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カリンとオウカの様子

 カリンとオウカが居たのは城の中庭だった。そこで組み手をしている。

 二人とも人型のまま殴ったり蹴ったりしてお互いを高め合う。

 カリンは魔王直伝の蹴りと炎を駆使して、オウカはアオイから学んだ体術と炎を駆使して、一進一退の攻防を繰り広げる。


 カリン、いやガルダと言う種族は生まれながら『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』のスキルを持って生まれると魔王は言っていた。これが龍皇国に居るほとんどの者がガルダを恐れる理由だが、その純粋なドラゴンであるはずのオウカには分が悪いはずだがカリンに食い下がっている。

 カリンの炎に恐れず防御魔術を駆使し的確に守っている。魔術攻撃に強い耐性を持つガルダだが反面物理攻撃には弱い。正確に言うと羽に包まれていない部分なのだがそれともう一つ、ガルダはとても軽いと言う長所とも短所ともとれる特徴だ。


 俺が以前魔王を連続で地面に叩き付ける事が出来たのもこの特徴のおかげだ。彼らは鳥類、飛ぶために必要最低限の筋肉と羽の集合体と言っても構わない。いや、これは言い過ぎか。とにかく飛行する鳥類は飛ぶために必要以上の筋肉もないし脂肪もない。

 大袈裟に言うと軽量化に特化した種族と言えるかもしれない。


 それに対してドラゴンは重く、筋肉質な存在が多い。

 屈強な肉体のため空を飛ぶ際は自然と自身の体重を軽減する魔術を使用している者が多くいる。と言っても一定以上の進化か、血による初めから翼をもった存在ぐらいしか翼はない。アオイのような四つ足で翼の持たないタイプはある意味最もポピュラーなドラゴンだと言えるだろう。

 翼の有無は本人の進化によって変わるし進化しても翼を必要としないものなら一生翼は現れないだろう。


 カリンはオウカに容赦ない炎を纏わせた蹴りを中心に攻撃しているがオウカは中々攻撃に移れない。オウカはまだ肉体的にも成長し切ってはいないのでどうしてもリーチが足りない、しかし小柄な体格を生かして上手く避けている。

 時折、腕をドラゴンのものにして攻撃していたが人型に戻すのが遅いせいで何度も炎を食らっていた。しかしお互いにダメージを入れているが明らかにオウカの方がダメージを負っている。


 お、オウカが意外な手でカリンに重たい一撃を入れた。

 オウカがしたのはさっきと同じ身体の一部をドラゴンのものに戻すものだが戻した所が意外だった。意外な場所とは尻尾だ。まず人間型の場合で回し蹴りをし、完全に仕舞った状態からの不意打ちの尻尾の攻撃は横から薙ぎ払うように上手く腹に当たり吹き飛ぶ。

 子供とは言えドラゴン、そのパワーは侮っていけない。


 吹っ飛んだカリンは直ぐに体勢を立て直し、オウカに笑った。オウカもカリンに笑う。もうこの二人はお互いに好敵手として認識しているのかもしれない。

 そんな光景に少し羨ましいと思っていると二人は高ぶり過ぎたのか互いに口を大きく開けて力を溜める。その構えは完全に本気のブレスだ。これはヤバい、ここでそんなのぶっ飛ばしたらアオイだけじゃなく色んな人に謝らないといけなくなる。


