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王子の頼み

 王子が来ているのは気が付いていたので待っていたらこの間より少し増えた。

 王子に狐秘書、その後ろに獅子と虎と象の獣人が居た。

 少しまだ王子は俺にビビっている感じはあったが前に出て聞いてくる。


「こ、この間ぶりだな人間」

「何だよ、またリルをってか?諦めろ。手放すつもりはない」

「そうではなく今日は人間に聞きに来た」

 俺?俺に何の用だってんだ。

 隣には魔王がまだ居るがおそらく聞かれても問題のない話なんだろう。


「で、何を聞きたいって?」

「その人間とは思えない強さについてだ」

「…………またかよ。何でこうも俺の事を異常児みたいな言い方する連中が多いんだ?」

「十分おかしいだろ!魔王の一撃に耐え、魔王候補に大怪我を負わせた存在が普通な訳がない!」

 まぁそう言われると確かに。

 でもそうしないと生き残れなかったからな。


「だから聞きたいのだ。その力の秘密を」

 その目は真剣なものだった。

 おそらく何かの覚悟を持ってここに来たんだろう。

 でも大した理由はないんだよな……


「力の秘密と言うが大した事はしてないぞ。ただ俺の周りに居る奴を護るため、これだけだ」

「そ、そうなのか?いや、それだけではないだろ!」

「まぁ確かに他にも目的があって力を求めているのもある。でもさっき言ったのとほとんど一緒だ」

「な、なら何か特別な修業を」

「それも分からん。まず普通が分からないからな。あ、でも師匠達は特別な存在達だったか」

「では紹介してほしい!俺も力を手に入れたいのだ‼」

 その目は真剣そのもの、なら頼んでみるか。


「アオイー居るかー?」

「どうしましたかリュウ様」

「こいつに修業つけてやって。強くなりたいんだと」

「承知しました。では王子、こちらへ」

「……へ、この方がリュウの師匠か?」

「そうだよ。この人が俺の師匠の一人でティアマトって言えば分かるか?」

 すると獣人達は身体を震わせた。

 流石に名前は知っている様だ。


「おいリュウ、こっちの修業を始めるぞ」

「はいよ、師匠。じゃ、頑張ってねアオイはスパルタだから」

「え、ちょ!」

 とそんな感じでまた師匠と中庭で修業している時に道場から王子の悲鳴が加わった。

 全く情けないな~龍皇国ではドラゴン状態だったからもっとキツかったてのに、人型なだけまだ優しいんだぞ。

 そう思いながら師匠と試合を続けていると狐秘書が俺に言ってきた。


「王子は強くなれるでしょうか?」

「さぁね。それこそ本人次第でしょ」

「ほれ無駄口をたたくな」

「ほーい」

 師匠の動きは大分覚えてきた。

 と言っても刀を使った修業はまだだから何とも言えないけど。

 その後狐秘書とお仲間は王子の修業を見守っていた。

 大分大きな音が聞こえていたが道場壊してないよな?


「それでは今日はここまで」

「ありがとうござました」

 いつも通り礼で終わり、道場に戻るとそこには倒れた王子が居た。

 俺も最初はあんな感じだったな~


「……リュウ、お前…どのぐらいこの修業を?」

「えっと確か五日ぐらいだったけ?」

「リュウ様の場合は基礎が出来ていたからですよ。しかし王子殿は基礎も出来ていないのでもうしばらくかかると思われます」

「そっか。で、今日は帰んのか?」

「そ、それについて相談が……」

「それは私から言います。王子は休んでいてください」

 狐秘書が言うと王子は動かなくなった、どうやら疲労で寝たようだ。

 そんで相談とは?

 すると狐秘書と獣人達は俺の前で膝を付いて言った。


「どうか我々をリュウ様のお側に居させてください」

「……は?」

 そりゃどう言う事だ?

 こいつは魔王候補で誰かの下に就くような奴じゃないだろ。

 しかも何で俺?

 話が話なだけ周りの皆も近くに寄ってきた。

 特にアオイとダハーカは真剣な表情で。


「えっと理由は?」

「理由は王子が貴方の元で強くなりたいと願ったからです。我々四人はそのお供、王子の成長を願い馳せ参じました」

「何だって俺何だよ」

「王子は初めて敗北を知りました。そして王子は初めて誰かの元で修業をしたいと言ったのです。普段はあまり素行の良いとは言えない王子ですが今回だけは本気なのです。国王様からも許可をいただきました」

「待て待て待て。それって国ぐるみで俺に王子を預けようとしてるって事か?正直困るよ。ちょっと大規模な戦争の影があるし、しかもその戦争に参加する予定なんだぞ。その戦争が終わった後じゃダメ?」

 いつ教会が動き出してもいいように弱い種族は既に中心部に移動してもらっている。

 もちろん精霊王の国や龍皇国に協力してもらってだ。

 一応全滅する予定ではあるが強者が漏れて森に侵入する可能性はある、その状況で新しい仲間を迎え入れるのはちょっと……


「ではその戦争で戦果を挙げて見せましょう。我々は戦闘に優れた種族です」

「こき使ってくれていいぜ旦那!」

「大将のためにあんたの元に就かせてもらう」

「防御でしたら自信があります」

 狐秘書だけではなく獅子、虎、象の三人まで乗り気だ。

 どうすっかな?


