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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第六章:回復術士は復讐を終える

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第八話:回復術士は【斧】の勇者と一騎打ちする

 ジオラル城の脱出路を俺たちは走っていた。
 そこで、敵の一団と遭遇する。
 その中には、ジオラル王に挑み敗北した三勇者の一人、【斧】の勇者がいた。

【翡翠眼】でステータスを見ようとして、見れなかった。
 黒い瘴気が濃いと稀にこういうことが起きる。
【砲】の勇者ブレットと再会したときも、奴のステータスを確認できなかった。
 ……強大な敵かつ、正しく力が把握できない【斧】の勇者をセツナたちに戦わせるのは危険か。
 重要な戦力であり、俺の大事な所有物おもちゃだ。
 俺が相手するしかないようだ。

「【斧】の勇者とは俺が戦う。セツナたちは残りを片付けてくれ」

 するどく叫ぶ。
 それが今のパーティであれば最適解だろう。
 フレイアたちが、それぞれの武器を手に取り頷く。
 グレンの炎が俺の剣にまとわりついている。

「ああああああああああああああああああああああうううううううううううううう」

【斧】の勇者は言葉を忘れてしまっているらしい。
 気持ち悪いうめき声をあげて俺を睨みつけている。

 見上げるほどの大男でブレットよりもさらに大きく、全身が筋肉に包まれている。
 上半身が異様に膨れ上がっており、下半身とのアンバランスさが気持ち悪い。
 そして、非常に端整で少年のような顔立ちでそちらにも違和感がある。
 殺される前は、その瞳に活力が溢れていたのだろうが、今はうつろで死んだ魚のような目だ。

 武器は俺の背丈ほどもあるハルバード。
 こんなものまともに使えるとは思えないが、この体格と筋肉なら使えるだろう。

 ハルバードは槍と斧が一つになったような武器で、打突も斬撃もこなせ攻撃パターンが多い。
 だが、デメリットもある。単純に槍や斧と比較した場合に重量が増える。
 もとより、巨大な武器であるため取り回しは極めて難しいうえ、さらに重くして振りを遅くするなんてどうかしている。
 重さは威力面ではメリットになるのだろうが、当たらなければ問題ない。
 常に先手を取り続けて圧倒してみせよう。
 そう考えて、一歩踏み込み、戦慄する。

「なっ」

 まるで瞬間移動ような速度で敵が距離を詰めてくる。
 こちらの想定の数段上、速いのは踏み込みだけじゃない。腕の振りもだ。
 その巨体で、その武器で、俺以上の剣速だと。
 回避は不可能剣を斜めにして流すことを試みる。
【斧】の勇者が咆哮した。

「がああああああああああああああああああああああああああああ!」

 空気が震える。
 完璧に流した、斜めにした剣の上をハルバードが滑り地面に叩きつけられ、大地が爆発して吹き飛ばされた。
 追撃をいれられると思ったが、こんな攻撃をしてくるとは。

「バカ力だと思ったが、これほどとはな」

 剣をうまく流して九割型の衝撃は殺したのに、肩が外れ腕が砕けた。
自動回復オートヒール】で直しながら支えられたが、もし【自動回復オートヒール】がなければ、押しつぶされていただろう。

【斧】の勇者が笑う。
 そして、こんどは横薙ぎの一撃。
 相変わらずの神速。
 だが、その速度は見た。
 もう、油断はしない。飛び上がり、空中で体をひねり蹴りを叩き込む。

 首を折るつもりで放った一撃が筋肉で止められた。
 足を掴まれかけたので、反対の足で押すように蹴り距離を取る。
 後ろに跳ぶが、それより敵の踏み込みが早い。しかも、今度はハルバードの性質を生かし、突進突き。その穂先を躱せば、そのまま斧の刃で横薙ぎに移行。
 攻撃が続き、息をつく暇もない。
 このままじゃじり貧だ。
 攻撃を受け流しながらも、どんどん不利になっていく。
 やばいな、この間合い、この速度、次は受けすらまともにできない。

 ……少しだけ無理をする。
 こいつにはブレットと戦う際の練習台になってもらおう。

「【限界突破リミットブレイク】」

 対ブレット用に開発した魔術を使う。
 速度を上げる際、今まではパラメーターを速度に特化させたが、広範囲に光弾をばらまき絨毯爆撃してくるブレットを相手に防御力を犠牲にするなんて真似はリスクが高すぎる。
 奴と戦うためにはパラメーターの配分を変えずに、そのままで早くなる必要があった。