 しかし二人はすでに撃ち出している。俺は慌てて二つのブレスがぶつかる瞬間に結界を張った。わざと上空に炎を逃がすように蓋のない円柱型の結界を張る事で難は去った。


「…………お前らやり過ぎだろ」

「あ、パパ!」

「リュウお帰りなのだ!」

 さっきまでの殺意と言うか敵意と言うかそんなものを霧散させて俺に抱き着く。


「あのな、そんなに思いっきりやりたかったら闘技場でも借りてやれよ。今の威力は俺がどうにかしなかったら被害出てたぞ」

「ごめんなさい……」

「周りが見えてなかったのだ……」

「でもいい一撃だった。そこだけは褒めてやる」

 二人の頭を撫でるとすぐに落ち込んでいた二人は嬉しそうに顔をほころぶ。こうしているとアオイとかに甘いと言われるが二人が可愛いんだから仕方ないと俺は思う。

 二人を連れてすぐそこのベンチに腰掛ける。


「少し休憩にするか。調子どうよ?」

「う~ん、私はまだ炎の扱いが荒いかな。撃ち出す時とかは上手くいくけど纏わせてそれを維持させようとするとちょっと大変」

「私は中々上手く攻撃が入らなかったのだ。身体能力的な部分ではなく単にまだちっこいからだと思うのだ」

「あれ?カリンって覇気みたいなスキル持ってなかったけ?後オウカはそれだけが原因だとは思えないぞ」

 オウカがちょっと落ち込んでいる時にもカリンと話を進める。


「あるよ。でもパパが使ってる覇気とは違って元の姿でしか使えないんだよ」

「え、何そのスキル。普通はどっちの姿でも出来るもんじゃないの?」

「お母さんが言うにはまだ徳が足りないんだって。スキルの名前は『威光』。確か人間から恐れられたり、崇められたりする事でようやくちゃんと使えるスキルなんだって」

 何その人間が居ないと使えないスキル、何でそんなものがある訳?


「お母さんが向こうで土地神様をやってるのもそのせいなんだって。人間から信仰される事で威光の効果が増えるしお供え物を貰ったりするんだって」

「外部からの干渉によって強化されるスキルか。癖が強いし、最後のは関係ないだろ」

「でも美味しい牛とか貰えるって言ってたよ。今度食べに来て良いって言ってた」

 それは単に娘と一緒に居たいだけだと思う。あの魔王、親バカ拗らせてそうなんだよな、まぁカリンが可愛過ぎるのが問題なのかも知れないけど。


「リュウ、私はどうなのだ?早く大人になりたいのだ」

「ん?無茶言うな。どんだけ早くなりたいって言ってもなれるもんじゃねぇよ」

「ならリュウみたいにおっきくなる方法はないのか?」

「毎日食って遊んで寝ろ、それがデカくなる条件だ」

「……太りそうなのだ」

「太るかよ。てかその年で既に太るとか意識してんの?」

 俺としてはそっちの方が意外なんですけど。


「当たり前なのだ。カリンも気にしてる」

「え、マジ?」

「本当だよ。私お肉付き易いみたい」

 そう言って胸を触る。

 それは肉が付いたじゃなくてただの成長じゃね?


「ま、とにかく何でも食って体動かせば自然と成長する。後太るとか言って飯食わないと更に背も伸びないからな。後女らしい部分も運動し過ぎると小さくなるぞ、そこも脂肪だからな」

 そう言うとオウカは何故だか衝撃を受けたような顔をする。もしかして知らなかったのか?

 何か小声でぶつぶつと呟いているが気にしないでおこう。


「それからお二人とも掃除の時間です」

 いつの間にかそこに居たアオイがモップを持って出て来た。グウィバーさんも一緒だ。

 そして二人から怒りのオーラが出ている。


「掃除?」

「何の話なのだ?」

「とぼけても無駄ですよオウカ、あの焼け跡を見なさい」

 グウィバーさんが指さしたのは先程カリンとオウカがブレスをぶつけた現場だ。綺麗な白い中庭の一部が黒くなっている。

 カリンとオウカはあっとした顔でそこを見ている。


「これは罰です。綺麗になるまで辞めてはいけませんよ、監視としてお母様を付けます。よろしくお願いしますねお母様」

「かしこまりました。ではさっそくしてもらいましょう」

「「パパ(リュウ)助けて」」

「……自業自得だ。頑張りな」

 俺は二人を見捨てた。

 だってアオイとグウィバーさんのダブル殺気に立ち向かう勇気はありません。

 少し後に子供の悲鳴が聞こえたが、次は誰の様子を見に行こうかな。

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