悪魔の顕現
俺はカリンの背から降りて一応騎士だか軍の人に挨拶をした。
一応程度のものだし、枢機卿以外は全員殺す予定なのであいさつ何て意味が無いが。恐怖をあおると言う意味でダハーカから姿を現した方が良いと言われたからこその演出だ。でなけりゃ俺が出張る理由なんてない。
それとさっきまで殺していた人間の魂はほぼ俺に送られた。ほぼと言うのはガイ達が殺した人間達の分はガイ達に行ったようなので、主にカリンが殺した分とリルが殺した人間の分のみが俺の元に送られている。リルが半分以上殺してくれたので、かなりの魂を獲得する事が出来たようだが、魔王になるにはまだ足りないようだ。
「き、貴様どういうつもりだ!この魔物達を人間が従える事など出来るはずがない‼」
「目の前の現実を見れば分かるでしょ。この子達のほとんどは俺の家族で眷族だ、それに従えてるなんて誰が言った?この子達は自分の意志で俺に協力してくれている。それより枢機卿だ。あそこに居るんだろ?」
多くの教会のシンボルを付けた騎士や魔術師が居る一団を見て俺はそっちに向かって歩き出す。
そうすると俺に怒鳴ってきた奴の隣に居た騎士が俺に剣を振り上げて立ち向かってきた。俺は手出す事無くリルに殺された。俺が触れる前に爪の先で腹を突き刺し、あっさりと死んだ。
また俺の中に魂が入り込む。それと結構散らばってるな。逃げ出そうとする者、震えながらも俺達に剣を向ける者、完全に絶望してただ震えるしか出来ない者。これを一人一人殺すのは面倒だな。協会の騎士達の前にささっと殺すとするか。
俺は魔術を使用して一気に殺す事にした。索敵系の能力で敵と味方を判別、その後魔術で死体を残すために点攻撃の出来る魔術を選択する。
「レインドロップ」
水系魔術、レインドロップは本来無差別に上から水の槍で刺し殺す魔術だがダハーカの協力によって敵のみに槍を降らせる事に成功している。結果、生き残っていた騎士や兵士達のほとんどが串刺しの死体となって更に俺は魂を手に入れる事になった。
それにしてもこの高揚感は何だ?人間を殺し、魂を手に入れるたび訪れるこの感情は。この高揚感はとても心地よく感じるが、これは危険な感情であるのは目に見えているが、どうしてもこの感情に浸りたくなる。
『リュウ、それ以上はダメ。私が抑えててあげる』
ウル、ありがとな。ウルがダメだという事はやはり危険な行為だったのかもしれない。何のリスクもなしに莫大な力を得られる方がやっぱりおかしいか。
俺が危険な状態になっていたのを感じていたのかリルとカリンは不安そうに俺を見ていた。俺は一言大丈夫だと言ってリルとカリンを撫でる、さて、後は生き残った連中を殺すだけだ。防御魔術を使えた者達は障壁を作り、身を護る事に成功している。と言っても腕や腹の脇を貫かれて大量の血を流している者の方が圧倒的に多いが。
ただ良かった点を挙げるなら他と違った一団の障壁によって枢機卿が守られていた事だろう。細かい制御によって枢機卿には当たらないように調整はしていたがおかげで楽が出来た。しかし一団は皆重傷であり、回復系の術を使う余裕も無いようなのであっさりと殴ってどかした。
それにしてもまだ魂の数が足りないのか?結構殺しまくったと思うんだが。
俺は枢機卿を拾って担いだ。後は魂を奪うだけだ。
俺は残りの人間から魂を無理矢理引き抜いた、するといきなり身体中に激痛が走る。激しい電撃を食らったような痛み、さらにそこから大量の熱が出てきて頭がぼんやりとする。思考が纏まらず、ぼんやりとした意識のままリル達の心配する声が聞こえた気がした。
それよりあいつを召喚で、契約をし…な…
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リュウが倒れてすぐに悪魔は現れた。
リル達は警戒するが悪魔は危害を加える気などまるでなく、ただただ呆れていた。まさか人間が本当に魔王の称号を得る事が出来るとは、そして本当にこれだけの贄を用意する事が出来るとは思わなかった。そして目の前で魔王となるべく身体を進化させている最中のリュウを見て笑う。
本当に見ていて面白い。初めて会って、見て、話した時に感じた強い欲と魂は今、さらなる高みへと向かっている。この者の側に仕え、この者を一番近くで見たいと悪魔は感じた。
そして悪魔は既に戦死、いや、ただの蹂躙によって死んでいった騎士達の肉体を集め、新しい自身の肉体を生成する。まだほんの百人程が重傷のまま生きていたが悪魔は容赦なく枢機卿以外の魂を刈り取り、その魂をリュウに献上した。
『勝手に契約なんてしていいの?』
「問題ないはずですよ。元々そのように契約しておりましたから。それよりリュウ様とその人間を運びましょう。少しでも有能なところを見せ、お側に置いていただけるようにしませんと」
『その前に肉体をきちんと受肉させる方が先じゃない?その状態じゃ何もできないでしょ』
リルの言葉に悪魔は中途半端だった受肉を先に完了させた。以前の適当な人間の姿と違い、出来るだけ悪魔の時と変わらない姿に受肉させる。
その姿は人間と変わらない、服は紺を中心にしたスーツ、しかしその中にある魔力は人間とはとても言えない程のエネルギーに満ちており、それはただの高位ドラゴンでさえも太刀打ちできない程だ。
「これでよろしいでしょうか?」
『恐ろしいわね。貴方どの世代の悪魔なの』
「ただの若作りのとても古い悪魔ですよ。こうしてきちんと現界するのはとても久しいです」
恭しく礼をするが恐らく太刀打ちできるのは初代フェンリルやティアマトのような本当に伝説の中の伝説の存在にしかろくに太刀打ちできないだろう。それだけの悪魔がなぜリュウの側に居る事にしたのかがリルには全く理解できなかった。
『なら手伝って。その人間を運んで頂戴、行先は龍皇国よ』
「承知しました」
そう言うと悪魔は枢機卿を両手で抱え、何て事無く転移で恐らく龍皇国に行った。悪魔にとって転移など大した魔術ではないらしい。
『お姉ちゃん、あの人怖い。本当にあの人だったの?』
『そのはずよ。でも今はリュウを部屋に運びましょう』
そっとリュウの首を噛んでリルはリュウを慎重に運ぶ。リルは何故だか自身の身体も変化し始めている事に気付き、歩を早めた。




