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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第六章:回復術士は復讐を終える

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第九話:回復術士は脱出路を突破する

【斧】の勇者を倒した俺たちはさらに先へと進んでいく。
 それにしても脱出路になんて分岐の数を用意しているんだ。分岐が多いだけでなく、意図的に似たような作りにしてあり、見分けがつきにくい。

 よくも、こんな複雑な道をフレア王女は頭に叩き込んでいたものだ。
 地図などを所持するのではなく、暗記していたことに感謝する。
 道を知らずにここを突破するのは不可能だっただろう。

 フレア王女は魔術の才能に優れ、人心掌握術に長け、頭脳明晰で、容姿は抜群、誰もを魅了する歌の才能まで持つ。
 性格以外のすべてが完璧な少女だ。
 もっとも、そのくそみたいな性格のせいですべてが台無しになっているが。

 ある意味、俺の所有物おもちゃになって良かったかもな。
 俺のおかげで、そのくそみたいな性格が改善できたのだから。
 今までフレイアとなったフレア王女にはさんざんジオラル王国に敵対する行為を取らせ、ジオラル兵を何人も殺させてきた。
 そして、いよいよ父親殺しに加担させる。
 いや、加担で終わらせたらつまらないからジオラル王のとどめはフレイアに刺させよう。
 その後、記憶を取り戻させたら、いったいどれだけ面白いことになるだろうか。

 ……俺の【改良ヒール】による記憶操作は記憶の抹消ではない。
 記憶を引き出すカギを無くさせているだけ。
 その気になれば記憶を取り戻させることができる。
 悩ましいのは”フレイア”のことは愛しているということだ。
 フレア王女に対する復讐として、今まで自分が何をやってきたかを突き付けるのは楽しいが、大事な所有物おもちゃを失うのは惜しい。

「ケアルガ様、そんなに顔をじっと見つめられると照れてしまいます」

 何を勘違いしているのか、フレイアが顔を赤くする。
 バカな奴だ。
 俺が何を考えているか、まったく気づいていない。

「いや、フレイアは可愛いと思ってな」

 徹底的に壊して復讐を完璧なものにするか、一生奴隷にして使い潰すか。
 ……そのどちらにするかは、ジオラル王をフレイアに殺させてから決めよう。
 どちらのほうが楽しめるかをぎりぎりまで考えるのだ。

「ケアルガ兄さま、おかしいですね。一度目の襲撃以降、まったく攻撃が来ません」

 軍師であるエレンがつぶやく。
 そういえば、こいつもジオラル王の娘。ノルン姫か。
 こっちは、さほど恨みがあるわけじゃない。
 せいぜい、親友を殺した程度の可愛いものだ。しかも、ジオラル王国に弓を引いたことを思い出しても、だから何か? ぐらい平然と言うメンタル。
 ぶっちゃけ、記憶を戻しても大してダメージを受けない。
 こっちは飽きるまでは飼ってやろう。

「言われてみると妙だな」
「ええ、ジオラル王は人の道を外れていますが、愚王ではありません。彼の功績がそれを物語っています。なのに、兵の小出しなんて真似をするのはおかしいです」
「エレン、どんなパターンが考えられる」

 軍師としてのエレンは信用しているので、意見を聞く。

「……こちらを油断させるためでしょうか。例えば、この脱出路を守るつもりがあるように見せかける」
「それをして何の意味がある?」
「たとえばですよ。この脱出路を倒壊して生き埋めにするつもりで、それを悟らせないために最初だけ兵を見せつける。兵を見せつけておけば、ここを使い捨てるつもりがないと思わせることができます」
「面白いな、他にはどんなことが考えられる」
「時間稼ぎです。兵を小出しにするのは、愚策ですが目的が時間稼ぎだけであるなら有効です」

 どちらもありそうだ。
 地響きがした。これは。

「どうやら、エレンの読みが当たったようだな」
「たしかに、これはそうですね」

 ミシミシと嫌な音を立てる。
 壁にひびが入っていく。

 フレア王女の記憶にあった。他人の記憶というのは、なかなか扱いづらい、キーワードが正しくないと、引き出す情報に漏れができる。
 事実、この崩落についての記憶を知っていながら、思い出せなかった。

 この脱出路、最大の罠がこれだ。
 王族が、城を落とされたあと逃げるためにこの道がある。

 この脱出路を設計したのは天才錬金術士。
 彼はこう考えた。
 王族を逃がしたあと、すでにこの道を残す意味はない。
 ならば、この道を通って逃げた王族を守るため、この脱出路を使って追っ手を確実につぶす。。
 その方法が……。

「脱出路を崩落させて、侵入者を押しつぶす仕掛けか。さっきの連中は、それを悟らせないための布石。やってくれる」
「フレイア、全力で天井に向かってうって最高の威力の魔術を放ってください」

 エレンが叫ぶ。

「心配いりませんよ。全力なんて出さなくても、これぐらい三割の力で」
「全力です! この脱出路に使われている石材、そのすべてが耐魔力加工されています。踏んだ感触でわかります」

