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普通の会話がヤバい

 今日の騒動も夜になると落ち着いてきた。

 偵察部隊からの報告は発見出来なかったとの事、おそらく森に帰ったと思われているが詳しい事は不明と帰ってきた。

 警戒は続いているが朝ほどのピリピリした空気はなくなっている。


 そして昼の内にダハーカを皆に紹介、一応魔術師と言う事にしてもらった。

 その時にはゲンさんも帰ってきていて後で俺とゲンさん、アリスだけになった時に聞かれた。

 前に話に出た魔術師か、と。

 それで俺があっさりそうだと言うとゲンさんもダハーカの監視をするようになった。

 そして現在、昨日と同じ混浴に皆で入っていた。


「これが風呂と言うものか」

「入るの初めてか?」

「初めてだ。川や湖で水浴びぐらいはする時もあったが湯に入るのは今回が初めてだ」

「そっか。まぁ俺も最近までは旅をしてたから滅多に入れなかったけどな」

「……よくこんな状況で普通に話せるな」

 ダハーカが珍しそうにしているので聞いてみたらやっぱり初めてだった。

 そして何故かゲンさんが身体を小さくして俺達から離れようとしない。


「こんな状況も何も仕方ないだろ、混浴なんだから」

「ゲンは雌が苦手か?」

「苦手とかじゃなくて何で平然と出来るんだよ!みんな裸だぞ!」

 そう、もちろんここにはリル達とアリスもいる。

 今回は事前にゲンさんとアリスが一緒に入る事を伝えたのだが皆タオルを巻くのを嫌がった。

 仕方ないのでせめて水着にしたらと言っても聞かず、結局アオイとアリス以外は裸のまま。

 アオイとアリスはきちんとタオルを巻いているがそれでもゲンさんは直視出来ないでいる。


「諦めろ、ここでしか顔を合わせて話し出来ないし部屋だとお前ら都合が悪そうだったし」

「それでも何で風呂なんだ。他にも場所はあったろ」

「なら俺らの部屋に来るか?タイガの変な目線が来るけど」

 そう、都合が悪いのは主にタイガのせいだったりする。

 タイガは賢者らしく今回の騒動は俺達が絡んでいると思っている様子。

 おそらくティアにも聞いたと思うがはっきりとした答えは返って来なかったのだろう。

 俺にも聞きに来た時はダハーカを迎えに行った、で押し通った。


「しっかし情報部隊長も大変だな。色んな人から情報くれってせがまれてるんだろ?」

「特に教会やタイガからな。おそらく明日には今日の騒動も治まるだろ。全く、ダハーカと聞いてもしやと思ったがまさか伝説の邪龍本人だったとはな」

「それほど私は意外か?」

「意外だよ。まさか邪龍とこうして話が出来るとは一度も思った事はない」

 普通はそう思うけど。


「私も聞きたいけれど他の邪龍はどうなってるの?」

 当然リルが俺達の会話に割り込んできた。

 リルが近づくにつれてゲンさんが遠ざかっていく。


「他とは?」

「お祖父様に聞いた事があるのよ。このアジ・ダハーカとは違う厄介な邪龍がもう二体いるって」

「それは『三日月邪龍クロウ・クルワッハ』と『原初海邪龍アポピス』の事か?」

「そう、その二体よ」

 俺は聞いた事ないなその邪龍。


「どんな奴なんだリル」

「詳しくは知らないわ。どちらも別な島にいると言われているもの」

「また懐かしいお話をなされていますね」

「アオイも知ってるのか?」

「私はお母様に聞いただけです。おそらくダハーカのほうが詳しいと思います」

 ほほう、では聞いてみるか。


「どんな邪龍だったんだダハーカ」

「どんなっと聞かれると困るが……そうだな。かなり特殊な者達だった」

「だからどんな?」

「クロウはとある魔王に自ら仕える変わり者だ。戦闘方法は主に近接戦闘ばかり、ブレスは当然使えるがあまり好んでは使わなかったな。アポピスが戦っている所を見た事はない。あいつは今も原初の海で泳いでいると思うが……」

