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冒険者の街

「着いたよ、ここが目的地ペイフェルド。門番がいるから、ここで身分証を見てもらうんだけど…」

石造りの灰色の壁。大きなもんは凱旋門用だろうか、商人たちの荷馬車は横の比較的小さめな場所から入って行く。

「赤秀は秘境出身者だから、持ってなくて当然だし俺先に入って待ってるね」

「あ、ああ」

ヒゲの優しそうなおじさんが「身分証をお願いしますよ」と言う。アッシュが首の鎖をたどってプレートを引っ張り出す。一枚のプレートは『アッシュ・アーバンヘル』と書かれ、もう一枚は『ディア』と書かれている。

「お、冒険者か。階級はまだディアかい?頑張って成長してくれ」

「ええ。あ、俺の連れなんですけど、秘境出身者だから、身分証持ってないんですよ。試験のあと作ってやってください」

し け ん?

聞いてないんだけど。

「じゃ、行きましょうか。若いの、後ろ頼むよ」

今気が付いたのだがおっちゃんの左目が金色だ。人じゃないよ。

「あの、試験とは…」

「大丈夫、本当に秘境出身かどうか調べるだけさ。秘境の者しか使わない道具を使ってもらうだけさ」

おっちゃん朗らかに笑っている。内心戦々恐々なのだが、淀みなく「そうですか」などと言ってしまってる自分が末恐ろしい。なんというミラクルポーカーフェイス。

「じゃ、やりましょうか」


「こうですよね」

「おお!秘境出身に間違いありませんな。それではプレートをお作りしましょう。作る工程みます?何だったらちっとばかし教えてあげますよ」

お言葉に甘え、と言うより新しいスキル入手のチャンスではないかと思って見学させてもらうことにした。

工程自体はそう難しい物でもなく、インゴットから削り落とした金属板をのして平にすると、魔法で文字を刻み込む。穴をあけると、そこにチェーンを通して出来上がり。

と、目の前にメッセージが現れる。

『スキル 彫金 を 習得しました スキルLv1』

良い拾い物をした。


「あっちからね。じゃあまた」

門を通り抜ける直前、アッシュが立っていた。

「意外と早かったなあ。秘境出身は結構トラブル起きる人多いんだよ。秘境出身者だって偽る奴、暴力的な奴。だからあのデーモンが変化したおじさんが調べてんの」

畜生色々調べておけばよかった。まあまた通るだろう。

「さ、ペイフェルドだ。ようこそ、冒険者の街へ」

「もうつか…」

思わず息を呑む。

金色の目をした猫型の獣人がマタタビ酒を呑んで酔っ払い、ダークエルフとドワーフが武器防具の値切り交渉をしている。ヴァンパイアらしき人影がリッチーを共に連れ、ピクシーがウンディーネとお喋りしている。何とも幻想的な光景だろうか。街並みは東京のようにゴタゴタせず、中世ヨーロッパの都市部のような、石造りの街並みだ。灯りがポツポツ灯りかけているカンテラには、それが火でないことを示すようにゆらりゆらり、揺らめいている。

「…凄い、綺麗だ」

「まあ、冒険者もいるから荒っぽいとこもあるけどね」

手を掴まれて、アッシュが勢い良く走り出した。


「ここがギルド。ペイフェルド支部は忙しくなる直前かな」

赤煉瓦の建物で、まるで迎賓館のようだ。木製の扉を開けると、市役所の様に並んだカウンターと、エルフの女性、そして奥に巨大なボードが見えた。

「すいませーん、冒険者登録お願いします」

マナーは破るためにある物だ。という訳で、アッシュのステータスを盗み見た。Lv11のファイター、HP910、MP231。レベルと職業は誤魔化した方が良さそうだ。

「アッシュ、君はもう…そっちは?」

「お願いしたいのはこの子なんだ、よろしく頼むよラルフローレン。君と俺の仲だろう?」

美人なエルフのお姉さんがアッシュをぎいっと睨みつける。

「言っときますけど、あたし婚約者いるんだから妙な誤解生まないで頂戴。それにしてもあらあらまあまあ…綺麗なアンデッドね。ここまでフード被って来た?」

「ええ、アッシュがマントを貸してくれて」

エルフさんが驚いた様にエメラルドの瞳を開く。

「へえ!あんたよっぽどこの子が気に入ったのね、まあそりゃそうか。こんだけ綺麗なアンデッド見ないもの」

チラリとプレートの映り込みで確認すると、顔はそのままだが肌の色が白く、髪色も銀に光る髪へ、目はガーネットのような輝きを持っている。カスタマイズ段階でそうした記憶はあるが、再現しすぎだろう。

「…まあとにかくよろしく頼むよ」

「アッシュ」

アイテムウインドウから魔石を出すと、ぽいっと放り投げる。

「これ、忘れてんなよ」

「え…あ、やっべ」

「あらあら、そそっかしいのね。今のうちパーティー申請したら?」

パーティー。

あれか、チームプレイを強要されてしまう奴か?

無理だな。

「悪いけど暫くはソロでやるよ。命を預ける相手だから、アッシュとは友人を続けて、組んでも良いと思ったら改めてこっちから申請することにする」

「そうよね。命を預ける相手だから、ねぇ。超妥当な理由でお断りされたわよ?」

アッシュがプイと向こうを向く。その耳が赤い。まあ友人の方がLv99とかも冗談めかして言えるだろう。

「じゃあ、早速登録に移りましょうか」

ギルドのお姉さんは美人さんです。理由は荒くれ者の冒険者がいても、強く出ることが難しくなるからという色仕掛け的理由です。

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