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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第六章:回復術士は復讐を終える

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第六話:回復術士は王を目指す

 ラナリッタを放置して先に進むつもりだったのに、なし崩し的に救ってしまった。
 正義感がありすぎるのも考えものだ。

 ラナリッタの人々たちの歓声を受けながら、俺たちはラナリッタの領主であるアフル・レアル・ラナリッタの馬車で彼の屋敷へと向かっている。

 馬車の周囲には人々が押し寄せて、俺たちへと感謝の言葉と声援を送り続けている。
 街には戦禍の傷跡が生々しく刻まれていた。
 この状況で、これだけ熱烈な歓声を受けるとは……いや、逆か。こんな状況だからこそ英雄が必要となる。

 英雄なんて宗教と一緒で縋り付くための寄る辺にすぎない。
 未来が明るくなると信じさせる何かを人々は常に欲しがっている。今はそれが俺なのだろう。
 領主、アフル・レアル・ラナリッタが俺の顔を見つめて、口を開いた。

「竜に乗って救世主が現れるとは思ってもみませんでした。まるでおとぎ話だ」
「ただの偶然です。……別件で、ジオラル王国に向かう途中でした。そこで、この街の惨状を見てはせ参じたわけです。さすがにこれは見過ごせない」

 俺は微笑みながら適当なことを言う。
 救ったのは成り行きだが、馬鹿正直にそんなことを言う必要はない。

「さすがは、真の勇者です」
「……それですが、なぜ私が【癒】の勇者だとわかったのでしょうか?」

 今回の戦いでは【癒】の勇者の象徴である【回復ヒール】は使っていないはずだ。

「簡単なことです。顔を変えているとはいえ、あれだけの魔術を使えるのは【術】の勇者フレア王女に違いない。ならば、その隣に立つのは【癒】の勇者ケアル様しかおりますまい」
「言われてみれば、そうですね」

 深読みしすぎた自分が情けない。
 フレイアに本気を出せば、【術】の勇者だとばれるのは当たり前。そうなれば、俺の正体もばれるわけか。

「そろそろ私の屋敷に着きます。皆様、お疲れのようですし精いっぱいのもてなしをさせていただきます。体を休めていただき、食事をしながら、今後の話をしましょう」 
「お言葉に甘えます」

 精神の疲れを取るための環境としては申し分ない。
 ……アフル領主がジオラル王国と繋がっていない保証はないが。
 もし、罠に嵌めようとしてくれば、そのときは生まれてきたことを後悔させてやろう。

 ◇

 精一杯のもてなしと言うのは本当だった。
 貴族相手に使うような最上級の部屋を自由にしていいと言われ、今は豪奢な浴場を使わせてもらっている。

 浴場というのは、使うのにも維持するのにも多大な金がいる貴族の娯楽だ。
 戦場を駆け回ったせいで、砂埃やら返り血やら、いろいろなもので汚れていることもあり、ありがたい。

「ケアルガ様、これ、いい」

 セツナが湯舟から顔だけ出して、いつものきりっとした表情ではなくまったりとした顔をしている。
 普段はピンとしている狼耳もぺたんと倒れていた。

「お風呂なんて久しぶりね。なかなか屋敷の外では味わえないもの」
「私は初めてなのに懐かしい気がします」

 クレハとフレイアは慣れたものだ。なにせ二人とも生粋のお嬢様だ。
 エレンもうっとりとしていた。

「ケアルガ兄様、お風呂とはいいものですね。旅でも定期的に使いたいものです。衛生面の改善及び士気の高さを維持するのに効果的ですよ」
「まあな、心の疲れだけは俺の【回復ヒール】ではどうにもならないしな。錬金術の力で携帯用の湯舟でも作れないか考えてみよう。湯舟さえあれば、水と炎はフレイアに任せられる」

