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戦争の日にち

「これより会議を始める」

 昨日と同じ老竜が進行を務める。

 会議が進行しながらも情報収集はやめない、黒牙のギルドによってようやく人間の仲間を大量ゲットできたのだから人間同士からの情報を取り出すのは悪くない。


『リュウ、少しいいか』

『どうしたダハーカ』

 突然ダハーカから連絡がきた。例の武具について何か掴んだ様だ。


『例の武具を調べたがあの加護とやらは嘘のようだ。武具を解析した結果、この術式は使用者の魔力をエネルギーを元に覇気のようなものを発生するだけの粗悪品だ。下級魔術ぐらいは防げるだろうが数発食らえば簡単に壊れるだろうな』

 何その粗悪品、本当に下級騎士を騙してる様なもんじゃん。それなら普通に頑丈な鎧を着た方がいいんじゃね?


『その鎧の利点はなんだ』

『まずは量産性だろうな。鎧その物はどんな物であろうとも強度は変わらない、そして何度攻撃を受けても術式が壊れない限りは再利用できるのが利点か』

 量産と使い回しか。と言っても今回の大森林の魔物討伐では脅威とは言えないな。

 下級魔術数発で壊せる物なら素手で壊せるし何て事はない。


『あまり脅威とは言えないな』

『しかし下級の魔物から見れば脅威だ。おそらく相手は量で押し潰す気かもしれん』

『でも俺が出るなら問題ないな、他に面白そうな物はあったか?』

『ない。どれもこれも大した事のない武具ばかりだ。念のため剣の方も調べたが同じような代物だった。覇気のようなもので覆い、切れ味を上げているだけで追加効果のようなものは検出されない』

『なら帰ってきてくれダハーカ。いつ進撃してくるかは黒牙に任せよう』

『了解した』

 結局は大量生産の粗悪品か。本当に人間達は俺達を根絶やしにする気があるのか?それとも俺が警戒し過ぎた?はたまた向こうは俺達が何も気付かず奇襲なら旨く行くとでも思っているのか?

 …………それとも魔王討伐の方に力を注いだからこうなっただけか?

 不可解だな。


「リュウよ。お前の意見が聞きたい」

「ん?何です」

「リュウが以前言っていた魔物の国についてだ。今回の件で魔物達もいざという時のための国を希望している。リュウが言い始めた事なのだ、意見を聞きたい」

 ああ、その事か。

 確かに昨日ちらっと言ったが皆気にしてたんだ。


「希望してくれているのはありがたい話ですがかなり長期的な計画が必要ですよ。何せ俺には建築に関する知識はありませんし、何より土地もない。樹を切り倒すとしてもかなり時間がかかります」

「そこは問題ない。建築技術については龍皇様も協力を惜しまないと言っておられる。土地に関しては精霊王様も選定に協力してくださるそうだ」

「え、マジで?」

 つい龍皇と精霊王を見ると二人とも頷いていた。


「娘婿が国を持っていないと言うのは問題だからな」

「どうせ僕達も絡んでくるだろうし、なら最初っから係わっといた方が楽でしょ?」

「でもタイミングはどうする?夏ならともかく今は冬だぞ、工事に支障は出ないのか?」

「出るから春まで計画をきちんと纏めよう。冬場は皆色々と大変だからね」

「こちらも建築技術を持ったリザードマン達が冬眠中に無理やり起こす事はしたくない。なので実際に建国するのは春からになる。そちらの要望を聞いてからになるので丁度良いだろう」

 ……ノリノリだな。

 ま、家ぐらいは欲しいと思ってたがまさか建国となるとは思ってなかった。


「建国はともかく今は戦いについて考え」

「リュウ様、向こうの進行してくる日にちが発表されました。およそ十四日後です」

 コクガからの報告に会議場にいる全ての者に緊張が走った。


「具体的には」

「ライトライトとラエルにて同時に発表されましたが五日後、ライトライトからラエルに二日掛けて移動、その後一日休息をとり、五日かけて北側より大森林を迂回した後、一日がかりで陣を形成した後に侵攻するようです」

「勇者と聖女の動きはどうだ」

「勇者は同じく五日後に魔王領土へ侵攻します。具体的な日程は明かされていません。聖女は魔物討伐の士気を上げるため三日間は魔物討伐側と同行します。しかしその後は魔王討伐のためラエルより一人追いかけるようです」

「前から思ってたが随分と無駄があるな。最初っから勇者と同行させとけばいいのに。何で後から追いかけさせる」

 その疑問に多くのものが頷いた。これは誰の目から見ても無駄だ。

 コクガはそれとは違うところで首を傾げていた。


「前から?この情報は既に掴んでおいでだったのですか?」

「噂程度だよ。正直魔王討伐の方に行くとは思ってたがまさかこんな形になるとは思わなかった」

「そうでしたか。それともう一つお耳に入れて欲しい事が」

「何だ?」

 強くて有名な冒険者でも参戦してきたか?


「枢機卿の一人が今回の魔物討伐に参加するそうなのです。もちろん戦士としてではなく、あくまで騎士達を見るためらしいですが」

「枢機卿?なんで教会のお偉いさんが討伐に参加するんだ?」

「……リュウよ、枢機卿について説明を求める」

 老竜の人が聞いてきた。どうやら教会についてそんなに詳しくないらしい。アオイは当然知ってたようなのでアオイに説明してもらった。

 しかしなぜ枢機卿が居るのかが分からない。あの人達は重要な支部のところで仕事と布教に精を出しているはずだ。

 職業としてはかなり希少なクラスであるのは間違いないが戦闘というより防御、防衛といった方が得意な職業、決して侵攻に適した職業とは言えない。職業による力の補正は結界の強化及び祝福とか言う仲間を強化する付加術に似た術に特化していたはず。……進行中の危険を減らすためか?


「リュウ様、枢機卿に関してはどうしましょう?」

「……アオイ、この国に牢ってあるか?できれば殺さず捕虜として扱いたい」

「承知しました」

「龍皇も良いか?」

「仕方ない、何か考えがあっての事なのだろう」

「ああ、教会の動きを知りたい」

 何だか教会の動きがとても雑だ。その理由、そして誰がそうさせているのか聞きだしたい。

 もし主犯を見つけたらそいつをじっくり監視してやろう。


「リュウ様。そのような笑いは抑えてください。品がありません」

 おっと、顔に出してしまったようだ。

 でも元凶を見付けないといけないのは確かだ。何を考えてそんな行動を取ったのかは知らないが報復は受けてもらおう。


「なら今度は準備だな。守るために色々仕込みをしておかないと」

「正面から戦わないのか?」

「戦いませんよ。あちらも気付かなければ奇襲を掛けようとしていたんですからこちらも容赦なく、徹底的に殺します。それから準備に取り掛かりたいので少し会議を離れても構いませんか?」

「しょ、承知した」

「なら準備だ皆、色々面倒事もあるから手早くいくぞ」

 俺はアオイとコクガともう一人を連れて会議室を出た。

 それじゃ作戦会議をしようか。

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