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告白された

「それでよドワル、ちょっと聞きたい事があって来たんだがいいか?」

「何が聞きたい?」

「刀をよく使う場所に行きたい。確か東の国って言ってたよな」

「確かにその国の者に刀の作り方を学んだがまさか行く気か?」

「そりゃね。だから場所と行き方を教えてくれ」

 しかしドワルは渋そうな顔をしてなかなか答えない。

 東の国の事情でもあるのか?


「兄上が危惧しているのは魔王の事です」

「魔王?まさか縄張りの近くなのか」

「はい。しかも二体の魔王の縄張りの隙間を通るような道が一本あるだけなので、とても危険なのです」

 確かにそれは危険な旅になるかもしれない。

 しかも二体とかそりゃ渋るわ。


「ちなみにどんな魔王なのか分かるか?」

「北の火山付近には鳥型の魔王、南の草原には獣型の魔王が居ると聞いています。東の国の者が植えた街路樹に沿って行けばどちらの魔王にも出くわす事はないと思いますが……」

「でも様子見ぐらいはしてくるかもな、強い魔物を連れてれば余計に目立つだろうな」

「はい、兄上もその事を危惧しているようで」

「なら手紙でも送って来てもらうのは?」

「それも難しいかと、魔王は東の国でも恐れられています。しかも二体。おかげで交流はほとんどないのです」

 そうなると俺らが行くしかないっか。

 流石に何のちょっかいも出さなければ喧嘩売ってくる事はないだろうし、大人しく通れば問題ないよな?

 ただ問題はうちの子達か。

 皆勝ち気だからな。


「ちなみに歩いてどのぐらい時間がかかる」

「人の足で十日程です」

「やっぱ遠いな」

 そうなると食料の問題もあるし、向こうでどのぐらい修業する事になるかも分からないし、準備は十分にしないとな。


「ちなみに向こうで金貨って使えるのか?」

「使えなかったはずです。しかし向こうには両替屋があったはずなのでそこで両替すればいいかと」

「随分詳しいな。もしかして行った事があるのか?」

「一度だけ兄上と一緒に。その時に東の国の刀の打ち方を学びました」

「と言っても曰く付きの鍛冶師だったようだがな」

 ようやく考え事から戻って来たかドワル、それで教えてくれるのか?

 教えてくれなくても行くつもりだけど。


「で、刀を教えてくれそうな人の名前は?」

「名はハガネ、刀の扱い方を教えてくれる道場の師範でもあったはずだから問題ない」

「そりゃいい。都合よすぎて怖いぐらいだ」

「しかし厳しい者だから気を付けろ。下手すれば斬られる」

 おお怖い、でもそのぐらいの方がちょうどいいか。

 いっつもそんな状況だし。

 ドワル達から話も聞けたので城から出ると、何故かティアが居た。


「ティア?」

「リュウお帰り」

「あ、いや、そのお前こそどうしてここに?」

「アリスちゃんに聞いた。お城にいるって」

 あいつ一体何の真似だ?

 謝れって言ってたがそのためにか?


「リュウ付き合って」

「えっとどこに?」

「買い物、とにかく付き合って」

 そう言って歩き出すティアの後ろを慌てて追いかける。

 特に話すわけでもなく、ただ離れないように歩いている。

 そうしている内に商店街をぶらつく。

 たまにティアが店に寄った場所で時間を潰し、特に買う訳でもなくただ付き合う。

 そうしている内に宿に戻ってしまった。

 特にする用事もないからこのまま部屋に戻って寝るか。


「私の部屋、来て」

 …………本当に何がしたいのか分からん。

 仕方ないので女子部屋にまで付いて行くと。


「座ってて」

 そう言ってリビングのソファーに座らせられた。

 ティアはどこかに行っちまったし、仕方ないので大人しく待つ。

 しばらくするとお茶と菓子を持ってティアが戻ってきた。


「食べながらでいいから質問に答えて」

「おう」

 菓子に手を付けながら質問を待つ。


「あの子達とはいつからその、お嫁さんとして一緒にいるの」

「皆ごく最近だよ。大雑把に言うと一か月から二か月ぐらい前」

「……短い間にそういう関係になってたんだ」

「確かに時間だけで言えばかなり短いだろうな。けど俺はあいつらと一緒に居たいと思ったから嫁にした」

「それじゃ、いつからあの子達と一緒になったの」

「そこはバラバラだよ。一番最初に会ったのはリルで、前にフォールクラウンに来た時にカリンと出会って、次にオウカとアオイに会った」

「あの子達の事、皆好きなんだ」

「好きじゃなきゃ嫁にしねぇよ」

 そう言った後、ティアは黙った。

 いや、黙ったと言うよりは、聞きたいけど声に出せないといった感じか。

 少し待つとようやく言った。


「私の事は、嫌い?」

「は?何でいきなりそうなる」

「だって黙っていなくなるし、ゲンさんの話を聞く限り私の事避けてたみたいだし、最初に会った時もリルさん達の事黙ってたから嫌いなのかなって。そう思ったら怖くなって…………」

 俯いたまま手を強く握りしめるティアに少し頭が真っ白になった。

 久しぶりに会った時にかなり不安な思いをさせたと感じたが、どうやらそれでもまだほんの少ししか気付けなかったらしい。

 本当に俺は色んな事に鈍感だな。


「えーっと、その、避けてたのはお前が魔物嫌いだって聞いてたからで、その、お前とリル達が争うのを見たくなくてさ。ごめん」

「いーよ仕方ないし、事実私は魔物が嫌い。それと争いが見たくないってやっぱりリルさん達のため?」

「俺としてはどっちもだったんだけどな」

「え?」

「リル達を護るためってのも本当だし、ティアを護るためってのもあった。口が足らなかったな」

「え、本当に?私のためでもあったの?」

「賭けの勝利報酬もな。お前を護るためだよ」

 そう言うと顔を赤くして多分さっきとは違う意味で俯く。

 多分変な事は言ってないはずだ。


「俺からも質問良いか?」

「どうぞ」

「何で俺にそこまで気にする。お前にはタイガが居るだろ」

「え、何でそこにタイガが出てくるの?」

「何でっていつも一緒にいるのはタイガなんだから、何かあったらタイガに甘えればいいじゃん」

 なんか変なこと言ったか?


「…………鈍感」

「何でそうなる。あいつだって幼馴染の一人なんだからいいじゃん」

「そうじゃなくてその、リュウじゃないとダメなの!」

「じゃあ理由は何だよ。俺じゃないといけない理由って?」

 そう言うと口をパクパクして顔を赤くするティア。

 すると俺の肩を掴み何か決意した表情で言った。


「だから私はリュウが好きなの!幼馴染としてじゃなくて女の子として好きなの‼」

「え、ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」

「そこまで驚くことなの!?ちょっとショック」

「だって俺、てっきりタイガと出来てるとばっかり!」

「やっぱりそう思ってたんだ。私、前にタイガに告白されたけど断ったよ」

「断った、マジか!」

 本当に知らなかった。

 いや、タイガがティアに惚れてたのは知ってたけど、ティアが俺に惚れてたのは知らなかった。


「うっわータイガに何て言おう」

「で、返事は?」

 あーどうしよう。

 さすがに保留にしたら殺されるし、受け入れたらリル達に殺されそうだしって事は詰んでね?

 俺どっち選んでも死ぬじゃん!

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