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極東到着

 極東に着いた時は既に夜中だった。

 魔王の縄張りに侵入しない様に街路樹は曲がりくねっていたし、山岳地帯でもある様だったのでかなり坂などのアップダウンも激しかった。

 しかし鳥達の視線は変わらず付いて来るし、獣も一部極東の門にかかるまでずっと追いかけてきていた。

 で、ようやく門まで着いたが……


「申し訳ありませんが朝までお待ちください」

 との事。

 獣や魔物対策として夕方までしかこの門は開いていないらしい、だからこのルールを知っている人達は朝に着く様にしているとか。

 しかしこの対応も慣れているのか、門番さん達は一つの小屋を貸してくれた。

 その小屋は明らかに雨風を凌ぐだけの造りになっているが一晩だけならいいかと皆でその晩は小屋に泊まった。

 しかしその分門は朝早く開くらしいので明日は早く起きる事にした。


 そんで次の日。

 門が開く音で起きた俺は皆、と言うかアリスを起こした。

 特に顔を洗う設備もないので起きてすぐ門に向かう。

 すると昨日と同じ門番さんが居た。


「おはようございます」

「おはよう。今日は通っていいんだよな?」

「はい。しかしその前にこちらに署名をお願いします。そちらの魔物の方達も」

「え、リル達も?」

「はい。こちらには魔王様の領域に近いので知性の高い魔物の方も大勢います。ですので魔物の方にも署名が必要なのです」

 まさか魔王の領域に近いからと言って人間と魔物が共存している国があったとは知らなかった。

 そしてリル達も名前と種族を書いていった。

 魔物の場合は種族も書く必要があるとか。

 それで皆も書いていった訳だがやっぱりと言うかかなり驚かれていた。

 何故か特にカリンの種族を見て。


「ご署名ありがとうございました。それではお入りください」

 理由は言わないし、少し表情に出ていただけなので指摘のしようもなかったがとりあえず入国は出来た。

 そこには異国情緒あふれる国だった。

 服は上から着るタイプではなくこう、後ろから羽織るような服だし、ズボンも紐と言うより布で結んでいる様な服ばかり。

 とりあえずドワーフ金貨をすぐそこの換金所でこの国の金に換えさせてもらった。

 それなりの量を換えたので時間が少し掛かったがこれでこの国である程度は大丈夫だろう。


「おいそこの外人‼うちで飯でも食わないか!」

「そこの魔物のお嬢ちゃんもこの国の着物着てみないかい!」

「うちの宿は良い宿だよ!泊まっていかないかい!」

 すぐに商店街なのか活気の良い商人達が俺達に声をかける。

 包丁を持ったおっさんが飯を、この国の服なのか着物と言う服を勧めるおばさん、小太りなメガネをかけたおっさんが自分の宿を勧める。

 俺達の格好はかなり珍しいのかすぐに外国人と見抜いたし、まずはこの国の飯でも食うか。

 うろうろとしながら飯屋を流し見るとここでは米と言う穀物の方が主食として一般的な様だ。


「皆はどこがいい?」

「お肉はなさそうね」

「国では見ない魚ばっかりなのだ」

「オウカ様、これは海の魚ですよ」

「これが海の魚?」

 俺も初めて見る海の魚にオウカは興味を持ったようだ。

 そして俺達は一つの定食屋に目を付けた。

 しかもそこを推薦したのは珍しくダハーカだった。


「ここの飯って美味いのか?」

「……おそらく」

「おそらくって食った事があるから来たんじゃないのか?」

「同族の気配がする」

 確かにこの奥からはドラゴンの気配はするがそれだけで入って大丈夫なのか?


