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帰宅前

「そろそろかな」

 道場で座禅を組んでいた俺はぽつりと呟いた。

 精霊王に頼んでいた情報収集とゲンさんの情報によればそろそろ大森林に侵攻してくるだろう。

 ただ気になるのはティア達、魔王討伐組だが俺がタイガに召喚される事も予想しておかないといけない。

 すぐにこりゃダメだと逃げてくれるならいいがそうなる確率は低いだろう。


 しかも教会は俺の事を狙い始めた。

 これはゲンさんが教えてくれた情報だが俺の事を危険分子として排除する事が決まったらしい。

 こんな情報どっから引っ張り出したか聞いてみると企業秘密と言われてしまった。

 とにかく教会が俺を敵と言って殺しに来るのなら俺も彼らを殺そう。でも詳しい教会事情を知ってる奴は欲しいなぁ。


「何がそろそろ何ですか師匠?」

「いい加減その言い方は止めてくれないかガイ」

「しかしハガネ師匠の前でため口と言うのも……」

 あ、そこね。確かに師匠は上の者に対する礼儀を大事にしている。

 前にガイが俺と普通に話していると突然ガイが殴られた事が何度かあった。


「なら仕方ねぇか。それとさっきのそろそろは大森林に帰ろうって事」

「……戦争ですね」

「ああ戦争だ。俺は基本手を出されない限り俺も手を出そうとは思わない主義だが今回は仕方ない」

 あいつらは俺の仲間を殺そうとしている。

 ダハーカとの戦いの時に協力してくれた長老達も殺そうとしている。

 何て気に入らない事だ。俺達は人間に被害を出さずに生きていると言うのに。


 俺は立ち上がって師匠の下に行く。

 道場を出て大森林を守らないといけないし、戦争の最終調整もしないといけない。

 その前にきちんと師匠に言っておかないとな。

 師匠は道場で獅子、虎、象の三人を指導していた。


「師匠、ちょっといいですか?」

「何じゃい」

「そろそろ道場を出て守りを固めたいと思います」

「もうそんな時期じゃったか」

 師匠は中庭の木を見ながら言った。

 木に残っていた葉は完全に落ち、葉は一つも残っていない。

 俺が来たときはまだ葉は残っていた。


「いつ出るつもりじゃ?」

「明日の昼には」

「そうか……寂しくなるのう」

「なら師匠も来ます?」

「止めておく。儂も年じゃからな、いつ死んでもかしくない。死ぬならこの道場で死にたい」

 師匠は道場を見渡しながら言った。

 来たばかりの頃は酒瓶などで汚れていた道場だが俺達が暮らしている内に綺麗になった。

 なった、と言うよりは綺麗にしたのだがまあその辺はいいか。


「分かりました。でもたまには顔を出しますよ」

「そうしてくれ、最近騒がしいのも悪くないと思えるようになったのじゃからな」

 俺はそっと頭を下げて師匠から離れる。

 皆には念話で伝えたし後やる事は精霊王とゲンさんへの報告か。

 まずアリスを見つけてそこからゲンさんと情報交換しないと。


「おーいアリス。居るか?」

「どうしましたリュウさん?」

「お、居た居た。ゲンさんに明日大森林に戻るって言っておきたくってな」

「え、明日帰るんですか!?」

「帰るよ。だから連絡させてくれ」

「そうなるとお土産も今日の内に買っておかないと……」

 いつも通り座るアリスの肩にそっと手を置く。

 こうする事でアリス越しにゲンさんに連絡できるのだ。


『ゲンさーん。今いいか?』

『どうしたリュウ、こっちも戦闘準備で忙しいんだが』

 ゲンさんは途中でライトライトに帰ってティア達に加わり、魔王討伐の準備をしていた。

 他の情報は部下の人達に任せる事にしたらしい。


『俺明日の昼に帰るから、その事を一応伝えておこうと思ってな』

『……そっちも戦争準備か』

『まぁね。と言ってもこっちの場合はほとんど避難って感じなんだけどな』

『そう簡潔に言われるとそっち等は楽そうだな』

