣営は負傷者や死者も出ていてこの泥沼が続いた場合、敗北するのはティア達である可能性が高い。
悪魔に頼んで偵察してもらった際にそう報告された。
「正直ぱっとしない状態だな」
「仕方ないんじゃない?人間は弱いし、武器も私達の牙には劣るだろうし」
「パパ助けに行くの?」
「一応それも視野に入れてる。というか魔王化した後の実力を知りたいから試したいってのもあるけど」
「リュウは戦うのが本当に好きなのだ」
「リュウ、あまり無茶しちゃダメよ」
俺がベッドで休んでいる隣には、いつもの三人に混じってウルもよく一緒に居るようになった。
三人は俺が無茶しないための見張りという名目でずっとそばにいる。アオイは戦いが終わってから国内事情で忙しそうだし、それと魔物のための街造りに力を割いてくれているので本当に頭が下がる。悪魔はどちらかというと内側ではなく、外で情報収集の方で活躍してもらっていた。直接戦闘でも相当強そうだが、今は戦闘よりも情報の方が欲しいので頼んでみると、ものすごい量の情報を持ってくるのでちょっと大変だったり、後はコクガやアリスと協力してもらいながら情報の確認をしてくるのでマジで有能だ。本当にどっから情報を持ってくるんだが。
「それにしてもウル、もういいんじゃないか?大分回復したぞ」
「もうちょっとだけ待って、せめてあと一日は様子を見ないと不安だから」
実を言うと俺の肉体、および魔力はかなり回復していた。ウルにも予想外の回復っぷりで驚かれたが、スキルも魔王化の影響か大分変化していたし、俺の中ではもう大丈夫だと思っているのだがウルは過保護というか心配症というか、とにかく今は俺に戦ってほしくないようだ。
「ウル、そろそろ良いんじゃないの?リュウは勇者と賢者を助けるためにどうせ飛び出すでしょうし、それならいっその事早く鍛え上げてしまったら?」
「お父さんは大切な者のためならすぐに飛び出すからねぇ」
「ウル様、私もリルやカリンに賛成なのだ。リュウは絶対に飛び出すのだから縛るより早く戦えるようにした方が危険も減るのだ」
「…………そう、ね。リュウ、最終調整に入るよ」
「やっとか」
ウル達の事は気になるがまず自分の事だ。俺が戦えない状態で助けに行ってもただの足手まといになるだけ、それなら早めに調整した方が
「リュウさん!リュウさん!大変です!」
「あれ?アリスどうした。そんなに血相を変えて」
「隊長から連絡がありました!今日アンデットの魔王を倒しに動くそうです!」
確かそれって泥沼化していてお互いに決め手に欠ける状況じゃなかったか?それなのに攻めるってのは何らかの状況が変わったのか?
とにかく今は話を聞くか。
「今日とはまたいきなりだがなんか動きがあったのか?」
「アンデットの魔王側から攻めてきました!その、その場で戦死した騎士達の遺体を操って攻撃を仕掛けてきたと」
「あ~つまり魔王側の兵力がむしろ強化しちまったと。てか死体を焼いたりしてないのか?」
「……焼いてはいたそうです。しかし残った骨からアンデットにされて、今も戦場が混乱しているそうです。教会の人によって葬られた死体だけはアンデット化しなかったそうですが」
「伊達に魔王を名乗ってはいなかったって事か。そうなると数で押すより少数精鋭の方がよかったかも知れねぇな」
「ですので一般の騎士はアンデット化した存在を踏破しながら撤退しています。そして勇者様達は魔王に向かって行くと…………その、助けてくれませんか?」
「今すぐは無理。ウル、調整急いでくれ、多分出陣する。それと全眷族を俺の体内に移動させる。相手は魔王だから出し惜しみはしない」
「分かった」
「なら私達は先に入ってるね」
そう言ってリル達は俺の体内に入っていった。すでに念話でアオイやダハーカにも伝わってるし、すぐに来るだろうが、悪魔はどうすっかな?今名付けたら絶対俺の方が不利になるだろうし、この一戦が終わってからになるな。
そう考えているとウルが俺の背中に密着してきた。
「これから調整を始めるね。ちょっと時間が掛かるかも知れないからそこだけは分かっててね、それと同時に力の制御方法も教えるからちゃんと聞いて」
「了解」
「それじゃ説明するね。私がリュウの魔力を廻すからよく覚えて」
廻すと言う言葉に違和感を覚えたが俺は大人しく受けた。
ウルの力の制御というのは俺が今までしていた魔力の上下ではなく、もっと別な、魂側の力を使った制御のようだ。生命の根幹とでも言えばいいのか、その力は決して上下する事がないはずだが、まさかこんな方法で力の底上げが出来るとは思っても見なかった。
でもこれかなり難しいな。今はウルが動かしてくれているが、これを自分で行えと言われたらかなり難しい。しばらくは戦闘では使えないと考えた方が良いな。
「分かった?正直この制御方法は口で説明しにくいの。だから感覚で掴んでもらうしかないんだけど……」
「なんとなくで良いなら掴んだぞ」
「それならよかった。私もいざって時のためにリュウの中に入っておくね。多分必要ないと思うけど」
「ああ、頼む」
ウルは背中からするりと俺の中に入って行った。他の皆もすぐに来て俺の中に入って行ったがダハーカが一番楽しそうにしていたのは言うまでもない。
悪魔も含め全眷族を体内に移動させた後、俺はそっと魔力とウルが教えてくれた制御の仕方で力を溜める。この廻すやり方だとエネルギーの消耗がとても低い事が分かった。例えるなら肺に入った酸素が身体の中を巡ってまた肺から出て行くようなイメージ。いや、どちらかというと心臓から送られてきた血液が体内の中を巡るイメージの方が正しいか。このやり方なら自身の体内にあるエネルギーを失う事はないのだから。
ただダメージを受ければその分普通にエネルギーは失う、そこは変わらない。ただ単に魔術や魔力放出などでは失わないと言うだけだ。ダハーカだったら魔術を無限にぶっ放す荒業が出来る。と言ってもこの制御は教えてもらったばっかりだし、今の俺には出来ないのでそこは少しずつ訓練をしながらというべきだろうな。
そしてタイガに渡した魔方陣が作動した気配がした。俺は一瞬の浮遊感の後にティア達の前に転移した。
カード情報が大幅に更新されました。
魔王化によってスキル『毒無効』『麻痺無効』が統合され『状態異常無効』になりました。
更に『万象感知』『精神攻撃無効』『無限再生』『魔王覇気』に進化しました。
ウルが独立したため、魂の眷属として登録されました。
魔王化に伴い、魂の眷属との絆が強化されました。スキル『魔狼王の加護』『迦楼羅天の加護』『龍皇種の加護』『unknownの加護』が追加されました。
『unknownの加護』は現在使用できません。
よって現在のカード情報は
名前 リュウ
年齢 17
スキル『調教師』『刀使い』『身体能力強化』『生存本能』『万象感知』『無限再生』『魔王覇気』『状態異常無効』『精神攻撃無効』『魔狼王の加護』『迦楼羅天の加護』『龍皇種の加護』『魔賢邪龍』『unknownの加護』『精霊王の加護』『念話』
魔術 全属性 精霊魔術 悪魔術 魔力放出
従魔 リル カリン オウカ アオイ ウル アジ・ダハーカ