「リュウ様、リュウ様の計画でしたら連れて行っても問題ないのでは?これはリュウ様を魔王にするための儀式と言っても構いません。それに獣王国に今後いい関係を結べます」

「リュウの計画通りに進めるとすればこいつらに出番はない。修業を付けると言う意味では問題ないだろう」

 アオイとダハーカは問題ないと言うが一つだけ不備がある。

 それは王子こいつ自ら言ってない事だ。

 それだけはさせないと。


「……嫌だ。そんな重要な事は王子の口から言われないとダメだ」

 わざと子供っぽく顔を背けると狐秘書が慌てて王子を叩き起こす。

 王子は狐秘書から事情を聞くと他の四人の前に立って膝を付き俺に言った。


「どうか俺、いや私に力を下さい」

「王子が言うなら仕方ない。でも眷属にはしなくていいんだよな?」

「はい。いずれ国に帰り、王とならなくてはいけませんので」

「そうか。ところでお前達に名前はあるのか?」

 普通にちょっと思っていた事こいつらに名前ってあるのか?


「あるのは俺と狐だけです。名前はガイです」

「タマです」

 タマって安易すぎやしねぇか?

 他は名無しか、これは納得。


「なら他の三人を呼ぶときはどう呼んでんだ?」

「基本的には獅子とか虎とか象などと呼んでいます」

「なら俺もそう呼ばせてもらうがいいか?」

「「「は」」」

 返事はよろしい。


 となると今すべき事はこいつらの育成と戦争準備か。

 戦争準備と言っても知性のある魔物達を安全な中心部に集めるのが主だが出来るだけ被害を減らすのも大事な事だ。

 教会が攻めてくるのは秋が終わった頃らしい。


 あくまで精霊王から仕入れた情報だが、秋は大森林の魔物が冬眠に備えて食物連鎖が激しくなっているのでこれを避けるとか。

 魔物狩りで魔物が居ない時期を狙うと言うのは矛盾している気しかしないがおそらく目標は中心部と言う事なのだろう。

 そして知性の高い魔物は冬眠をしない。

 冬場を凌ぐ方法は種族によってまちまちだがほとんどの魔物は冬場でも狩りをしたり、秋の時に集めておいた食料を少しずつ食う魔物もいる。

 つまり教会の目的は知性の高い魔物を狩ること、全く人間至上主義にも困ったもんだ。


 一応こう言った事はゲンさんにも確認を取りたいが今は控えている。

 アリスによると今ゲンさんは教会からの依頼で情報収集に忙しいらしい。

 適した侵攻ルート、魔物が存在する場所など教会に言われて調べまわっているとアリスが言っていた。

 しかも教会の監視付きらしく俺から話しかけるとゲンさんが危険な状況に陥る可能性も高いのでそう簡単に話は出来ない。


 ただゲンさんが教えてくれた少ない情報の中に気になるものが存在した。

 それはティア達の不在だ。

 大規模な魔物の殲滅戦であると言うのに勇者が存在しないのは今までの傾向からしておかしいと思う。

 勇者ティアが今のように確実な支持を得られているのは魔物退治で少しずつ支持を得てきたからだ。

 まだ町に居た頃の話になるが始めはティアの事を勇者であると信じていない国の方が多かった、しかし教会が正式に認めた事と、国での魔物の殲滅戦で確実に戦果を挙げていったのが大きいらしい。

 その勇者ティアが参加しない殲滅戦は初だとも聞いた。


 しかしその代わりなのか聖女が参加するらしい。

 精霊王がくれた情報の中に聖女に関する情報もあったが聖女自身はティアに付いて行きたかったとか。

 聖女は精霊を所持しているのでその精霊に直接話を聞いたらしいがどうやら彼女はレズらしい。

 正直聞いた時はは?と思ったがどうも真実らしい。

 つまり聖女はティアを特別な意味で好きだとか。

 で、そこからさらにヤバい情報が来た。


 ティア達はとある魔王の討伐に向かったらしい。


 相手は『不死者アンデット』の魔王らしい、確か名前はピリオド。

 名はカリンの母親から聞いたがどうやらこいつかなり厄介らしい。

 元々は俺同様人間だったらしいが死んだ後アンデットとして復活、元々強力な魔術師だった彼は長い年月をかけて魔王に至ったとか。

 そんな彼が得意なのは精神操作と死術系で、片っ端から墓に眠っていた強い剣士や魔術師を叩き起こしては仲間にしていったことで強力な軍勢を手に入れているとも聞いている。


 正直ティアがヤバい。

 ろくに『覚醒』も使いこなせていないティアが勝てるとは思えない。

 おそらくタイガに渡した羊皮紙を使う場面は必ず現れる、その前に戦争を終わらせておくか、もしくはそれより遅く教会が攻めてくるのを願うしかない。


「どうせ一緒に来るか」

「は?」

「いや、何でもねぇよガイ。それじゃここで力を溜めたのち即戦争だ。気、引き締めて来いよ」

「「「「「は!」」」」」

 ガイ達に言った後リル達に向かう。

 その顔は凛々しく頼もしい。


「リル達もよろしく頼む。今回は戦ってもらう事になる可能性が高い」

「森のためでもあるんでしょ?なら当然」

「私達のお家だもんね、パパ」

「私にも戦う機会はあるのだろうか?」

「役目はあるとリュウ様は仰っていましたよオウカ様」

「さて、私も禁術の用意をしておくか」

「私も情報の方でお手伝いします!」

 リル、カリン、オウカ、アオイ、ダハーカ、アリス達もやる気だ。


「それじゃいっちょやりますか」

次回からしばらく閑話が続きます。

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