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爺さん達にただいま

 こうして黒牙のギルドを俺の味方にした訳だが俺は龍皇国に行く前に少しだけ寄り道をしていた。

 寄り道の行き先は爺さんのところ、帰ってきた事を一番最初に伝えないといけない魔物ひとだ。

 リルの周りには子供達も居たので黒牙達は少しビビっていたがついては来てくれる。

 子供達の案内で着いた、少し広いだけの草原には様々な魔物達が身を寄せ合っている。

 途中他の魔物達が黒牙達を見て不思議そうにしていたが俺を見ると何となく察したようで特に何か言ってくることはない。

 そして草原の真ん中に爺さん達が居た。


「爺さんただいま」

『お帰りリュウ。今回は大変な事になったの』

「ああ、でも今回は俺がどうにかするよ。森に被害が出る前に全員潰す」

『心強いのぉ、してひ孫の顔はまだか?』

「まだだよ。全くそればっかり言ってくる」

 俺は平然と話しているが黒牙のメンバーは完全に委縮しきっていた。

 爺さんが大森林の中でも格上の存在だと何となく察した様だ。たまにビビッて攻撃する奴らがいるがそれに比べたらかなりマシだ。


『お祖父様、ただいま帰りました』

『おお、リルよ。また美しくなったな』

 リルは爺さんに甘える素振りをすると爺さんがリルを毛繕いをし始める。


『リュウ、お帰りなさい。初めに会いに来てくれて嬉しいわ』

「当たり前ですよ。一番世話になったのは爺さん達なんですから。それと親父さんと奥さんは?」

『森の見回りに行きました。しかしリルの遠吠えを聞いたのですぐに帰ってくるでしょう。そしてあなた、私にもリルを可愛がらせてください』

 そう言って婆ちゃんもリルの毛繕いに参加する。

 リルは久しぶりの家族の愛情にさらに甘えを見せる。

 オオカミは元々群れて暮らす種族だし、俺達が居てもどこか寂しい所があったのだろう。それに多分だがカリンが魔王に甘えているのを見て自分も家族に甘えたい気持ちが出ていたのかもしれないな。

 少しほっこりとしていると随分と焦った足音が聞こえた。

 これは絶対に親父さんだな、と思っていると予想通り親父さんが現れた。そのあとを追うように奥さんも姿を現す。


『リル!帰ったか!』

『あなた落ち着きなさい。また嫌がられますよ』

『し、しかしだな』

『お父様お母さまただいま戻りました』

 爺さんと婆ちゃんの毛繕いから離れ、今度は親父さんと奥さんに甘えを見せると、親父さんはめいいっぱい甘やかし始める。


『リルが!リルが久しぶりに私に甘えてくれたぞ!』

『ハイハイ良かったですね。リュウもお帰りなさい』

「ただいまです。こんな状況ですがお元気でしたか」

『ええ、人間がこの森に進行してくると精霊王から聞いた時は驚いたけど元気よ』

 そういって奥さんは俺の顔を一回だけなめた。

 奥さんも俺の事を息子のように扱ってくれるので何だか気恥ずかしい。


「リュウ様、この魔物達はいったい……」

「この魔物ひと達が俺に力をくれた魔物ひと達だ。あえて言うなら師匠の一人だ」

「魔物に教えをうたのですか……」

 ギルドマスターが代表するように言う。

 他のメンバーは自分達より大きい存在を見上げるだけで何も言わない。

 圧倒されている様だ。


『してリュウ、その人間はリュウの仲間か?』

「ついさっきな。前から顔見知りではあったんだが色々便利だし仲間にした」

『群れの仲間を増やす事も大事じゃが見極めを間違えてはなぬぞ。そこから群れが崩壊するやも知れぬ』

「分かった気を付ける」

 戦争間近の時に急に増やした仲間だ、すぐに信用は出来ないのは当然だし警戒はするさ。

 それとさっそく仕事を頼もうかな。


「それでは黒牙のギルドマスター、さっそく仕事を任してもいいか?」

「何でしょう」

「ライトライトとラエルに仲間は居るか?この森に進行してくる連中の情報を詳しく知りたい」

「承知しました。どちらの国にも仲間はおりますのでその者達に調査を依頼します」

「頼んだ。ところでその報酬はどうする?」

「ではまず我々を強くしていただきたい」

 いや、強くしろと言うけど別に魔物の名付けとは違うからそう簡単には上手くいかないぞ。

 その会話を聞いていた爺さんがのっそりと立ち上がる。


『では儂が鍛えてやるとしよう。リュウと同じ様に強くなりたいのならリュウと同じ事をすればよい』

「え、良いの?」

『最近森がこんな調子じゃから幼い者達が遊び足りないと言うものでな、そのついでじゃ』

「あ~あの地獄をこいつ等も体験するのか」

 地獄と言う単語に反応した黒牙メンバーはビクっと身体が動いた。

 あ、ギルドマスターだけは笑ってる。


「おーい!チビ共こーい!」

 遠くで遊んでいたチビ達が俺の声を聞いて歩って来た。

 チビ共は俺を見てワクワクしているように見える。きっと俺が遊んでくれると思っているがちょっと違うぞ。


「この人間達と鬼ごっこしてくれ、飽きるまでずっとしてていいぞ」

 そう言うとチビ共は大喜びで首根っこを咥えた。

 これは完全に新しいおもちゃを貰った子供の反応だな。


「あ、ごめんその人間だけは返して。この後そいつに用があるから」

 そう言うと素直にギルドマスターを返した。

 まだ若く、念話は出来ないが俺の言葉は理解できているので本当にこの子達は良い子だ。


「た、助けてくれよリュウ様!」

「鬼ごっこって走るんですか!?」

「まずは体力作りから、とにかく走れよ。その子達速いから」

 子供でまだ三メートルしかないがフェンリルの血のおかげか足が一番先に発達する。

 だから十分に足が速い。

 と言ってもまだ単純だから一直線に走ってくる事が多いけどな。


「マスター!助けてくれ!」

「さっきの恐怖がまた襲ってきます!」

「強くなれ、強くなれば何とでもなる」

「「「「マスター!」」」」

 悲痛な叫びを聞きながらマスターは俺に聞く。


「飽きるまでと言いましたがいつごろに飽きますかな?」

「さぁ?子供って遊んでるときは体力無尽蔵だから」

 マスターは彼らに向かって黙祷を開始した。

 そう言えばまだマスターの名前聞いてなかったな。


「あんた名前は?」

「こ、これは申し訳ありません。先に名乗るのが礼儀でした。私はコクガ、黒牙のギルドマスターのコクガでございます」

「コクガね。コクガは胆力に自信は?」

「リュウ様と出会うまでは自信がありましたが最近はありませんな」

「なら聞き方を変えよう。ドラゴンに会ってもビビらない自信はあるか?」

「……戦わずに済むのなら」

「ならいい。リルはどうする?」

『付いて行くに決まってるでしょ』

「なら背中に乗っけてくれ。コクガも居るからな」

 まだ名残惜しそうにしている爺さん達だが別に今回は旅に出る訳じゃない。

 ちょっとお隣さんに挨拶し行く感覚だ。

 リルの背中に乗ってから爺さん達に言う。


「できるだけ早く帰ります!」

 リルのダッシュと同時に言ったので聞こえたかは分からないがとにかく終わったらここに帰ろう。

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