詩: 奇跡の万年筆と白猫
夜の商店街を歩いていると
古い文房具店の前で足が止まりました
閉店したはずの店内に
ひとつだけ灯りがついていたからです
扉を押すと カラン と鈴が鳴りました
店の奥に 白い猫が座っています
猫はわたしを見ると
机の上に置かれた木箱を前足で押しました
中には 古びた万年筆
直感が働きました
「これは 書いたことが実現する万年筆!」
「苺のタルト」と書いてみると
目の前に焼きたてのタルトが現れました
「ダイヤモンドの指輪」と書くと
きらめく光が机の上に現れました
わたしは興奮して 次々と欲しいものを書き連ねました
「高級チョコレート」
「宝石のついた髪飾り」
「サルにもわかる魔法の本」
「美女入門魔導書」
「空飛ぶほうき」
「若返りの秘薬」
「世界一の幸運」
一息つくと
急に万年筆が勝手に動き
一枚の紙に文字を書き始めました
──ご利用代金請求書──
品目:苺のタルト、ダイヤモンドの指輪、その他多数
支払期限:今夜
白猫がこちらを見上げ
尻尾で店の奥を指しました
そこには扉がひとつ
「異界の窓口」と札がかかっていました。
わたしは震えながら猫を抱き上げ
万年筆を木箱に戻しました
すると出てきた品物は煙とともに消えてしまい
請求書もふっと消え
灯りも同時に消えました
気づけば
腕の中の白猫だけが
誇らしげに喉を鳴らしていました