「お腹も空きましたしここにしません?この匂いは美味しい気がしますし」

 アリスが言う匂いは確かに美味そうだ。

 恐らく海の匂いなのか少ししょっぱい匂いがする。

 全員腹も減っていたし結局この店に入った。


「いらっしゃい!七名様だねって外人さんか。しかも同族が三人も」

「店主、美味いのを頼む」

「あいよ。なら旬の魚でいいか」

 ダハーカが言うと人間の店員が座敷と言う団体用の場所に通してくれた。

 そこで大人しくしていると料理が来た。

 米と言われる穀物と塩の匂いがする魚、小さな野菜と茶色いスープが一つのものを俺達の前に置いていく。


「一応外人さんだから説明させてもらう。その白いのが米で魚はサンマ、そして漬物と味噌汁だ。食う時はそこの箸を使ってくれ。あいにくフォークもナイフもないんでな。それじゃ」

 そう言って店員は厨房にでも戻ってしまった。

 いや、いきなり箸を使えと言われても困る。

 まず使い方を知らん。


「皆様、箸とはこう使うものです」

 そう言ってアオイが見せてくれた。

 二本の箸を持ち、上下させるがこれ以外と難しそうだな。

 実際見様見真似で箸を使うリル達もどこかぎこちない。

 ただ一人だけ違うのはカリンだった。

 何故か自然と使い、上品に食べている。


「カリン、お前箸使うの上手だな」

「うん。なんでだろ?」

 そう言ってまた米を口に運ぶカリンにリルとオウカも負けじと箸で上品に食べようとするが中々上手くいかない。

 俺も慣れない箸に苦戦しながら食ったが味は良かった分、何故か悔しい。

 代金を払い店を出ると次に服屋に向かった先程声をかけてきたおばちゃんの所だ。


「おや外人さんありがとね。うちの店を選んでくれて」

「とりあえずここにいる全員に合う服を頼む。詳しくは分からないからそっちの目利きでいい」

「なら私が選んであげる。お嬢ちゃん達は私に付いてきな、男はそっちだよ」

 言われた通りに男用の着物がある場所で俺とダハーカは服をいくつか試着した。


「リュウよ私に服はいらん」

「いつもの格好じゃ悪目立ちするから仕方ないだろ。それにダハーカは着物似あってるじゃん」

「いやリュウの方が似合っているだろ。ここの住人は黒目黒髪の様だからな」

 まあ確かに馴染んでいるって意味では俺の方かも知れないがダハーカの方がかっこいいと思うけどな。

 赤目白髪は確かに目立つがその代わりこの黒い浴衣ではダハーカの方が映えると思う。

 ちなみに俺は黒いトンボの浴衣でダハーカは若竹の浴衣だ。


「しっかしリル達は遅いな」

「女と言う生物はこういった事に時間をよく使うらしい」

「そうなんだよな。ま、それも男の宿命って奴なのかね」

 すでに金を払い外で待つ俺達、するとようやく店から出て来た。


「皆様綺麗に着付けさせていただきましたよ」

 そう言って後ろから出て来たリル達はとても綺麗だった。

 リルは黒の撫子、リルの長い髪の毛と相まってより女性らしさが出ている。

 オウカはシンプルなピンクで子供らしい愛らしさが出ている。

 アオイは紫の桔梗、何て言うか大人らしい色気と言うか何故か直視しにくい。

 最後に出て来たのはカリンだがこれがまた見事に美しくなっていた。

 オレンジ色の生地に煌びやかな鳥の刺繍がされた派手な服を着ていた。

 おそらくカリンの様な女性にしか着こなせないであろう服を見事に着こなしている。


「う~ん。こりゃ今日からカリンにはこっちの服でいてもらいたいな」

「あ、ありがとパパ」

 そう言うとリルとオウカが「また負けたー!」と言っている。

 そしてアリスはダハーカに慰めてもらっていた。

 アリスは何故か薄柄の地味な服だった。


「それとおばちゃん、聞きたい事があるんだけど」

「ん、何だい?私が答えられる事なら何でも言いな」

「ハガネって鍛冶師を探してきたんだが居場所知ってる?」

「ハガネってあの妖刀のハガネかい?」

 あれ?なんか不穏な空気が出て来た。


「刀が欲しいなら他の鍛冶師を紹介してやるから止めときな」

「どうやら訳ありと言うのは本当の様だな」

 ダハーカも何か勘付いている。

 しかも妖刀となるそりゃ訳なしな訳無いな。

 渋るおばちゃんを説得してどこにハガネと言う人の居場所を聞き出すのに時間が掛かった。

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