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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第六章:回復術士は復讐を終える

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第七話:回復術士は忍び込む

 食事のあと、ラナリッタの領主アフルと打ち合わせを行っている。
 エレンには残ってもらい、セツナたちは先に部屋に戻らせた。

 今の議題は明日のジオラル城強襲ではなく、ジオラル王を倒したあとのことだ。
 巨大な悪を倒してそれですべてがうまく行く。なんて甘くはない。むしろ、その後のほうが大変なぐらいだ。

 ジオラル王国が存在したからこそ、人間同士の戦争は起こらず平穏を保てていた。……認めたくはないがこれは事実だ。

 ジオラル王国という強大な支配者の圧力がなくなれば、野心をもった連中が暴れ出すのは目に見えている。それは一国、二国の問題で収まらない。一歩間違えれば、戦乱が世界中に燃え広がっていくだろう。

 人間は欲深い。俺はそのことを誰より知っている。
 人の善意や理性に期待すれば待っているのは破滅だ。ジオラル王が倒れたあと、欲深い連中を押さえつける何かが必要だ。

 その点では、即座にフレイアを即位させ、新生ジオラル王国を名乗るというプランはありだ。
 新生ジオラル王国になるとはいえ、ジオラル王国は残る。
 今のジオラル王国のような無茶はできないため、いずれは舐められて抑えが効かなくなるが時間稼ぎにはなる。

 ただ、そうするにも問題は多々ある。
 ジオラル王は、黒い力を公に振るうようになってからというもの、自らに逆らう家臣たちを殺しすぎた。わずかな生き残りも次々に離反してジオラル王国を去っている。
 ……すでに国としての機能が壊れている。税の徴収や法の執行すらろくにできていないらしい。

 もし、フレイアが即位しても、ジオラル王国は極度の人材不足でまともな運営ができない。外から人を引っ張ってくる必要がある。だが、信用できる人間を見つけることはひどく難しい。

 そのあたりは、アフル領主がやってくれると断言してくれた。
 ラナリッタの領主であれば、各方面に顔が効く。
 思いのほかスムーズに話は進んでいく。
 エレンが口を開いた。

「他国を押さえつけてる方法は必要ですね。平和を愛する新生ジオラル王国では、いつかは野心的な国の反発を許します。……今のジオラル王国の強請りに近い援助要請って、あれはあれで優秀なシステムなんですよね。他国を適度に締め付けて、消耗させて、戦争の余力を奪えます。新生ジオラル王国は、クリーンなイメージを守らないといけないので真似できないのが辛いです。悩ましいですね」

 考えていることは俺と同じだ。
 エレンも、ただフレア王女と俺を祭り上げて新生ジオラル王国を誕生させるだけでは不十分だと感じている。

「だな。ジオラル王国の強請りは我欲にまみれたものだったが、反乱の芽を摘むという点では優秀だった」

 ジオラル王国は人類を魔族から守るために、ありとあらゆる国から、資金、物資、人材、技術を徴収していた。
 あれは平和維持のためと考えると理にかなっている。
 そうすることで、他国が反乱できない状況を作り出していたのだ。

「こういうのはどうだ? 『人類は手を取り合うべきだ。新生ジオラル王国は平和のため戦争根絶を宣言する。戦争を引き起こした国は、ジオラル王国は正義の鉄槌を下す』と宣言するんだ。俺たちの力を誇示することで抑止力になる。勇者が三人居れば、それだけで一軍を凌駕する」
「一歩間違えば、いろんな国から袋叩きになりますが、その路線で行くしかないですね。……ジオラル王国がケアルガ兄様のものになったら、いっそのこと、どこかの国をそそのかして暴れさせて、見せしめに叩き潰すぐらいはやりたいところです。ケアルガ兄様に逆らうとどうなるか。バカな人たちは言葉ではわかってくれませんし」