『ところがどっこい、知性ある魔物の数はそれなりに居るからな、龍皇国と精霊王の所じゃ足りなくってさマジで場所が足りないんだよ』

 一応全ての知性ある魔物を中心部に集める事には成功したがほとんどの者は野宿だ。

 獣型、フェンリルの爺さん達みたいなタイプはいいがほとんど人に近いタイプもいる以上どうしても溢れてしまう。

 人型に近いタイプの魔物を優先的に屋根のある場所に泊まれるようにしてはおいたがそろそろ国、いや町レベルでもいいから魔獣達の拠点的な場所を造る必要があるな。

 造る場所は龍皇や精霊王達と要相談になるな。


『建国まで視野に入れているのかリュウは』

『そんな大それた事じゃねぇよ。ただの拠点造りだよ』

『人間からすれば十分に脅威だが……』

『あくまで守るための拠点だ、人間をぶっ殺す気ならもっと良い所に建てるよ』

 冗談半分でそう言ったがゲンさんからは返事はなかった。


『とにかく教会にだけは見つからないようにしろよ。連中が本気を出せば人間一人ぐらいどうとでもなる』

『大丈夫だ。帰りはダハーカに頼んで転移で帰るから』

『……相変わらず普通じゃない』

『見付からないならこの方が良いだろ?それとそっちから話はあるか』

『特にない。ただライトライトの騎士達は』

『分かってる。そこはそこで対処してるさ』

 ライトライトの騎士達はちょっとした悪戯で先にリタイアしてもらおう。

 規模はちょっとじゃ済まないけど。


『なら特にない。無事に帰って来いよ』

『それはどっちかって言うと俺のセリフだ』

 そう言うとゲンさんは少しだけ笑って念話を切った。


「ありがとアリス」

「このぐらいならいいですよ。それよりお土産買ってこないと」

 そう言ってアリスは外に行ってしまった。

 次は精霊王か。


『そっちの準備はどうだ精霊王』

『避難してきた子達の事?そっちなら大丈夫だよ』

『そうじゃない、情報の事だ』

『ああ、そっち。そっちも問題ないよ。アンデットを相手にするって言うから火精霊達がいっぱいいるからね、むしろ情報はたくさん入って来てるよ』

『教会側の様子は』

『勇者の事をどうこうする気はないみたいだよ。むしろリュウの方が僕は心配だ』

『こっちも上手くやるさ』

 魔王討伐の方は問題ないみたいだな。

 ティアは俺と関係があるから魔王討伐に合わせて何か仕出かさないか一応危惧していたが大丈夫か。


『なら大森林の方は?』

『ラエルって国から進行する気みたいだね。リュウの予想通りに西から攻めてくる。精霊達はほとんどいないし思いっきりやっていいよ』

『ライトライトの騎士達との合流はいつ頃になる』

『馬で移動するみたいだから……多分二日かな』

『分かった。ちなみに聖女はいつまで付いてくるつもりだ?』

『ラエルの騎士達と合流してからだね。その後魔王討伐に向かうみたい』

『了解、それじゃ後は帰ってから直接話し合おう』

『……ティターニアは君の事が苦手みたいだからあまり突っかからないでね』

 そう言って念話は切れた。

 あまり俺の予想は外れてないみたいでよかった。


『リュウ、そろそろ始まるんだね』

 リルが狼の姿のまま俺の膝の上に寝転がった。

 リルの頭を優しく撫でながら会話を続ける。


「始まるよ、戦いが」

『こんな大規模な狩りは初めて』

「と言っても最初の一発はダハーカに任せるけどな」

『全員リュウが切り刻めば良いのに』

「そんなことをしたら数人取り逃がす事になるだろうからな」

 まぁ今の俺ならロウで切り刻む事が出来るだろうけどできるだけ取り残しはしたくないんだよ。

 そのための一手だし、ティアの頼みを叶えるなら初手はダハーカに任せた方が良い。


「それじゃ明日帰って爺さん達にいっぱい元気なとこを見せておかないとな」

『そうね。群れの皆に会うのも楽しみ』

 それじゃ、帰った後は楽しく過ごしますか。

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