 石や木の材質では不可能だろうが、テントのような携帯式で軽量なものを考案してみよう。

 それにしてもいい景色だ。
 上気した美少女たちの肌というのはそそる。
 セツナやエレンの控えめなのも、クレハやフレイアの大人の魅力も風呂場ではより輝く。

「グレンも、お風呂は嫌いじゃないの。楽しいの!」

 子ギツネが気持ちよさそうに犬かきをしていた。
 この場でそれか、グレンはいつもマイペースだ。まあ、これはこれで可愛い。
 じゃあ、風呂ならではの楽しみをするとしよう。
 セツナを後ろから抱きしめる。

「きゃっ、ケアルガ様」

 セツナのうなじが赤く染まる。それは体が温まったからだけではない。

「セツナはたくさん頑張ってくれたからな。ご褒美だ。可愛がってやろう」

 こういうシチュエーションを楽しめる機会はなかなかない。
 風呂の中でやると、いつもと違った感触や反応を楽しめるだろう。

「ケアルガ様、セツナちゃんだけずるいです。私も可愛がってください。今日はたくさん凍らせました!」
「そうね、私たちもがんばったわ。可愛がってもらってもいいはずよ」
「ケアルガ兄様、私もです。私の戦術がなければ、敵を撃退できませんでした」

 フレイアとクレハとエレンも近くにやってきておねだりしてくる。
 昨日に続いて、また全員というのはハードだ。
 だが、やって見せよう。【回復ヒール】を使えば俺の体力は無尽蔵だ。
 明日の決戦に備えて、女たちの心も体も癒すとしよう。

 ◇

 風呂場でがんばりすぎてのぼせかけた。
 性的な興奮による高まりと、風呂の効果が合わさって、ふわふわしながらのプレイ。
 体の小さなセツナやエレンなどは、意識が朦朧としてふにゃふにゃで可愛がっていて面白かった。

 機会を作って、また風呂場で可愛がってみたいものだ。
 風呂から出ると用意してもらった服に着替えて、涼んでいた。
 みんな、どこかぼうっとしている。

「……ケアルガ様、すごかった」
「ですね。ちょっと、今日のは忘れられません」
「乱れすぎて恥ずかしいわ」
「ケアルガ兄様はすごいです」

 さきほどの感想をそれぞれがつぶやく。その仕草が可愛くてこの場で襲いたくなったがそれは我慢しよう。
 そろそろ夕食の時間だ。

「【癒】の勇者様、夕食の支度ができました。ご案内します」

 使用人がやってくる。
 さあ、気を引きしめよう。
 アフル領主から新たな情報が得られるかもしれない。

 ◇

 領主からの歓待ということで期待していたが、その期待以上に豪勢な食事が並んでいる。

「皆様、心ばかりの食事を用意させてもらいました。マナーなどは気にせずに、好きに楽しんでください。足りなければいくらでも作らせますし、食べたいものがあればお申しつけください。材料が手配できるものであるなら作らせます」

 ……これ以上ないぐらいにこの人は俺たちを楽しませようとしている。
 だからこそ気を付けないといけない。
 打算がないわけがない。俺は人を操るのは好きだが、好き勝手使われるのは嫌いだ。
 奴の真意を見逃さないようにしないと。

「心ばかりなんてとんでもない。このようなご馳走は見たことがない。ありがたくいただきます」

 微笑みながら、思考を巡らせる。
 ある意味、もう戦いは始まっている。
 ワインを飲みながら、カードの切り方について俺は考えていた。

 ◇

 食事がひと段落し、デザートが出される。
 美しくデコレートされたケーキたち。
 今日の夕食は素晴らしかった。さすがはラナリッタの領主。ラナリッタで提供できる最高のものを出してきたのだろう。

「今日の食事は気に入っていただけましたかな?」
「もちろん、これほどの食事、王侯貴族でも滅多なことでも味わえないでしょう」

 これはお世辞じゃない。ただの事実だ。

「よろしければ、【癒】の勇者ケアル様がラナリッタを出られてから、どうされていたのかを聞かせてもらってよろしいでしょうか?」
「ラナリッタを出てからは魔族領域に向かいました。好戦的で残虐な現魔王がいる間はこの戦争が終わることはないと思いましてね。話が分かる次期魔王候補に取り入り、現魔王を討伐し、新魔王政権を打ち立てました。実は、私がジオラル王国に向かっていたのは、魔王とジオラル王国の裏の繋がりを知ったからというのもあります。裏のつながりを清算したうえで、新魔王と人間の代表で会談をし、和平を実現したかったのです」