 ダハーカは古い記憶を探るように言う。

 実際に俺から見れば大昔なんだろうが途方もないな。


「魔王に仕える邪龍とずっと海で泳いでる邪龍か。それって変わってんの?」

「基本邪龍は好き勝手していますが何者かに仕えるのも、戦わず停滞しているのも珍しい部類です」

「へ~。いつか会ってみたいな」

「あの、リュウさんが言うと本当になりそうなので止めてもらえませんか」

 遠くからタオルを巻いたアリスが言ってくる。

 そんな離れなくてもいいじゃん。

 タオル巻いてんだから。


「リュウ、今回はアリスの言う通りしばらくは止めておいた方が良いわよ。実力がまるで足りない」

「そうですね。それに魔王と原初の海が関わると大抵は良くない事が起こりますから」

「魔王は分かるが原初の海って危険な場所なのか?」

「滅茶苦茶危険な場所だぞ。古い文献では誰も帰って来なかった」

 大分遠くに行ったゲンさんも言う。


「そんな危険な場所に何で大昔の人は行ったんだ?」

「エリクサーの原料がその海の海水らしい。弱い者がその海水に触れるとその者が原初の海の一部になってしまうと言われている」

「正確に言うと魂が弱い者だがな。ちなみにエリクサーの材料は原初の海の海水の他に天龍の涙、仙桃の花びらだな」

「え、たったの三つで完成するの?」

「材料は少ないがどれも加工と入手方法が困難なのだ。天龍は希少種な故滅多に見つからんし、かなり強い。今は……どうなのだティアマト、確かお前の国に数体いただろう」

「いますが若い者達は皆混血です。おそらくエリクサーは作れないでしょう」

「そうか。やはり純血でないとダメか」

 ゲンさんの説明に捕捉をつけながら言ってるがいいのか?

 かなり重要な情報を言った気がするが大丈夫か?

 あ、ゲンさんが耳塞いであーあ言ってる。

 やっぱ重要な情報だったんだ。


「にしてもドラゴンの涙ってどうすんだ?泣くまで腹でもくすぐればいいのか?」

「天龍の涙は別名慈愛の涙。気に入られ、自然と流すのを待つしかない」

「慈愛って難しいな」

「仙桃もかなり高い山にあるが大抵そこに行くまでに寒さと息苦しさでたどり着く前に死ぬ。たとえ着いても花が咲いているかは別問題だがな」

 世の中って非情だ。

 奇跡の薬を作る前に多くの人が死ぬ事になるぞ。


「で、海水の方は?」

「海水は言った通り魂が強ければ何てことはない。ただリュウのような魂の強い者は滅多に現れないためほとんどは死ぬ」

「ちなみに何でその三つの材料でエリクサーが作れるんですか?」

 聞いたのはアリス。

 ゲンさんが驚いている所を見ると聞かない方が良い質問だったらしい。


「海水は魂を修復し、涙は精神を癒し、花びらは寿命を延ばす」

「えっと?」

「つまりそれぞれの素材は別なものを癒す最大の薬なのだ。それを加工し、一つに纏めたものこそエリクサー」

「普通の薬でもあるだろ、風邪薬でも頭痛と熱を同時に治す薬が。エリクサーもそれと同じって事」

「リュウさんの例えは分かり易いですがありがたみが減りますね」

「例えなんてそんなもんだ」

 物事を簡単に説明するのが例えだからな。

 そりゃありがたみも減るさ。


「そういえばゲンさんの方は何か無いの?」

「あるぞ。ドワーフ王が決闘の日時を決めた。闘技場の手配が終了したそうだ」

「それでいつ?」

「一週間後の正午だ。お嬢ちゃんには既に伝えておいた」

「了解」

「パパのかっこいいところ見れる?」

「私も久しぶりに見たいのだ!」

 お子様二人が俺にくっつく、頭を撫でながら考えてみたがあまり本気は出せないよな。


「それは分かんねぇよ。ダハーカ、明日は朝から魔術の修行つけてくれ」

「分かった」

 決闘の日時も決まったし明日の修行に向けて今日はゆっくり休むか。

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