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アリスとコクガ

 次に向かったのは大森林の南側、アリスとコクガ達に会いに行く。

 毎日見回りと言って辺りを捜索してくれる彼等はとても優秀だ。アリスは前から隠れて見張りとかが多いと、言っていたがこの大森林の中ではその隠れるスキルはとても重要なスキルである。大森林には多くの樹木や伸びた草などが天然の遮蔽物を作ってくれる。魔物なら気配を断ち獲物に向かって行くが、人間にはそれが難しいと感じるものが多い。

 人間は普段町などに住んでいるので身を隠す必要ない者がほとんどだ。そのせいか人間は気配を消すのがとても不慣れになってしまったと、俺は考えている。しかし俺が頼んだアリスとコクガ達は気配を断つ事で情報を手に入れたり、人を殺してきた。

 そんな彼らにとっても大森林は活動しにくい場所な訳だが彼らは毎日森を見回ってくれている。


 だが最近は彼らを見て協力してくれる魔物達が現れた。その協力してくれている魔物達とは魔物の子供達だ。

 子供達は普段大森林の中心部で大人しくさせられている訳だが一部のやんちゃな子供達がアリス達の事を見ていたらしい。そして正義感の強い子供の一人が彼らに協力したいと言い出したのだ。

 結果、アリス達はパートナーとして魔物と共に森の捜索に加わったと言う事だ。

 ちなみにアリスとコクガは共にフェンリルの子供に気に入られ、よくその背に乗って移動しているのを見る。


「お、ここに居たか」

「あ、リュウさんお疲れ様です」

「リュウ様どうかなされましたか?」

「そう畏まんなくていいよ。ただの様子見。で、何か変わった様子とかあるか」

「この子達にも聞いてますけど問題ないようです。生物の気配がとても少ないので気になってたんですがこの子達からすればいつもの事のようです」

「リュウ様、今度この森に関する資料をいただきたいのですが」

「そこは龍皇と相談中、やっぱり重要な資料らしいからそう簡単に見せらんないってさ」

 そう言うと少し残念そうな様子を見せるコクガ、やっぱり人間から見ると正確な資料ってかなり欲しがる情報の一つだからな。


 この情報が重要視されている理由はいくつかある。一つは記録しているのが龍皇国のみであると言う点だ。

 フェンリルの爺さん達は長い時間この森に棲んでいた経験によって大体の事は予測できる、精霊王の所は精霊王と精霊女王自身が覚えているので問題ないと判断されていた。

 片方は棲んでいた経験から、もう片方は王と女王が覚えているから問題ないとなっているので資料として纏める必要がないとされていたので龍皇国にしか資料がないと言うのがさらに貴重性が高めている。

 おかげで人間側にすぐ渡せる資料と言うのはどうしても慎重にならざるを得なくなっているのだ。


「でも不便はないんですよね。この子達が色々教えてくれるので」

「それでも資料は欲しいですよ。過去の事を知るためにはこの子達の親に聞かねばなりませんが、なかには人の言葉を覚えていない方も多いですからね」

「でも急いで怒らせたらそれこそ資料を貰えずに苦労する事になりますからのんびり待ちましょう。ああ、もふもふだぁ」

 アリスはパートナーに身体をうずめて幸せそうに頬を緩める。アリスのパートナーは引っ込み思案で大人しい雌だ。パートナーはアリスを包むように身体を丸めてアリスの頬を舐める。その様子はまるで子を甘やかす母親の様だ。

 …………いや、まさか本当に人間の子供と勘違いしてんのか?こういう姿を見せられると本当にそう思っている気がするんだが。


「のんびりしていますね。それからリュウ様、ご報告ですが現在魔王討伐組は順調に進行していると報告が入りました」

「進行って言っても今日出発したばかりだろ。それにコクガは大森林に侵攻する側を見張れと言ったはずだが?」

「申し訳ございません。アリス殿のあの様子を見ていると不安になりまして」

「あ~、アリスはダメでもゲンさんはまともだから」

「さり気なく虐めるの止めていただけません?」

 だってアリスの場合いつ仕事してるのか分かりにくいし、普段はダメダメな部分を見る事の方が多いし。


「ではそろそろ見回りに戻ります。アリス殿、行きますよ」

「は~い。それじゃぁリュウさん、晩御飯の時に」

 そう言うと二人ともパートナーの背に乗ってどこかに行った。

 何だかんだでコクガの方もパートナーと仲が良いんだよな。パートナーとして共に行動を取っていても言う事を聞かない奴は聞かないし、実際パートナーとうまく言ってないと言う話はよく聞く。パートナーが怠けるとか肝心な時にしか動いてくれないとか。


 と言っても俺から見ればなんだかんだでうまくいってる気がする。

 例えば熱源を感知できる魔物と一緒に居る者は夜だろうと霧が出ていても問題ない、それにそう言った目に頼らない魔物の多くは目が悪い存在が多い。

 視力が弱いと言うよりは発達していないと言った方が正しいだろうがお互いに弱点を補っている様に感じるので俺の中ではうまくいってると感じているんだけどな。


 それにしても今日はもう暗いな。帰っておくか。カリンとオウカの掃除が終わったかも気になるし。

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