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宣言

 今回の事故によって俺の刀は俺専用である事が判明した。

 よくよく考えてみたら当然の結果だったのかもしれない。

 龍皇国でも相手を選ぶと言っていたし、その素材を使った武器ならば当然相手を選ぶのは当然だったのだろう。

 グランさんには悪いが今回その事が判明してよかった。


 いい汗をかいた後、フォールクラウンに帰った。

 ティア達は午後の修業でかなりやる気を出していた。

 どうやらあれが俺の本気ではない事を知り、せめて死なない様にと猛特訓を開始、リル達もティアの特訓に付き添い、少しずつだが動きもよくなっている。


 ティアはさっきの俺の動きを見て気配で察する事に集中するようになった。

 恐らくダハーカとの一戦をきちんとは見えていなかったんじゃないだろうか。

 その速度で間合いを詰めれば俺の勝ち、見えてすらいないティアは当然敗北する。

 そうならない様にティアはリルを必死に気配で追いかける。


 タイガの体力も大分上がった。

 前はひーひー言いながら走っていたが今は少し休めばすぐに立ち上がれるようになった。

 体力の他に魔力量も上がっているし今なら上位魔術二発分はあるんじゃないか?


 マリアさんのオーラの同調も上手くいっている。

 俺がとんでもない事をするたびに根性が付いたのか、今では大した事がない限りは話しながらでも問題ない。

 ただ動じなくなり過ぎた気もするがそこはご愛敬だろう。


 グランさんはさっきの魔力欠乏症で何故か力を一点に集める技術を手に入れていた。

 何でも吸われるときに感じたやり方で力を集めるようになったらしい。

 世の中何が功を呼ぶか分からないものだ。


 そして修業が終わり、俺は部屋でロウと蒼流の手入れをしていた。

 この二本からは意思の様なものを感じる。

 どちらも普段は微かに感じる程度だが戦闘となると強く感じる事が多い。

 何と言うか武器としての本能というか、とにかく何でも斬ってやる的な感情がたまにある。


 ロウは落ち着いていて俺の意思次第でどうにでもなりそうだが、蒼流は俺が敵と決めたものは何でも斬るという意志が強い。

 これは何だ?

 爺さんとアオイの意思でも混じってるのか?


 そうなると素材になったご本人たちに聞いた方が手っ取り早いか?

 でもアオイはともかく爺さんは森に居るしな……

 仕方がないしアオイにだけでも聞いてみるか。


「おーい、アオイ居るか?」

「何でしょうリュウ様」

「アオイの爪で作ってもらった刀の事だがこれにお前の意思って混じってたりする?」

「……?確認させていただいてもよろしいですか?」

「いいよ。でも気を付けてな」

 そう言って渡した。

 アオイは普通に持って刀を軽く抜いたがグランさんの様にはならない。

 少し刃を見て鞘に戻すとアオイは言った。


「確かに意思の様なものを感じますがこれは私の意思ではありません」

「やっぱり」

「おそらくこの意思はこの刀の意思でしょう。素材に私の爪を使っているのでリュウ様は私の意思が混じったとお考えになったようですがこれは違います」

「じゃあやっぱり刀の意思か」

 でもどっかアオイに似た気配がするんだよな。

 やっぱり素材がアオイの爪だからか。


「ありがとアオイ、助かった」

「いえ、このぐらいなんでもありません。ちなみにリュウ様はその刀の事をどう思っていらっしゃいますか?」

「どうって、そりゃ綺麗で手によく馴染む良い刀だと思ってるよ。蒼流の事は」

「なら問題ないでしょう。大切に使っていただければそのが勝手に暴れる事はないでしょう」

 アオイは微笑みながら部屋を出た。

 まあたとえ言う事聞かないじゃじゃ馬だったとしても手放す気は一生ないけどな。

 そう言えばまだ挨拶がまだだったな。


「これから一生頼むぞ、蒼流」

 鞘から引き抜き蒼琉に向かって言うと刃が光り、何となく返事をしたような気がした。


 飯も終わり、また皆で風呂にでも入ろうかな~と考えていると外からノックがされた。

 どうぞと言うとそこにはティアとタイガが居た。


「どうした二人そろって。また何か相談か?」

「今日はただ話をしに来ただけ。お互い半年間何してたか話さない?」

「僕とティアははぼ同じですけどリュウの事はよく知らないなと思ってね」

 なるほど、そう言う話か。

 昔、と言っても半年程だが俺が牧場にいた頃を思い出す。

 そう言えばこんな雰囲気だったか。


「話すのは良いけどどっちから話す?」

「「もちろんリュウから」」

「ほーい」

 軽い返事をしてから話を始めた。

 一応話題は爺さんや親父さんの修業の事にした。

 もう色々と喋ったので特に隠す事もない。


「本当親父さんには苦労した。事ある事に突っ掛かって来てさ」

「あ~そこはグランさんと似た所があるね。娘を持った親は大抵はそうだからね」

「私グランの娘じゃないんだけど……」

 そんなくだらない話で盛り上がった。

 ベッドの上でいつまでも喋り、いつの間にかティアが寝ていた。

 俺達はティアを起こさない様にそっと部屋を出る。

 寝た子を起こす程俺の心は狭くない。


 タイガは自分の部屋に戻って行った。

 空いている一つの部屋で俺は寝ようと思ったが風呂に入って無いのに気付き風呂場に向かった。


 一人男湯を独占しているとゲンさんが入って来る。

 その表情は暗いのが気になる。


「どうかした?」

「…………少し大事な話がある」

「何だよ溜めやがって」

「教会がリュウを怪しんでいる」

「犯罪を犯した覚えは無いが?」

「魔物の事だ。更に言えば勇者様を惑わす悪魔だと言う噂もある」

 何だそんな事か。

 世間から見れば間違って無い。


「とうとう人間扱いすらされなくなったか」

「これは大問題だぞ‼教会はお前が思っている以上に強力な組織だ、どこの国に逃げても見付かるぞ。下手をすればどうなるか…………」

「その時は森に隠れるさ。正面から戦う必要はない」

「そんな甘い相手でじゃねぇ。特に教王と聖女の二人はな」

「いかにも魔物嫌いの雰囲気がむんむんだな」

 宗教は面倒臭い。

 神だか天使だか知らねぇがどうでも良い。

 興味もない、ただし……


「俺の仲間や家族、ダチに手ぇ出すなら殺す」

「余り過激な事は言うな。記憶を覗く術を持った者が居るらしい」

「関係ねぇ。ダチが撲られてるのを黙って見るぐらいなら喧嘩売ってやる。必要なら絶滅させる」

 手を固く握り締めながら宣言する。

 その時は戦争だ。

 その時があるなら魔王に到るための贄になってもらう。

 ゲンさんは固まっていた。


「本気か?」

「なら宣言しよう。俺は魔王になる。どうせその必要があるし、いつかはなるつもりだ」

「……人類に対して何かする気は?」

「特にない。ただしそれはそちらから何もして来なかった場合のみだ、俺の仲間やダチを傷つける気なら殺す」

 ゲンさんは何も言わずに上がった。

 その背中には悲しそうな空気があった。

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