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鬼脈と呪術6

 一体何が起こったんだ、と飛鳥は思った。しかし瞬時に、静が声ではなく気に乗せた以上何か意味があるのだろう、と思いなおす。

「静龍様!」

 と璃蛇が声をあげ、虎牙もまた振り返った。飛鳥はその一連の流れを俯瞰するが、内心混乱していた。

 そして今すぐにでも動き出したい、早く静を探さなければ、と思う。静がどうなったのかが気になって仕方がないのだ。


 虎牙と璃蛇がめいめいに静を探しており、現れた魔物を排除している姿を、目の端で確認する。飛鳥もたった今、地面から現れ出た鬼を鞭で燃え払った。


 黒い靄が現れ出て、静を連れ去った瞬間を思い出す。手が届かず、静が消え去った瞬間が、何度も頭で再生されていた。


「気をつけて!」


 静が残した言葉が頭に残っている。その言葉が意味することはそう多くない。


 飛鳥は謀りや陰謀など興味はないし、そのような方法でしか動けない者に対しては、軽蔑の念が募るのみだ。勝手にしてくれ、と思う。

 静を探しだし、鬼脈の魔物を焼き払えばいい。そして、さっさと退散する。艮宮や坤宮の封印は二の次だ。


 思い描く理想は簡単だが、しかしそうしたところで、根本的な解決にはならない。兄に言われたことが気にかかるわけではないが、静を守るためには、正面切って向き合うだけが能ではないのだろう。


 ただ、静が無事かどうか分からない状態は、とても不安だ。飛鳥は虚空に手を伸ばし、そして拳を握る。茉莉花の香る、静の屈託のない抱擁が思い出され、飛鳥の闘気に火がついた。


 今、迷うことがあるだろうか。静を失っては、生きていけない。


「虎牙に璃蛇姫。悪いが手数をかけているのは本意ではない。静を探し、坤宮へと向かわなければ」

 二人が振り返る間もなく、飛鳥は変化を行う。火気を帯びて激しく燃える羽根に、尾。


 6本の尾の先には目にも似た、孔雀模様が浮かび上がった。飛鳥は羽根を広げ、閉じる。その度に、熱風を帯びた気が流れ、洞窟の遠くまでを赤く照らし出した。火の光に鉱物がきらめき、金鬼が熱風で吹き飛ぶ。


「おい、飛鳥。それをされたら俺は非常にやりにくいのだが」

 と虎牙が言う。


「ならば、璃蛇姫がオレを剋してくださればよいのでは?火の気により、あまりに延焼しているのであれば、水気で剋せばよろしいかと。武力に自信がおありでなくても、生来、水気はお持ちでしょう」


 言葉に刺や毒がないか、と気にする余裕もない。飛鳥の言葉に、

「飛鳥様、分かりました」

 と璃蛇は少々戸惑い気味に言うのだった。


「それに、虎牙。この程度の火気で溶け落ちてしまうようであれば、次期乾宮当主の座にふさわしいとは思えない。ぜひ辞退してはいかがか」

 飛鳥らしくもない、毒のたっぷりと籠った言いぶりに、さすがの虎牙も苦笑する。


「考え違いをしていたよ。実は静龍がお前の鞘なのだな」

 虎牙の呟きは飛鳥の耳には届かない。


 疑わしきは罰せずだ、今のところは。

 今は静を探し出さなければ、何一つ進まない。


 しかし、もし、静の身に何かがあったならば、この手で罰してくれよう、と飛鳥は自分でも恐ろしいことを思うのだった。


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