 八割の真実に二割の嘘を混ぜる。
 あまりにもスケールが大きい話に、アフル領主が言葉を無くした。

「……それは本当ですか?」
「もちろん。その証拠に私たちを送り届けてくれた竜騎士たちは魔王軍のものです。そして、新魔王イヴ・リースは私の恋人だ。この戦争を止める交渉する余地はありますよ」
「なんとも、そこまでとは。私は【癒】の勇者ケアル様を甘く見ていた。さすがは真の勇者。そのような方法で平和を実現しようとするとは」

 アフル領主は心の底から感心したような声をあげる。
 そして、次々にイヴのことを聞いてくる。彼は新魔王とのパイプを欲しがっているようだ。

「いろいろとな奇跡が積み重なった結果です。ただ、私が離れている間にジオラル王国は変わりすぎた。ジオラル王国をなんとかしなければ、話し合いなんてできそうにはありませんね」

 真の目的であるジオラル王の抹殺と【賢者の石】の回収については伏せておく。
 あれの存在を知れば、悪用しようとするのが目に見えている。

「そういうことだったのですね……。ならば、我々と目的は同じのはずです。ケアル様は魔王領域に出向いており、ご存知ないでしょうが。今のジオラル王国は地獄です」
「そのようですね」

【鷹眼】の娘の記憶を得ており、大まかな状況は知っている。

「ジオラル王は、自らは王ではなく神だと宣言し、神に逆らうものはすべて滅ぼすと宣言しました。当然、内外で大きな反発がありましたが、すべて黒い騎士たちによって飲み込まれております」
「でしょうね。あれの大軍を倒す術はほとんどない」

 どうやっても殺せない。
 せいぜい、氷漬けにしたり生き埋めにして動きを封じるのがせいぜいだ。

「ええ。しかも、黒い騎士たちの中には仲間を増やしていく特別な個体も存在します。今回の戦いでは多大な犠牲を払い、なんとか捕獲しましたが……。あれの存在を知らない街であれば、一体で落としてしまいます」

 なるほど、黒い騎士を増やす黒い騎士はは単なる噂ではなかったのか。
 そして、これは朗報だ。
 犠牲を払って捕獲する手が使えたのなら二次災害はない。

 もし、その特別な黒い騎士とやらが生み出した黒い騎士が、新たな黒い騎士を生み出せるのであれば、犠牲を払いながら無理やり捕獲なんて手は取れない。

「アフル領主、ジオラル王の目的はなんでしょう? ぶっちゃけた話をすれば、今でもジオラル王国は世界征服しているようなものだ。魔族と茶番で戦争状態にしながら、それを盾に世界各国から援助をたかる。世界最高の人材と資金があり、どの国もジオラル王国に逆らえない」

 そこが不思議だった。
 こんな強引なことをしても得られるものはないと言うのに。

「……何が目的かはわかりませんが。神を名乗ると同時にジオラル王が要求しているのは、民の命です。自国、他国を問わずに、民に命を差し出せと言ってくるのです。逆らえば黒い騎士がやってくる。殺戮のための殺戮。私たちにも王の目的はわからない。ただ、わかっているのは戦わなければ皆殺しにされることだけ。絶対に従うわけにはいかない」
「いったい、ジオラル王は何万、何十万の人間を殺すつもりだ? 殺戮のための殺戮……いや、待て。そういうことか。だから、神と名乗ったのか。面白い」

 ようやく見えた。
 一周目の世界で、奴が執り行おうとした禁呪。
 あれは世界征服を目的として、その手段として神となる。
 あれを【賢者の石】なしでやろうとしているのか。
 もし、それなら数十万の魂が必要になるのもわかる。