 エレンが可憐に微笑む。
 その仕草と言葉があまりにもミスマッチで異様だ。
 アフル領主の表情が引きつっていた。

「……君たちだけは敵に回さないようにしよう。君たちは過激ではあるが、理性的で利害が一致する限りはしない限りは共に歩ける」
「アフル領主、俺は俺から奪う奴を許しはしません、ですが俺から奪うとことはないですよ」

 それは俺のルールだ。
 あくまで俺は復讐者であり、正義でないといけない。
 でなければ、あのクズどもと同じになってしまう。

「【癒】の勇者ケアル様、今後のことはわかりましたが、明日はどうやって少人数で王城に強襲するつもりですか?」
「王城の脱出路から侵入する。王城というものには必ず、王族が逃げるために隠された脱出路がある。それはジオラル城も変わりはしない。そして、その脱出路のことを王族であるフレア王女は知っている」

 ……正確には、フレイアの記憶を【回復ヒール】したことで得た俺は知っている。
 本人の記憶は消しとばして残していない。
 脱出路を通れば、最小限の消耗で王城に忍び込める。

「危険ではないでしょうか? ジオラル王とてフレア王女があなたに付き従っていることは重々承知、ならば脱出路も警戒されているはず」
「そうだろうな。だが、王は脱出路の存在を自国の兵だろうと知られたくないはずだ。兵を配置するにしろ、ごく一部の信用できる兵しかおけない。その上、脱出路は道幅がせまく、王の手駒は数の利を活かせない。城下町を突っ切って、真正面から王城の門をくぐるより何十倍も安全だ」

 エレンが横でこくりと頷く。
 これはすでに二人でさんざん話し合ったことだ。

「なるほど、言われてみればその通りです。もう一つ懸念があります。ジオラル王が城にいる確証がない。ジオラル王を討つことができなければ城を占拠できても意味はない」

 俺は小さく笑う。
 アフル領主は根本的に勘違いしている。

「それは違います。最優先は【賢者の石】が届く前に、あのバカげた禁呪を潰すことです。禁呪を発動されれば、その時点で終わりだ。幸い、禁呪の発動に必要な装置を動かすことはできない。あれはジオラル王城にあるということが重要な意味を持つ。禁呪を潰せば、後からでもジオラル王は処理できる」

 黒い騎士だけであればさほど脅威ではない。
 ジオラル王本人もだ。
 そして、口にはしなかったがジオラル王不在はありえない。
 ジオラル王はあの禁呪に執着している。
 今の状況で、王城を離れることはありえない。

「確かに。……私もまだまだ青い。最優先事項すら見落としていた。【癒】の勇者ケアル様。私は私なりにできることを行っていきます。凡人らしく、地に足を付けて貴方たちを支えましょう。ですから、どうか、この国を、いえ人類を救ってください」
「任せてください。俺は勇者ですから」

 それからいくつか確認して打ち合わせが終わる。
 部屋に戻ってゆっくりと眠ろう。
 風呂場でたっぷりと愛したし、これ以上フレイアたちと体を重ねるのはよしておこう。

 ◇

 翌朝、朝食を取り、俺たちは屋敷出発し街を出る。
 ラナリッタを出るとき、多数の民衆に声援を受けて送り出された。

 こういう勇者らしいイベントは久しぶりだ。
 一周目では、フレアたちのおまけとしていろいろ経験したが、二周目ではほとんどなかった。
 思い出せるのは、フレア王女が俺を迎えに来て、村のみんなに送り出されたときぐらいか。

「ケアルガ様、みんなの応援で力をもらいましたね」
「ん。セツナも気合が入った」
「負けたくないって心の底から思えるわ」
「ケアルガ兄さまは大人気です」
「グレンは、声援よりお肉がいい」

 それぞれに思うところはあったようでいい顔をしている。
 街から出ると竜騎士たちと合流し、竜に跨る。

「竜を入れ替えたのか?」

 二日間世話になった竜ではなかった。
 顔つきや大きさが違う。

「よく気付きましたね。実は、こいつがケアルガ様を乗せたいとわがままを言いましてね。きっと、ケアルガ様に恩返しをしたいのでしょう」
「GRYYYYYYYYYYYYYY」

