ちょ、母親って、どこよ!?
彼女は目を覚まし、先ほどの白き空間とは違う黒く闇に飲まれた空を見た。
冷たい風が彼女の頬をなで、周りの木々たちはざわめく様に揺れる。そして、彼女は起上がろうとしたが、それは失敗に終わる。
「・・・・ぅあ?」
彼女は自身の手を見た。小さいぷにぷにの。そう、間違いなく赤ん坊の手だ。彼女は白い空間で会った男の言葉を思い出す。彼はなんと言ったか。母親を求めて泣けと言わなかったか?
そうだ、もし自分が赤ん坊で転生したとするなら、近くに親が居なければオカシイではないか?自身の子供を木々が蔽い茂った場所で一人にするだろうか?
彼女はためして見る事にする。自身がどんな状況にいるか忘れて。
「うぅ、うぎゃ~~~ぁ、うぇぇええぇ」(マァー、マァマー)
彼女は、この世界で産声を初めてあげた。暗く湿気た漆黒の森に赤子の声は響き渡る。シンと静まり返った森の中で、彼女だけは親を求めて泣いていた。
生きる、ただ そのために。
近くの草むらがガサガサと揺れた。彼女は、そして気付く。野生動物が居るかもしれない場所で泣き声を上げるなんて自殺行為であると。
「グルゥルルル」
草むらから、姿を現したのは大きな黒い熊のようなもの。
「ぁ、う?」
何故か、その熊のような獣の鳴き声が人の声に聞こえた。
(熊っぽいのでたよ!?いきなり、生命の危機ですケドって・・・・、ん?この熊。しゃべってない?気のせい?幻聴かな?って、近づいてきてるよ!まじ、あたしの親どこだよ!!)
唸りながら、その獣は近づいていく。彼女には、その獣が悲しそうな寂しそうな瞳をしていることに気付く。彼女は、男に言われた通りに母親を呼び続けた。
すると、獣は泣いてる彼女の頬を舐めて頬ずりをして、彼女が包まっていた布を器用に咥え来た道を戻って行く。
「ガゥ、グルルルルルルルゥ」(人の子。だが、この子は母親を求め呼んだ!この子は我の子!!)
泣いていた赤ん坊は、いつのまにか眠りについていた。
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彼女が目を開けると、あの白い空間だった。
「私、また死んだ?」
「違う。」
後ろから声がしたと振り返れば男が居た。
「ぅむ。確りと母親に拾われたな。お前は【魔獣】【精霊】などの言葉が分るし話せる。それがお前に与えた能力だ。ついでに、お前を拾ったのは【吸血熊】だな。」
「はぁ?え?あの、さっきの熊っぽいのが?」
混乱していると、男はニヤリと笑い指を鳴らした。
「この俺様が転生させてやったんだ、簡単にしぬなよ?小娘。さぁ、世界におかえり。」
意識が落ちそうになる。なぜ、この男は言いたいことだけ言って、こっちの言葉を聞かないのだろうか。
「ちょ、っ、まって!」
そうして暗闇に飲まれるように、私は意識を失った。