 なんて無駄遣いだ。
 これだけの規模の脱出路をすべて耐魔力加工された石材で作るなんて、下手な城の一つや、二つは買える。

 しかも、それを使い捨てにするなんて狂気の沙汰だ。
 こんなつまらないことに税金を使われた国民は泣いてもいい。

 だが、この場においてはひどく有効な手立てだ。
 おおよそ、物理攻撃でこの質量をはじき返すのは不可能。どれだけ技量に優れていても関係ない。
 唯一の対応策は戦略級魔術だが、それすらも対魔力加工で有効打にはなりえない。
 例外があるとすれば、通常百人がかりの魔術士で行う儀式魔術のさらに上の魔術。
 そんなものを使えるのはこの世に一人しかいない。

 フレイアが杖を構え、圧倒的なまでに理不尽な量の魔力が高まる。エレンの言う通り、全力で魔術を放とうとしている。

 高まる魔力だけで鳥肌が止まらない。
 これが、術の勇者たるフレイアの本気。
 天に向けてフレイアが杖を構える。
 立体魔方陣が七重に展開される。
 天井が崩れ崩落が始まる。それと同時に、フレイアの魔術が完成した。

「我放つは紅蓮の業火……第七階位魔術【炎帝】」

 それは、天に向かって伸びる紅蓮の柱、
 人間の限界と言われる第五階位を二つ超えた【術】の勇者のみに許された神代の魔法。
 一周目の世界でフレイアが到達した極致へとこの段階ですでに届いている。

 いや、一周目のフレア王女すら超えている。
 この莫大な熱量を放ちながら、いっさい熱を感じない。

 魔術とは物理法則を超越する。
 紅蓮の柱に、すべての熱量を圧縮し、余波という名の無駄な浪費を一切しない、完璧なる制御。

 紅蓮の柱は魔力耐性を備えた石材すらたやすく貫いて、そのまま天へと延びる。
 空が見えた。

「きれい」

 セツナが白い狼耳をぴんと伸ばして、呆けた声を上げる。強大な力は恐れすら超えて、畏敬の念を抱かせる。

 空が見えるのは脱出路だけではなく、その上にある城を最上階まで貫いたせいだ。
 ふざけた威力だ。
 地響きは続く、周囲が崩落に巻き込まれるが、頭上のすべてを吹き飛ばした俺たちだけは無事だった。

「ふう、どうですか。ケアルガ様」
「ほれぼれする魔術だった。ポーションを飲んでおけ」

 俺が渡したのは、お手製の魔力回復量向上のポーション。
 魔力回復ポーションには二種類ある。魔力を溶かしておき、飲めば体が魔力を吸収し、即座に魔力を回復するもの。
 もう一つは、体内で生成する魔力量を増やすもの。
 並の魔術士なら前者でいいが、フレイアクラスになると固定量の回復なんて誤差のようなものだ。
 こんな規格外の魔術を撃ったのだから、今の内から回復しないとまずい。
 フレイアが喉を鳴らして、ポーションを飲み干す。

「さて、前には進めないから、上にいくしかなくなったな」

 崩落した脱出路を砕いて前に進むのは面倒すぎる。
 幸いなことに、すでに城の下まで来ていた。
 ならば、フレアが明けた穴を上るほうが速い。
 俺は、壁に手を当てる。

 気に入って、つねにセットしている錬金魔術を発動する。くり抜かれた壁から土や石が突き出て螺旋階段ができる。
 これぐらいの芸当なら、俺にだってできる。

「ケアルガ様もすごい。セツナはこんな器用なことできない」
「私も魔術を使ってみたいわね」
「できないことを無理にやることはない。……俺のはただの器用貧乏だしな。おまえたちは自分の得意なことを磨くほうが強い」

 俺は、数多い手札をうまく使うことでなんとかうまくやっているだけにすぎない。

 魔術はフレイアに及ばないし、剣技はクレハに劣り、戦略眼はエレンに劣る。セツナは現時点では、俺たちに劣るが、才能という意味では、俺たちのなかで一番だ。

 螺旋階段を上っていく。
 警戒は怠らない。
 生き埋めにされないために、あれだけ派手な花火を打ち上げてしまったのだ。
 すぐに出迎えが来るはず。

 今度は、さきほどのようにあえて兵を出さない理由はない。
 全力で潰しに来るはずだ。
 ほら、来た。
 フレイアが作った穴を、黒い靄を纏った無数の兵たちが覗き込み、飛び込んできた。
 この中に、残り二人の勇者はいる可能性が高い。

「全員、聞け。皆殺しにしようとすれば時間も体力も浪費する。あいつらを突破して、ライナラの間を目指す。その地下に、やつの野望、禁呪の装置がある」

 この大陸でもっとも美しい花、ライナラ。
 その花が咲き乱れる、ジオラル城の中でも、もっとも清らかで安らぐ場所が、王女フレアの命令で作られたライナの間。

 そんな美しい場所の地下におぞましい欲望の塊を隠すのはあいつららしい。
 そこにたどり着けば、俺たちの勝ち。
 こんな有象無象突き抜けて、さっさと勝ちを拾いに行こう。
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