 竜が咆哮をあげる。
 子ギツネモードになっていたグレンがびっくりして毛を逆立てる。

「俺たちのほうこそ世話になっていて感謝している。最後の仕事、しっかり頼む」

 竜が返事の代わりに翼を広げた。
 言葉よりも行動で示す。
 こういうのは嫌いじゃない。

 俺たちは竜に乗ると力強く羽ばたき天に舞う。
 ……この戦いが終われば客としてではなく騎手として乗せてもらいたいものだ。
 こいつとなら気持ちよく空を飛べるだろう。

 ◇

 竜たちは空を舞う。
 そして、ジオラル王国の上を通り過ぎる。
 目的地はその先だ。

 ジオラル王国の裏手には巨大な滝がある。
 そこに下ろしてもらう。
 滝の近くにある森の中を歩いていき、なんの変哲もない大樹の根元を掘ると、巧妙に隠されていた取っ手つきの蓋が見つかった。
 錬金魔術で解錠すると、地下への入り口があり、足を踏み入れる。
 隠し通路の出口は滝の裏側で豪快な水しぶきが目の前に広がる。そして、その反対側にはトンネルがあり城へと続いている。

「ケアルガ様、こんなところに出るんですね。ここから先が王城の地下に繋がっているなんて驚きです」
「王族御用達の緊急脱出ルートだ。見つからないように工夫を凝らしているさ」

 脱出ルートを使うのは、城が落ちそうになったとき。
 城からの追っ手が、城内の脱出ルートを見つけて追ってきたとしても、ここに出たとき滝から飛び降りたと考える。

 実際は、ここから森に出る隠し通路があるとは疑わない。
 そのためにわざわざ隠し通路を分割している。

「みんな、何があっても俺から離れるなよ。ここから先は分岐が呆れるほど多い。正解のルート以外は即死トラップの嵐だ」

 これも脱出ルートの定番だ。
 時間稼ぎをしつつ、敵の数を減らすために、山ほど分岐を作り、罠を仕掛ける。

 王族の命を守るため、当代一の技師が技巧の限りを尽くした罠の数々。まともに挑めば、俺でも無事に抜けられるか怪しい。
 ちなみに、この脱出ルートを作った錬金術士は王の命によって殺されている。
 理由は簡単。正解のルートと罠のすべてを知っているから。
 ここまで来ると偏執狂の領域だ。
 幸い、フレア王女の記憶は正しく、三十分ほど歩いているが一つも罠は見かけない。

「ケアルガ兄さま、こんなジオラル王国の秘中の秘、よく調べることができましたね」
「苦労はしたが、なんとか手に入った。さて、敵に会わずに城までたどり着ければ力を温存できると思ったが、そうはいかないみたいだ。お仲間が現れたようだ」

 設計者を殺してでも秘密を守りぬいたこの脱出路。
 秘密を守るために兵士を配置しないという見込みは、甘かった。

 黒い靄に包まれ、理性のかけらもない生きた死体たちが道を阻む。
 黒い騎士たちなら秘密もくそもない。絶対服従、外に秘密が漏れることもない。

 そして、俺が仲間と言ったのは相手が勇者だからだ。
 ひと際目を引く、筋骨隆々な大男の手には勇者を示す紋章が、黒い闇に呑まれた今も輝いている。

「グレン、おまえの炎を貸せ。強敵だ」
「しょうがない、力を貸してあげるの。ご主人様はグレンがいないと何もできないの」

 文句を言いつつも、グレンの炎が俺の剣を包む。
 目の前にいる勇者の得物は斧。【斧】の勇者か。
 肩慣らしにはちょうどいいだろう。

 理性を失った不死身の勇者ぐらい一蹴できなければ、理性をもったまま不死身になった【砲】の勇者ブレットには勝てない。
 瞬殺して、自信を付けさせてもらう。
 俺は燃える剣を強く握りしめ、強く踏み込んだ。
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