K
「ねぇ、この話、知っとる?」
声をかけたのは、私と犬猿の仲の少女、Kだった。
Kは私に話しかけられたことに、あからさまに眉をしかめた。
「うち、今日の星座占い、十二位やったっけ」
「あんたの星座はどうでもいいんよ。この本、知っとるかって」
「知らん。話しかけんな」
取りつく島もない。
Kは、頭がよく、機転がきいた。
なので、私と同じ”ひいきされる”側だった。
しかし、難点は、周りを見下すからクラスから浮いていることだ。
話かけるな、は、Kの口癖と言っても過言ではない。
でも、この突飛な計画を思いついた瞬間に浮かんだのは、こいつの顔だった。
私はもう一度、Kにこの本を突きつけた。
「知らんなら読め」
「嫌やし。お前の本とか触るだけで馬鹿が移るやろ」
「分かっとるやろーが、頭良いあんたやったら」
声を少し低くして言うと、Kはようやくこっちを向いた。
「…何」
「このクラス、このままやったらいけん」
「偽善やな」
「このクラスもやけど、うちらもや」
「……」
Kも気付いているようだった。
何が言いたい、と目だけで促してくる。
「ひいきされとる、やったー!で、済まんやろ。今は先生に対しての恨みやけど、時間が経つほど、ひいきされる側にもそれは向く。約三十人ほどの敵が欲しいんか、あんたは」
Kは溜め息を吐いた。
「…明日でいい?返すの」
「やっぱり話早いな」
本を叩きつけるように渡した。
「あ、でも、あんたは元からクラス全員の敵か」
「死んだほうがいいよ、お前」
舌打ちしつつも、Kは本を受け取った。
そして、次の日。
Kは本を返しに来た。
「で?」
「ありがとう、とか言えんかな。面白かったやろ」
「普通やし」
Kの普通は良いという意味だと、何故か私は知っていた。
「これさ、やらん?」
「うん、馬鹿か?」
当然の反応だった。
「だってさ、面白そうやん」
「現実的に考えろや」
「…よし、いける」
「お前今何を考えた」
私は、教室を見渡した。
普通に喋っている人。黒板を消している人。暗い顔をしている人。…泣いている人。
そして、手元には、何か起こせるかもしれない本。
「あんたさぁ、これ、出来んって思う?」
「思う」
「でもさ、やれん、とは思わんやろ?」
「思わん」
「即答やな」
どうせ、本を貸した時点で気づいていただろう。
頭いいくせに、回りくどくて面倒くさい奴だ。
でも、幼い私なりに、Kには一目置いていた。
無茶な計画を持ち掛ける程度には。
「やろうや」
Kは渋々という風に頷いた。
「お前のこと嫌いやけど、お前の思いつくことは嫌いやない」
「お、ツンデレの名言出たなー」
「…そういうところが嫌いなんよ」
何だかんだとまとまり、次の日の昼休み、計画を立てるために図書室に集合となった。