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人間の仲間が増えた

「それではお世話になりました」

「また剣の事で何かあれば来るとよい」

「カリン……」

「魔王様我慢なさってください」

 次の日の朝、師匠だけではなく大森林に帰ると聞きつけた魔王もその場に居た。

 師匠は清々しく別れようとしているがこの母親は下手すれば共に来ようとしかねない。

 と言うか昨晩その事で盛大にもめた。

 カリンの顔を見れなくなるのは嫌だとカリンにしがみ付く始末、結局昨晩は親子仲良く寝る事で手を打った。

 魔王妹はそれをずっと呆れたように見ていたがどこか安心している様にも見えたのは何でだろう?


「ところでダハーカ、この人数を一度に転移出来るものなのか?」

「私にかかれば問題ない」

 十二人もの数を問題ないとかホント凄いなダハーカは。

 いまだに俺は自分の視界で分かる範囲でしか転移できないのに、しかも自分ひとり限定だし。


「しかし転移先は大森林の中心部でなくて良かったのか?私が封印されていた洞窟なら問題ないが」

「一応帰りながら森の状況を見たいから中間付近でいいよ」

 他の魔物達がちゃんと避難しているかも気になるし、冬眠している事で魔物達がどのぐらい減っているかも確認したい。

 でも教会に見つかるリスクは避けたいから浅い所はなしとなると中間付近がちょうどいい。


「大森林に行くのは初めてだな!」

「王子、はしゃがないで下さい。これから行く所は戦地となる所ですよ」

「しっかし楽しみだな!強い奴らがごろごろ居る森なんだろ!」

「獣人は居るのか?」

「……」

 王子達も楽しそうだ。

 象は基本喋らないからよく分かんないけど。


「準備できたぞ」

「ありがとダハーカ。それじゃ師匠!魔王!行ってきます!」

「元気に暴れて来い」

「カリン!今度は私の城に!」

 魔王が何か言いかけていたが途中で転移してしまった。

 魔王妹は頭を下げるだけだったが。


 こうして転移と言う形で帰ってきた俺達、久しぶりに帰ってきた大森林は冬のせいかあまり命の気配が少ない。

 でもどこか安心する匂いだけは変わらなかった。

 景色は少々寂しいと感じる部分もあるが冬が終わればまた前の景色に戻るのだろう。


「あ~故郷の匂いだ~」

「でも生き物の気配はそんなにしないねリルお姉ちゃん」

「冬場は大抵中心部にしか獲物はいないからね。美味しい鹿とかいるよ」

「私としてはリザードマン達が心配なのだ」

「彼らは変温のため冬は動けませんからね」

「うう、もっと厚着してくればよかった」

「ふむ、全員居るか」

「ここが大森林、強い気配があちこちからする」

「王子、中には我々では対処できない者も多くいます。勝手に行かないで下さい」

 皆好き勝手に言ってるな。

 それよりこの場所は変だ。

 とてもきれいな円になっているし、焚火の後もある。キャンプした後の様だ。


「ダハーカ、ここに人間が居た跡地だよな」

「ここに居た人間の気配はもうしない。ここに転移しても問題はない」

「アリス、ここに教会の騎士が居た痕跡の様な物ってあるか」

「えっと……違いますね。この焚火の跡は自力で熾したものの様ですし、もし教会の騎士なら魔術で火を点けるでしょうから多分違う人でしょう」

 焚火の跡からの推測が正しければ教会関連の者ではないみたいだ。

 てか初めてじゃないか?アリスが情報部らしい事をしたのは。


「なら無視して」

「「「ぎゃゃゃゃぁぁぁぁ!」」」

「…………」

「確実に人間の声だったな」

 ダハーカさん指摘しなくても大丈夫です。よく分かってます。

 しっかしこの時期に大森林に入るなんて自殺希望者か、はたまた調子に乗った冒険者か。


「大事な時期に面倒事も厄介だ。適当に助けて森から出て行ってもらおう」

「私も行くね。東の森なら私が一番詳しいから」

 リルもついて来てくれるのでその案に乗った。

 残りのメンバーには先に龍皇国に向かってもらう事にした。

 今回の拠点は龍皇国にさせてもらい、作戦会議などもそこで行う。

 龍皇には精霊王越しに伝えてもらったし大森林の危機とあって協力に全力を尽くしてくれるとまで言ってもらったのは嬉しい。

 そしてまずはいらない人間を追い返すか。


 とり会えず悲鳴が上がったと思われる場所に向かうとそこにはまだ子供のフェンリル達が人間を追いかけまわしていた。

