表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/238

目標

 飯が出来るまで部屋でごろごろしているとまた客が来た。

 今度は騎士団長様とタイガだ。

 俺の周りには敵しかいないのか?


「邪魔するぜ坊主」

「リュウ、話いいかい?」

「入って来てから言うな。で、話って?」

 大方試合に関する事だろうけど。

 二人は椅子に座って、俺はベッドの上に座る。


「坊主、お前がどれくらい強いかは知らないが嬢ちゃんとの決闘は止めておけ、これは忠告だ」

「そうだよ。リュウが思っている以上にティアは強い。子供の時とは違うんだ、止めてくれ」

 またそれか。

 くどいな、流石に面倒になってきた。

 むしろお前らの方が大丈夫か?って聞きたいぐらいだよ。


「安心しろ流石のティアも殺す様にはしないだろうさ」

「それでも大怪我はする。マリアさんがいるからある程度は大丈夫だろうけど、それでもリュウは」

「くどい、とにかくこれは俺とティアの問題だ。俺にだって事情があるんだよ」

 大森林にいる爺さんとか龍皇とかにも関係してくるかもしれないし、そう簡単に離れる訳にもいかないんだよ。

 そう思ってるとグランさんも言ってくる。


「坊主から見れば嬢ちゃんをひいきに見てるように思うのは分かるがお前の言ってる事も分かる。しかし本当に調教師が勇者に勝てると思ってるのか?」

「勝つ負ける以前にこれは俺の主張でもあるんです。俺はこの仕事が気に入ってるし周りの人達にも恩があります。勝手な事情で辞める訳にもいきません」

「う~ん」

 グランさんはそれでも説得する言葉を探しているのか腕を組んで唸っている。


「もういいですよグランさん。こいつは妙なところで意地っ張りなんです。リュウ、君は絶対に負ける、その時は大人しくしてね」

「その前にゲンさんから俺の事ちゃんと聞いておきな。雑魚だって決めつけて足掬われちゃ元も子もねぇよ」

 せめてもの忠告のつもりだが聞いてたんだろな?

 先に立って出ていったタイガを追ってグランさんも退出した。


 こうも辞退しろ辞退しろと言われるとストレスが溜まる。

 俺の周りには敵しかいないようなので俺は意識を自分の中に向けてしばらくリル達を抱きしめる事にした。

 傍から見ると寝ている様にしか見えないのでゲンさんに飯だと言われるまではそうしてた。


 飯の後、俺はとある場所の前にいた。

 そう、男の夢、混浴場の前である。

 普通貸し切りで、しかも脈が全くない女性陣では意味のないものだが、俺には嫁がいる‼


 ふわはっはっはっは‼

 嫁となら風呂でイチャイチャしようと合法!

 女湯を覗こうとしているムッツリとはまるで状況が違うのだ!


 ちなみに俺の知ってるムッツリは念入りに一定範囲内の姿を隠す魔術をずっと復唱していた。

 止めるべき二人の大人は黙認。

 二人は大人しく男湯に入るそうな。


 さっきまで喧嘩していてもそのことを聞けば男は敬礼して送り出す。

 ザ・男のスケベ友情。

 大人しくしておく者達皆で見送った。

 その間俺は嫁とゆっくり風呂に浸かるとしよう。


「皆、もう良いぞ」

 そう言うとすぐに皆が出てきた。


「やっと出れたわ」

「おっふろおっふろ」

「一番は貰ったのだ!」

「オウカ様はしたないですよ」

 リルはずっと体内に居たせいか軽く伸びをしながら。

 カリンは歩いて風呂場に向かう。

 オウカは子供らしく一番風呂を狙って走る。

 アオイは走るオウカを追って小走りになっていた。


 俺は服を着ているので脱ぐ必要があるが他の皆は体毛や羽、鱗などを服に変化させているだけなのでそれを解けば皆裸。

 眼福眼福。


 一番最後になって風呂場に入るとそこはやはり桃源郷だった。

 本気で惚れた女が裸になっている。

 それだけで幸せです!


