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side 勇者 フルパーティー

「よう、ティア!剣の調子はいいか?」

「待ってましたよリューズさん」

 この日、ようやくリューズさんが帰ってきた。

 リューズさんは私専属の鍛冶師であり、同時にハンマーで魔物を倒すパワーアタッカーでもある。


「今回はどこまで行ってたんですか?」

「北東の火山地帯だ。あそこにはレアな鉱石の採掘ポイントがあってな、いい鉱石が手に入った」

 おそらく後ろの袋の中にその採掘した鉱石が入っているのだろう。

 リューズさんは今度はどんな武器を作るのか不安しかない。

 腕は確かなのだが思い付き半分で癖の強い剣や槍を作るのだけは止めて欲しい。

 火山地帯となると火属性の鉱石になるだと思う。


「で?アンデットの魔王に戦いを挑むってのは本当か?」

「はい。教皇様からの命令でして」

「無茶な事言いやがんなあのジジイ、戦う側になってみやがれ」

「なので一般の騎士達の」

「分かってる。武器の手入れと火属性の付与ってとこか?全員に行き渡らせるのは無理だから誰に持たせるかはそっちで決めな」

「ありがとうございます」

 この事を想定して火山地帯に行った訳ではないだろうが火属性を付与できる鉱石を持ってきてくれたのは運が良かった。

 アンデットの弱点は聖属性の他に火属性が弱い、聖水でも効果はあるが聖水は水属性によって生成出来る物ではないので量産が難しい。

 そうなると火属性を付与した武器で戦うのが最も効率がいい。


「我々も火属性を中心にサポートさせていただきます」

「ありがとうございます。ローゼンさん」

 魔術師団長のローゼンさんは男性だ。

 かなり中性的な顔立ちでよく女性と勘違いされるのが悩み。

 タイガと私の攻撃魔術の先生でもあり信頼している。


「しかし参りましたね。まさかこの年で魔王退治に行く事になるとは」

「奥さん心配してませんでしたか?」

「心配されました。こうなる前にさっさと魔術師団長を辞めて、魔術の講師にでもなっておくんでした」

 大きなため息を出すローゼンさんにはまだ幼いお子さんが居るそうなのであまり危険な事はしたくないと言っていた。


「流石に教皇様の言葉を無視する訳にもいきませんからね」

「そうなんですよね……無視したら確実に嫌がらせをしてくるでしょう」

 教会の影響力はとても大きい、その信者だけでもあちこちの国に居るのだから何かあればすぐに動ける。

 しかも教皇直属の暗殺部隊が存在すると言う噂もあるぐらいなので気を付けないと生きてはいけない。


「それではこちらに来てください。皆で会議を行います」

 そう言った後私達は騎士団の会議室に集まり相談となる。

 メンバーは『勇者』の私ティア、『賢者』タイガ、『騎士』グラン、『僧侶』マリアさん、『聖女』ヒカリ、『鍛冶師』リューズさん、『魔術師』ローゼンさん、ここには居ないけど『暗殺者』ゲンさんが私達のフルパーティーだ。

 ゲンさんは情報収集で忙しいのでこの場には居ないが連絡用の水晶を配置する事でゲンさんにも会議に参加してもらう。


「まずはゲンさんから報告をお願いします」

『まぁ何て言うか色々情報があり過ぎてそう言われると困んだがとりあえず魔王に関する情報から行くぞ。現在のところ魔王に目立った動きはなし、部下の話によればアンデットを増やす事も無くむしろ大人しくしている』

「戦力を蓄えてるという事はありませんか?」

『それっぽい動きもなしだローゼン。あの国に近付く存在も居ないしな』

 やはり魔王関連の情報は手に入りずらいみたい。

 アンデットの魔王は自国を弱いアイアンデットに護らせておいて強力なアンデットは側近としてそばに置いているとも聞いている。あくまで噂から出ないレベルの話だが。


「他の情報は?」

『教会がまた妙な動きをしてやがる。何でも異端者狩りだとさ』

「異端者?教会に属する誰かが何かしたの?」

『信者ではないみたいだが誰を狙っているかは不明だ。とにかくその人を探しているってだけだな、今は』

 これも気になるが今はどうしようもない問題だ。

 魔王討伐にこれから行くのに一般市民を護る余裕はない。


『あとは軍事関連だがそれはそっちに届いているだろ?』

「届いています。しかしラエルも随分と思い切りましたね」

『二万と言う数字は確かに脅威だ。魔物討伐の中でも最も大掛かりな作戦だよ』

 ゲンさんは呆れたように言う。

 その二万と言う数字に平然と立ち向かい、しかもそれを喜ぶ幼馴染の顔が思い浮かぶ。

 リュウの周りにいるリルさん達も参加するとなるとこちらに勝ち目はないだろう。


「しかし残念ですね、ライトライトから二千五百人の騎士が向かう事になったのは」

『それに関しては国の事情も含んでくるからどうしようもなかった。すまん』

「仕方ないですよ、これは国王が決めた事なんですから。では次に魔王討伐の準備ですがリューズさん武器への付与はどのぐらいできそうですか?」

「魔王討伐までにとなると千個が限界だな。しかもこれは武器限定での話であって鎧とかに付与する余裕はない」

「分かりました。では各隊長達の武器を優先的に行ってください。教会の騎士達の分はしなくていいそうです」

 資料を見ながら言った。

 資料では教会の騎士達は教会側で聖属性の付与を行うらしいのでこちらでの援助は必要ないらしい。


「全く、連中ときたら金と権力だけはあるから気に入らねぇんだ」

「私から一つお話があります。今回は士気を高めるため途中までは大森林組と共にいますが合流するにはおよそ一日空きますのでご容赦ください」

「それは聞いてる、本格的に攻め入るのは少し時間を置くので普通に来て良いよ」

 大森林を攻撃する際に士気を上げるためにヒカリが選ばれた。

 普段は私が行っている事だが仕方がないのでヒカリに任せる。


「それでは会議一回目はこれで終了となります。皆さん生き残りましょう」

「「「はい!」」」

 こうして会議は終了した。


「ティア、ちょっといいかな」

 会議が終了してからタイガが声をかけてきた。


「どうかした?」

「これ、リュウから予備として貰った分をティアに渡しておこうと思って」

 そう言ってタイガは一枚の羊皮紙を私に渡した。

 羊皮紙には複雑な魔術が書かれてあり解読は出来ない。


「リュウから貰ったって言ったけどこれ何の魔方陣?」

「転移用の魔方陣だって。魔力を込めれば召喚出来るらしいけど一度っきりだって言ってたから気を付けてね」

「……いいの?これは予備だって」

「もしも僕が呼べない状態になってる可能性も考慮しないと。だから信頼できるティアに渡しておく」

「……分かった。これは切り札として持っておく」

 私は羊皮紙を懐にしまった。

 正直最初から召喚しておいて一緒に戦いたいけどリュウにも事情がある。そう簡単に呼べない。


「それじゃ僕は行くね。ティアも無茶しちゃダメだよ」

 そう言ってタイガは会議室を出て行った。

 それじゃ無茶にならない程度に頑張らないとね、一人でも生き残るために。

そろそろ本編に戻ります

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >アンデット →アンデッド 前から気付いてはいたけど、連呼されると流石に気になるw
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