 久しぶり見た子供達はすくすくと育っている様だ。

 しかも冬毛のせいか前よりだいぶ育ったように見える。


『あの子達も育ったね。今のは多分集団で狩りをする練習だと思うから殺しはしないと思うわ』

 リルがそう言う以上そうだと思うがあの人間達の顔どっかで見たんだよな……

 あ、人間の一人が魔術を使って子供達の目を遮った。

 超基礎魔術の砂を巻き上げるだけの魔術をいいタイミングで使うとは意外と腕が立つなあの人間達。

 あの人間達を見ているとある事に気が付いた、いや思い出したと言うべきか。あの人間達が来ている服に入っているマーク、あれ裏ギルドの『黒牙の狼』だ。

 まさか黒牙がフェンリルに襲われるとかシャレになってんだか、なってないんだか。


「今回は助けるぞリル。あの人間達は顔見知りだ」

『そうなの?なら助けてあげようか』

 そう言うとリルは遠吠えをした。

 その声に気が付いた子供達は動きを止めた後こちらに向かってくる。

 黒牙のメンバーは突然いなくなったフェンリル達を見送った後、へたり込んでいた。

 俺はそんなメンバー達に近付くと会話が聞こえてきた。


「あ、あの人本当にここで三か月生き残ったとか本当か!?」

「じ、実際に体験すると……疑わしいですね」

「全く、逃げるだけならどうとでもなっただろうに」

「「「「マスターも異常だ!」」」」

 あ~確かあの五人、黒牙の幹部とマスターだ。

 俺の話を真に受けて東の森で遠征とか言ってたがまさかこの時期に来てるとは。


「大体あの人の東の森ってのは食料の話でしょ!あんな魔物の事は聞いてないですって」

「どう見ても私達で遊んでましたしね。あれ……成体ですよね?」

「さあな。言えるのはだた一つ、俺達は森に深く入り過ぎちまったって事だけだ」

「マスター、腹減った」

「冬のせいで木の実もないからな、この森」

 あんな状態で休むとはダメだな、あのマスター以外は。

 マスターは気配を気にしてるが他の四人はただ休んでる。あれじゃ食われるぞ。


「ところでそこに居るのは誰だ?」

 マスターが俺に向かって声を掛けた。

 他四人は木に向かって話しかけている様に見えるのか不思議そうにしている。

 このぐらい分かれよ、俺気配殺してねぇぞ。

 俺は普通に歩いて五人の前に出た。

 すると五人は驚いた顔で俺を見ていた。


「リュウ殿、お久しぶりです」

「久しぶりだね黒牙のマスターさん。遠征中でしたか?」

「そうだったのですが我々にはまだ大森林ここはまだ早かったようです」

「それより早く逃げた方が良いですよ。大森林に魔物討伐の部隊が来るそうですから」

「もうそんな時期でしたか。あなたも随分と耳が早い、我々の耳でも最近分かった事なのですが」

 げ、マジか。

 裏ギルドが最近知ったとかちょっとやり過ぎたか?


「リュウ殿と今回の討伐は何か関係があるのですか」

「直接はありませんよ。ただ知ってると言うだけで」

「リュウ殿、我々を貴方の配下に組み入れてくださいませんか?」

「……は?」

 今何て言ったこいつ。

 配下に入れてくれだと?


「前回に会った際に我々は確信いたしました。貴方のもとに付く事でさらに力を手に入れる事が出来ると」

「ちょっと待て、本気か?」

「本気でございます。魔物の配下のみでは何かと不便もございましょう。そんな時でよろしいので我々をお使いください」

 確かに魔物だけでは不便な部分はある。

 今の所はゲンさんに頼っているから問題ないがその内ゲンさん以外の情報収集は必要になると感じてはいた。

 しかし急に言われても仲間達の事もあるし。


『良いんじゃない?必要なら』

 俺の後ろからリルが現れた。

 黒牙達は武器を手に取り警戒するが俺が手で制した。


「安心しろ、こいつは俺の従魔だ」

「何と、この巨大な狼が」

『リュウを通して情報は常に共有されてるし不満があったらすぐに反対だって言うよ』

『なら引き込んでいいんだな?早速今回の戦争のために』

『それじゃ私の方からアオイさんに言っておくね』

 こうしてリルとアオイは念話で会話を始める。

 なら俺がすることは。


「こき使うが良いのか?」

「構いません。その代わり力をいただければ」

「商談成立だな」

 黒牙のギルドマスターと握手して『黒牙の狼』は俺の配下に加わった。

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