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偵察後

 一言に殺しに来たと言ってもこいつ等じゃ俺達には勝てない。伝説の邪龍にその邪龍に勝った男が相手するのだから四人じゃ少な過ぎる。と言っても殺すか生かして情報を奪うか……

 うん。情報持ってそうな奴だけ生かして後は殺そう。

 ダハーカはダハーカで既にこの小道限定で結界を張っている。邪魔をされないためかこいつ等を逃がさないためか、まぁ何にせよこっちの有利になるものだろうし気にしなくていいか。


「リュウ、どれを生かす?」

「そうだな……結界張る直前に来た奴なんて良いんじゃないか?」

 正直この中で誰が一番情報を持ているかは分からないし、どうせ大した情報も持っていないだろう。恐らくこいつ等は教会で捨て駒として使われた運のない奴らだ。

 暗殺者達の攻撃を躱しながら堂々と相談していると新しく来た人間を守ろうと一部の人間が動いた。重要な人間か、はたまたただの仲間意識か。


「おい!早く攻撃しろ!こっちは遊ばれている!」

「しかしこの子が‼」

「構わん!自ら来たのだから自業自得だ!そいつにも戦わせろ!」

 まずこいつを殺すか、煩いし。

 そう思って拳を振るう簡単に頭と身体が離れた。頭はそのまま三人の方に転がり、身体はそこに倒れた。

 ダハーカに戦いを挑んだ者は既に死んでいる。恐らく呪術だろう。身体から妙な黒い靄の様なものが出ているし外傷とかは見当たらない。

 視線を残った三人に戻すと真ん中に居た人間が口を押さえている。まさかこいつ新人か?


「さて、残った人間二人、お前達はどうする?殺されて死ぬか、情報を出して逃げるか」

「悪魔め!そんな事を言って結局我々を殺す気なんだろ!」

「止めろ!」

「今だけは落ち着きなさい。良い子だから」

 声から察するに真ん中は子供、右の止めろと言った人間は男、残りの諭す様に言ったのは女か。


「リュウよ。初めに生かそうと言った人間はまだ幼体の様だ。生かし情報を奪うなら左右のどちらかにした方が良いだろう」

「まぁ待てよダハーカ。子を守る親を甘く見ると大怪我するぞ。前にそれで痛い目をあった」

 子供の頃野生の子ウサギを見ていたら親ウサギに噛まれた事がある。意外と痛かったぞ、ウサギの前歯って立派だし固いしで。


「ならこれに聞くか?死んではいない」

「え?それって死体じゃねぇの?」

「術で意識だけを破壊した。魂と記憶は無傷だ」

「なる程、便利だなそれ。ならそいつから情報を引き出せるんだな」

「引き出せる。ではこの者達はどうする」

「…………ほっとくか。どうせ任務失敗したからってすぐには殺されないだろ?多分」

 厳しい所だと殺される組織もあるらしいが教会ならそこまで厳しくないだろうし。

 そんな会話をしていると、ほったらかしにしていた三人が何故かほっとくの言葉に最も反応した。まさか教会もそこまで非人道的な処罰はないよな?

 そう思っていると子供が俺に向かって短剣を突き刺そうとする。でもその刃は俺が摘まんで止めた。


「まさかと思うが俺を殺せなかったからお前らが殺されるって事はないよな?」

「この‼死ね!」

 俺はこの分からず屋の子供に本気の殺気を向ける。子供はすぐにビビって短剣から手を放す。


「帰るぞダハーカ。これ以上ここに居ても意味はない」

「準備は出来ている」

 俺とダハーカの足元に魔方陣が出現し輝く、あとは跳ぶだけと言った雰囲気だ。

 俺は一度だけ腰が引けている子供を見た。腰が引いているが眼だけはギラギラと俺を向いている。いつでも動ける様に、いつでも俺を殺せる様に。

 ああ、あの眼は良い。巨大な敵を目にその目をしていられる者はそういない、いつか俺を殺しに来るかもしれないあの眼はとても貴重だ。


 俺は跳ぶ寸前にその子供に向かって一度だけ笑った。

 その笑みを子供がどう受け取ったかは分からないが、きっとあの眼が腐る事はよほどの事がない限り無いだろう。少しだけ楽しみだ。


 跳んで帰ってきたのは龍皇国だ。こっちの方が何かと便利だし、戦闘前の調整でもここの闘技場を借りているので楽だからだ。

 アオイは狙ったように跳んで来た場所のすぐ近くに待機していた。


「おかえりなさいませリュウ様」

「ただいま。聖女をあの場で見れたのは中々の幸運だった」

「それ程厄介そうな相手には見えませんでしたが」

「でもティアの戦力は上がるし、こっちの戦力は減る。良い事尽くめじゃないか」

「ティアマト、この人間を置いておける場所を提供してほしい。この男の記憶から情報を引き出す」

「では地下牢を用意します。何か煩い事になったりはしますか?」

「そう言った事はない。すでに壊れているからな」

 死んではいなくても壊れてはいるんだな、ちょっと怖い。精神だけ壊す呪術なんて覚えたくもねぇ。


「ではこちらに」

 アオイがダハーカを連れて城の方に歩いて行った。

 さて次は三日後のラエル軍の出発時にまた潜入しますか。正直ラエルの軍勢ってイメージないんだよな、魔物対策で軍に力を注いでるのは聞いてるがそれしかイメージがない。

 ラエルで例の枢機卿の姿も見れるだろうし今は三日後を待つしかないか。

 そう思って今日は厨房に向かう。


「こんちは~、今日も厨房借りても良いですか?」

「あ、若様。ダメですよ、我々の仕事を失っては困ります」

「大丈夫だって、ただの新作料理を作るだけで大して大量に作る予定はないから」

 そう言って少し古いキッチンの前に立った。料理長はあわわとしているが別にゲテモノを作る気はないから。

 俺は最近料理に凝ってる、と言うよりは調教師としての実験の様なものだ。


 前にオウカ達を鍛えようとした時アオイに経験だと諭されたが、なら別な形から力を上げる事が出来ないか、と考えた結果が食事だ。

 人間だろうが動物だろうが食事の取り方で体型や、成長の仕方などちょっとは変化が起きる。まぁ、それが魔物相手にも効くかどうかは不明なのでこうして実験している。

 基本的に実験対象にしているのはオウカだ、まだ子供で成長期であるので最も効果がありそうだと思ったので協力してもらっている。

 効果がありそうな食材を実際に自分で調理する事で少しは食材に対する知識も増やしているつもりだ。


 前回食わせた飯は不評だったので今回は肉系にして挑戦中、肉の部位を替える事でどのような変化が起こるか調べてみよう。冬のせいか野菜系はあまりないが仕方ない。

 ついでに失敗作は俺かガイに食わせてる。最近のガイは毎日どっかのドラゴンに喧嘩を挑んでは負けての繰り返しなので気休め程度ではあるが飯を食わせて力を上げてやろうとしている。

 だって食事による変化は長期的に見るのが前提だし。

 後失敗作と言っても不味いとかではなく、オウカの口に合わなかっただけのレシピだ。ちょっと苦い程度だったがお姫様なオウカの口には合わなかった様だが他の皆は普通に食べてくれた。


 で、今日できた飯をガイに食わせてやるとしよう。今日はピリ辛の肉炒めだ。オウカは辛いのも食わない、完全に食わず嫌いだと俺は考えている。そのうち食わず嫌いも直さないといけないかな……

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