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敵情視察

「……リュウよ、本当にここでこうする事が必要だろうか?」

「出来るだけ周りと同じようにするのも大事なもんだよダハーカ。それに今日は勇者を応援しようと色んな国の人達もかなり来てるんだ。潜入にこれ程都合がいいタイミングも滅多にない」

「それは分かるが……」

 現在俺とダハーカはライトライトの城下町で勇者達と騎士達を見送る列の中に混じっていた。

 教会の騎士達の姿も少しは見れるだろうし、敵戦力を堂々と見れる絶好の機会だ。そこから騎士達の武具や数、騎士達自身の戦闘力がどれくらいのものか直接確認出来るいい日だ。

 もちろん入国はダハーカの転移で不法入国したので堂々と見た後、こっそりと帰るとしよう。


「しかしこれでは勇者達はただの見世物の様だ」

「仕方ないさ。市民に勇者の姿を見せる事で色々と利益を生むんだろうからな」

 大人しく周りの観客達と待っているとおっさんの声が聞こえた。


「旗~旗はいらんかね~旗~」

「リュウあれは何だ?」

「大方応援用の国旗を売ってる商人だろうよ。こういう時は書き入れ時だろうからな……おっちゃん!旗二つくれ!」

「毎度!」

「リュウ?」

 ダハーカはそんな旗いるかと顔に出しているが別にただの衝動買いじゃないさ。

 俺はわざと金を出すのに手間取るようにしながら会話を始める。


「なぁおっさん。勇者様達今回の戦いも無事に帰って来るかね?」

「さぁな。勝てるから行くんじゃないのか?」

「だって聖女様は魔物討伐の方に行っちまうんだろ?」

「そらゃちょいと違うぞあんちゃん。聖女様は後から合流するらしいからな、と言っても、ラエルに行った後でらしいが」

「ほ~、そりゃ安心だ。それに教会の屈強な騎士達も手伝ってくれるんだろ?」

 金を払い終わっても話は続ける。

 おっちゃんも旗を渡しながら話を止める事はない。


「そうらしいがちょいと不安だがね」

「何でだ?」

「教会の強い戦士達は規律規律と煩くってね、あまり勇者様達と良い空気が出来ていないらしい。そのせいで勇者様を支持してくれる若い騎士達ばかりになってしまったそうだ」

「そりゃ不安だな」

「若い教会の騎士は勇者様に憧れているからなのか人当たりは良かったがな。色々と街中で俺達の事を気に掛けてくれてたしよ。まぁそれと実力は別だから正直不安だがな。それじゃ毎度」

 おっちゃんは少し話した後また旗を持って商売のために人混みに紛れた。

 ちょっとした情報は手に入ったな。


「そのような話、周りの者に聞けば良いではないか」

「この後はな。まさか旗持って応援してる奴が敵対するとは思わないだろ。はい、これダハーカの分」

「……話はリュウに任せる」

 そうしてくれ、あとは周りの連中に話を聞けば問題ない。旗の購入はカモフラージュと仲間っぽい雰囲気を出すためだからな。


 実際騎士達が来るまでは周りの人達と話しまくった。

 同じように旗を持った人達を中心に話を聞くと中々に面白い話が聞けた。

 まず教会の騎士達の異動だ。最初の頃は教会の強い騎士達のみで編成して行くつもりだったらしいがティアが仲間同士の連携を重視したらしく、屈強な騎士達の部隊にはならなかったそうだ。ほぼ半分以上が入れ替わりティアを支持する者達が魔王討伐に参加し、支持しない者は魔物討伐に加わったらしい。

 おかげで屈強な騎士達はだいぶ減り、魔王討伐をする本拠地を建てる場所で直接会う騎士達に期待するしかないとか。

 ティアの奴大分思い切った事をしたな。恐らく俺に殺される事を見通しての事だろうが本当に魔王を倒せるのか?