 それこそが【限界突破】。
 その名の通り、脳のリミッターを外し、脳内麻薬を垂れ流し、限界の運動を体にさせる。
 ありふれた考え方かつ、魔術的にも実現が容易な技だが、誰もやろうとしないのは肉体を傷つける諸刃の剣になるからだ。
 一瞬だけ早く動こうが、すぐに限界が来るし、最悪なのは意図しないタイミングで行動不能になること。

 だけど、俺には【自動回復オートヒール】がある。
 無理をして壊れながら動く体を常に癒し続けることができることで、速度を維持できるし、壊れることもない。
 俺だからこそ、このデメリットだらけの欠陥技を完璧に使いこなせる。

 体が加速する。
 必中のはずの【斧】の勇者の攻撃が空ぶる。チャンスだと理性が叫び前に出ようとし、本能が警鐘を鳴らし、俺はその場で足を止める。
【斧】の勇者は空ぶった横薙ぎの攻撃を止めずに、加速しながらそのまま一回転。吹き込んでいれば叩き斬られていた。
 さらにそのまま捻り、踏み込みながら横の回転運動を縦に変換。
 その攻撃には当たらないが、地面にぶつかると爆発が起こり、石が礫となって飛んでくる。それらをはたき落とす。

「……これほどの勇者がいたとはな」

 一見力任せに見えて、【斧】の勇者は素晴らしい技巧の持ち主だ。
 斧を自らの体の一部とし、全身の力で振るう。

 驚くべきは、この斧は特別な武器ではなくただの丈夫な斧であること。
 もし、彼が正気であればお互いの技と力をぶつけ合う、最高の勝負ができたのに。
 残念だ。

 そろそろ終わりの時間が近づく。
 いくら早かろうが、技量が優れていようが、黒い力に侵された奴には駆け引きなんてものはない。ただ全力で叩き潰そうとするだけ。
 もう、タイミングは掴んだ。
 今の【限界突破】した状態であれば、倒せる。
 初めて俺から距離を詰める。俺の瞳から緑の燐光が漏れる。

【翡翠眼】を限界まで強化する。
 極限の動体視力により、周囲の景色がゆっくりになる。
【斧】の勇者の神速の一閃すらも捉えた。
【斧】の勇者が選んだのは迎撃の横薙ぎ。

 猫のように姿勢を低くし、さらに【斧】の勇者の横薙ぎを下から剣の柄で叩き跳ね上げる。
 突風が頭上を通りすぎる。
 手首をひねると剣を振り上げた形になる。そのまま渾身の力で振り下ろし袈裟切りにする。
 グレンの浄化の炎が黒い靄を断ち切り、血が噴き出る。
 たたらを踏んで下がる【斧】の勇者めがけて、追撃の突きで心臓を貫く。グレンの炎が内側から、瘴気を燃やし尽くす。
 剣を引き抜く。
 巨人が膝をついた。
 彼のうつろでなにも映っていない目が理性の輝きを取り戻した。
 彼の眼が俺を見る。恨み言でも言うのかと思ったら、微笑んだ。

「……ありがとう。俺を殺してくれて」

 驚いた。
 黒い靄を浄化の炎で払ったことは何度もあったが、正気を取り戻したのは彼が初めてだ。
 彼はもう敵じゃない。癒そう。いや、もう手遅れだ。

 彼は死んでいる。俺の【回復ヒール】は生きてさえいれば、どんな傷だろうが病だと治すことができるが死人だけは癒せないし、記憶を奪うこともできない。
 彼がこうして話すことができたのは黒い靄の欠片が体内に残留しているからだ。
 だが、その残留している黒い靄も、浄化の炎で駆逐されつつある。

「教えてくれ、おまえほどの男がなぜ負けた」

 黒い力で強化されていたとはいえ、レベル二百オーバーの俺と渡りあえるような男が、まともな相手に負けるとは思えない。
 ブレットであれば、【斧】の勇者を殺せる可能性はあるが、三人の勇者がジオラル王に挑み敗北した時期は俺がブレットと再会した時期と一致する。
 つまり、こいつを倒せるなにかが王の配下にいる。

「俺を殺したのは、じょうお」

 そこで、彼の中にあった黒い残滓が燃え尽きた。
 彼の言った、「じょうお」。途切れたが、そういう存在があると確信できた。
 面白い。その正体不明の敵も倒してやろう。

「ケアルガ様、こっちは終わった」
「グレンの浄化の炎があると楽ね」

 俺が【斧】の勇者と戦っている間、他の雑魚どもを相手していたセツナたちが戻ってくる。
 ここの敵は片付いた。
 これで先に進める。
 ここから先には、残り二人の勇者、そして【斧】の勇者を殺した何かが待ち受けている。
 今まで以上に気を引き締めないといけないだろう。
 ジオラル王の首が見えてきた。一秒でもはやく殺したいものだ。
 
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