「リュウ、髪と身体洗って」

「はいよ」

 そう言われてリルの体を洗っていく。

 きめ細かく、柔らかい肌は狼の状態で触れる時とはまた違った感覚がいい。

 優しく石鹸を付けた手で撫でる様に洗うとリルは時々くすぐったそうに身を捩るのもまたいい。

 次に髪だがリルの髪はとても長い、腰に掛かるぐらい長い髪は一人で洗うのはやっぱり大変なようだ。

 おかげでこの綺麗な髪に触れるわけだが。


「はい、終わったよ」

「あれ?前はしなくていいの」

「冗談止めろ。歯止めが利かなくなる」

「そっか、残念」

 リルは初めて会った時とは違う感じで大人っぽくなった気がする。

 ある程度経って最初の甘えた感じと気取っていたような雰囲気は抜け、自然な感じになった。


「パパ次私ね」

「はいはい」

 カリンの髪も長いが背中に掛かるぐらい。

 普段はポニーテイルで髪を俺が挙げた髪留めで括るようになったがこうやって髪を下すとまた雰囲気が変わる。

 肌は黄色く、個人的に見慣れた肌で落ち着く。

 でも精神はまだまだ子供である以上もう少し親として見ていたい。

 最低でもパパと呼んでいる内は。


「はい、お終い」

「ありがとうねパパお姉ちゃーん!」

「こら、風呂場で飛ぶな」

 言う事聞かないのは俺が甘やかし過ぎたからなのだろうか……


「リュウも一緒に入るのだ!」

「オウカ様、前ぐらいタオルで隠しなさい」

 どうやらオウカはアオイに洗われた様だ。

 タオルで隠さずにいるのは子供の特徴か。

 いつもツインテールで括ってる髪も当然下してる。

 全く起伏のない身体に子供特有の張りのある肌、触るとすべすべしているが全く邪な感情は出ない。

 出てたら大変なことになるが。


 アオイは意外にもこの中で一番胸がデカかった。

 この真実を知るまではカリンが一番だと思っていたが濡れたタオルがその起伏を主張している。

 アオイの蒼い髪はショート。

 仕事をする際にあまり邪魔にならないからとの理由らしいがとても似合っている。


「でもここは風呂なのだ。タオルは入れないのがマナーなのだ」

「しかしここは混浴です。隠すためにタオルを入れてよいのですよ」

「ではリュウにアピールするために策なのだ!リュウ早く入るのだ!」

「分かったから手を引っ張んな」

 完全に子供だよな。

 最近は俺の中に入ってる事も多かったし、大目に見るか。

 アオイはため息を付きながらも一緒に入る。

 タオルを付けてるのはアオイだけだしある意味一番普通だよな。


 俺も風呂に入って思いっきり羽を伸ばす。

 ずっと荷馬車の中で過ごしていたので身体が固くなっている。

 少しはこの風呂で解れると良いんだが。


「ふー、いい風呂だな」

「リュウ、気持ちいい?」

「気持ち良いよリル」

「そう」

 俺の隣にはリルが自然と来ていた。

 カリンとオウカは風呂ではしゃいでいるし、アオイはそんな二人を止めようとしている。

 リルは俺にくっ付いてきながら頬を俺に擦り付ける。


「ねぇリュウ、あの勇者もリュウにとって大事なの?」

「そりゃ、当たり前だろ。一応友達だし」

「あの勇者達とフェンリルとガルダ(わたしたち)を同時に守るためにあんな条件にしたの?」

「やっぱばれた?」

「ええ、不自然だもの」

 そっか、不自然だったか。

 そうだよな。

 いざって時は俺がリル達を護るとか言っときながら、その勇者も護ろうとしてんだからな。


「結局俺は強欲なのかね?あれもこれも失いたくないって思ってる」

「そうかも。今のリュウは傲慢で強欲かも」

「傲慢もか」

「そうでしょ。私達に会って強くなっていく内にどんどん私達に近付いてる」

 身も心も魔物に近付いてる、ね。

 確かに傲慢じゃなきゃ勇者に喧嘩なんて売らないか。

 いつの間にこうなってたっけ?


「でも私は嫌いじゃない。強くなっても傲慢じゃない存在なんて稀だし、いつまでもビクビクと怖がってる男となんて一緒になりたくないもの」

「リル……」

「好きに生きてみたら?強ければ自由も自然と手に入る。その時に何をしたいかでも考えてみたら」

「……そうだな、そうする」

 そろそろ目標の一つでも見つけてみるか。

 まずはウルの開放。

 ダハーカの復活はもうすぐみたいだし、そうなると住処も必要か。

 カリンとオウカを強くしたい。

 まずは……何から始めようか。


「私は子供が欲しい」

 そう言って俺の腕にくっ付くリル。

 全く、人が真面目に考えてたってのに何してんだか。


「私もパパの子供欲しい!」

「私も欲しいのだ!」

「お二人ともいい加減落ち着いて下さい‼」

 騒がしいが何故か落ち着く。

 おかげでこの日はぐっすりと眠れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