 それからもう一つ、教会の事だ。

 どうやら最近の教会はかなり強引に物事を推し進めている様だ。しかも聞く限り教会の者に聞くと皆同じ言葉で返されると言う。「教皇様のご意志」だと。

 教皇はかなりの魔物嫌いだそうで何と驚く事に教会の騎士上がりだそうだ。大抵の教皇は皆教会の中で少しずつ地位を上げて来た者達だが、かの教皇は戦の成果と神への惜しみない祈りによって教皇に成り上がったのだ。


 この話をしてくれた爺さん曰くまだこの頃はまともな教皇だったらしい。

 騎士上がりなだけに民衆の現状をよく理解できていたし、魔物に対して騎士達が少な過ぎる事や、国を守るための新しい結界の開発など様々な問題に手を出してきたそうだ。結果、魔物用の魔術の発達、魔物との戦闘の際に気を付ける事を纏めた書籍、魔物の図鑑など様々な物を世に出しながら教皇の威厳と教会の地位を上げていった。

 しかしそれが終わると教皇は魔物に対して強く攻撃的になった。守りを強固にした後、騎士達の育成、武具の発達と戦うための発展に方針が変わった。ときにやり過ぎだと思われる事もしばしばあったらしいが確実に成果も上げていったので誰も言えなかったそうだ。

 そして現在、魔王を討伐するために動き出したという事だ。


「随分と壮絶な生涯だった様だ」

「ふん。そう言いながら潰すのだろう?その教皇の生涯を」

「そうなるかも」

 俺とその教皇の考えは真逆かもしれない。俺は魔物と仲良くする事で戦いを減らそうとしている。そしてその教皇は魔物を絶滅させる事で平和にしようとしている。


「真逆でも何でも結果は結果だ。勝った方が正しく見えるもんだろ。どんな動機だったとしてもな」

「勝者が正義とでも?」

「そこまでは言わない。でも勝って正義を掲げる方が人間は好きなもんさ」

「相変わらず人間は面倒な思考をしている」

「種族が違うが故のって奴だろ、それにそろそろ始まるぞ」

 城の方から大きなファンファーレが鳴り響く。

 その後国歌が鳴り響き多くの騎士達が姿を現す。鎧を着こみ、勇ましく行進する彼等を俺とダハーカは観察する。話を聞く限り最初に現れた騎士達が魔物討伐側らしいのでよく見ておく。

 確かに町の人達が言うように教会の旗を掲げる屈強な騎士達が多く混じっている。鎧も幾分か上等なものを着ている。

 それに比べてライトライトの騎士達は兜だけを脱ぎ、笑いながら手を振り返している。サービスなのかただの簡単な任務だと高を括っているのかは分からないがどちらにせよこの中に脅威と呼べる者は……


「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」」」

 え、何この歓声?ついその方向を向くと一人の女騎士が居た。

 綺麗な毛並みの白馬に乗った一人の女騎士だけは力量が違った。俺より弱いが周りの騎士に比べれば十分に強い。なる程、あれが聖女か。


 ティアと比べると聖属性の部分では聖女の方が上だな。剣の腕とかは対峙しないと分からないがおそらくそれもティアのより上、ただし魔力量はティアの方が上だ。この辺は職業の違いによって生まれた差と言った方が良いのか?はたまた年齢によってリードされていただけか。


「さて、帰るか」

「ん?勇者達は見なくていいのか?」

「魔王討伐はティア達に任せよう。それに俺が参加するとしたら多分魔王と直接対決してるところに殴り込みってとこだろ」

 そっと人混みから離れる。聖女だけであの人気、ティアが来たらそれこそパレードが終わるまでここから出られない。その前に抜け出す。

 小さな小道にそれて転移の準備をしようとした時、敵意ある存在が近付いて来る。


「リュウ」

「へぇ、敵さんもバカではなかったみたいだ」

 ちょうど俺達を挟むように現れた人間が四人、どこで買ったのか分からないローブを頭からすっぽりと被って言ってきた。


「貴様がリュウだな」

「だから何?なんの用だ」

「死んでもらう」

 四人の人間が殺しに来た。

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