「ケアル様、何か心当たりが」
「ええ、遥か古に存在した禁呪。それがジオラル城の地下に仕掛けられているのを脱獄の檻に目にしました。それは……」

 隠すことでもないので、その禁呪について教える。
 すると、アフルが震え始めた。

「狂っている」
「狂っていなければ、こんなことをしないでしょう。あなたは、俺にあの狂った王を殺してほしいと頼むつもりだったのでしょう? 安心してください。俺は俺の意志であの王を討つ」

 随分とジオラル王は一周目でも二周目でも俺を苦しめてくれた。
 その礼はしないと。
 そして、王を殺して、【砲】の勇者ブレットを待ち伏せて殺せばついに復讐は完了する。

「心強い。ですが、単独では無理です。私はいくつかの国、街、村をとりまとめ対抗組織を作り上げております。我々と協力してください。……すでにジオラル王を倒すために他国の勇者が三人も派遣されましたが、すべて返り討ち。いえ、ただの返り討ちならまだ良かった。囚われ、黒い騎士となり絶大な脅威になっている。わかりますか、もし【癒】の勇者ケアル様まで、敵に回れば世界は終わりだ。どうか慎重に」

 この非常事態に他の勇者が動いていたか。
 勇者は世界で十人存在する。ジオラル王国には【術】【砲】【癒】。同盟国に【剣】が存在し、残りは当然他国に存在する。

「慎重に行きたいところですが……、明日には出発しないといけない。実は交渉の他にもう一つ目的がありましてね。魔王の秘宝が盗まれたのです。今の話で確信しました。その秘宝はジオラル王のもとへ届けられようとしている。あれが届けば数十万の魂なしに禁呪は完成してしまう。無茶をしてでも明日には仕掛けるべきだ」
「そういうことなのですね……かしこまりました。なら、可能な限りの支援をさせてください。私のパイプをすべて使って、明日までに集められる兵すべてで仕掛けます。少しでもケアル様の勝率があがるように」
「いや、ジオラル王国へ今から兵を派遣するのは無理だ。各地で大きな反抗作戦を繰り広げてほしい。そうすれば、王は各地に戦力を派遣しなければならなくなる。そちらのほうがありがたい」
「では、そのように」

 ささやかな手助けだが、ないよりはマシだ。甘えるとしよう。
 0.1%程度でも勝率はあげたい。

「ケアル様、もう一つお願いがあります。狂王を倒した後には、ジオラル王国を立て直さなければなりません。実務は私が行えますが、人々を惹きつけ、納得させるだけのシンボルが必要です。それは私にはなしえません。世界を救った【癒】の勇者ケアル様、そしてその伴侶である【術】の勇者、フレア王女が立つべきだ」

 ジオラル王国の影響力は大きい。
 国そのものを無くすわけにはいかない。
 立て直すには、だれもが納得する新たな顔が必要となる。アフル領主は俺にそうなれと言っている。

「俺はともかく、フレア王女はジオラル王の娘だ。民が納得するでしょうか?」
「だからこそいいのです。正当な王家の血を引き、なおかつ正義のために闇に堕ちた父を裁いた悲劇のヒロインという脚本を用意すれば、いいシンボルになる」
「そのあたりのことは任せましょう。あなたがたの得意分野だ」

 これも想定の範囲内だ。
 きっと、この男ならこういうと思っていた。
 だからこそ、俺は彼に招かれた。

 俺の恋人のイヴが魔王として魔族を率いて、俺の所有物ペットのフレイアにジオラル王国を任せれば、この世界は思いのまま。俺にとっての理想の世界を作れる。

 事前準備は整った。
 あとは、ジオラル王を討つだけ。
 もっとも、その”だけ”が遠い。黒い騎士へと落ちた名も知らぬ三人の勇者、黒い力に侵された狂気の王、その黒い力の源。魔王を狂わせたナニカ。【砲】の勇者ブレット。
 そのすべてを打ち破り、俺は俺の求める世界を手に入れてみせよう。
 決戦は明日だ。
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